機能と性能、使い勝手が高いレベルで融合した複合機――PM-A900(3/3 ページ)

» 2004年12月08日 08時00分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]
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発色のバランスがよく安定した画質

 まずは写真印刷の画質だ。階調の滑らかさに、染料インク機の成熟度が感じられる。人物の首筋など、明暗差が比較的大きい部分は粒状感が出やすいが、滑らかさでは顔料インク機のPX-G920などより上だ。

 発色はドライバ設定やアプリケーションによる変化の幅が大きい。付属の印刷ツール「EPSON Easy Photo Print」を使った印刷では、画像によって自動補正の内容が違う。推奨設定にすると、デジカメ画像のExifPrintやPIM(Print Image Matching)が優先され、これらの情報がない画像はドライバ機能の「オートフォトファイン!6」の適用となる。なお、ドライバの詳細については関連記事を参照していただきたい。

 最近のデジカメはExifPrintが主流となっているが、ExifPrintベースの自動補正はかなり派手めの発色だ。明度はあまり高くならず、彩度とコントラストがアップする。インク濃度も高くなるようで、好みが分かれそうだ。

 オートフォトファイン!6は、ドライバ設定のデフォルトとなるオートレタッチ機能だ。シャドウから中間調が明るくなり、発色が淡くなる傾向が見られる。記憶色系の発色なので、多くの人に好まれるのはオートフォトファイン!6だと思う。なお、PM-A900のオートフォトファイン!6にも、最新カラーエンジンの「EPSON NATURAL PHOTO COLOR 3」が使われている。

 メモリカードダイレクト印刷では、印刷メニューとして「L判印刷」と「こだわり印刷」がある。前者は色調補正をしないようなので、撮影に失敗した画像(露出アンダーやオーバー、ホワイトバランスのミスマッチによる色かぶりなど)は、きれいに印刷できない。「きれいに印刷する」という目的であれば、オートフォトファイン!6やExifPrintが使える「こだわり印刷」を使ったほうがよいだろう。

●Easy Photo Print/推奨(ExifPrint)

画像 明度が控えめで彩度が高く、花びらの一部が色飽和している。派手系には違いないが、どことなく「重たい」印象を受ける。発色そのものは良好だ
画像 EPSON Easy Photo Printの自動補正(ExifPrint)がうまく作用した好例。赤系の彩度が少し低いが、空の青と木々の緑の色がいい。コントラストも高く、風景写真の奥行きを感じさせる

●PhotoshopCS(オートフォトファイン!6)

画像 一転して明るめで鮮やかな発色。シャドウが少し浮いているが、このような暗部が少なくカラフルな画像ならまったく気にならない。見た目の印象はもっともよい
画像 全体的に明るく、色も淡い。色調は狂っていないが、シャドウから中間調が浮いている感じだ。オートフォトファイン!6の失敗例だろう(あからさまな失敗ではないが)

●ダイレクト印刷(L判印刷)

画像 色が濃くて沈んだ雰囲気に感じるかもしれないが、元画像にはもっとも近い。花びらの色飽和が大きい。見栄え重視なら「こだわり印刷」でオートフォトファインを使うべきだ
画像 EPSON Easy Photo Printの自動補正(ExifPrint)とほとんど同じだが、空のグラデーションはこちらのほうが好ましい。コントラストが若干低いため、木々の描写は劣る

 続いてスキャン画質だ。反射原稿は若干アンダー気味になりやすいが、原稿色の再現性は高く、まったく不満はない。また、ネガフィルムも良好な色でスキャンしてくれるのはポイントが高い。

 ただしフィルム特有のザラつきが目立つので、TWAINドライバの「EPSON Scan」が備える「粒状低減」が有効だ。控えめな処理なので、強度を「強」から試してみるのもよいだろう。

 フィルムの「ホコリ除去」機能はソフトウェア処理なので、ハードウェア処理(GT-X800の「Digital ICE」やキヤノンの「FARE」)よりは精度が落ちるが、誤修正が発生する確率は低い。フィルムをできるだけきれいにしてスキャンすれば、十分に働いてくれる。

画像 アンダー気味だが、暗部の諧調はスムーズに読み取れており、色調も原稿に近い。中間調を少し明るくするだけで印象がよくなる
画像 バランスの取れた発色。コントラストが強すぎないので、諧調もきちんと表現できている。ここから先は好みの問題だ。「粒状低減」-「中」でスキャンした画像だが、ザラつきは残っている

 すでにPM-A900を購入している人も多いと思うが、使ってみて不満に感じたのはどんなところだろう? 筆者としては、ポンプユニットの動作音とインク消費が意外と速い点くらいだ。写真印刷がもう少し速いと一層よかったが、画質的には十分満足した(カラーマネジメントや色の作り込みには向かないが、こういう要望のために「PX-G920」や「PX-G5000」が存在する)。機能と性能、使い勝手が高いレベルで融合しており、フォト環境を中心に考えるなら、確実に第一候補とすべき複合機だ。

※初出時「USBケーブルが直づけ」という表現がありましたが誤りです。指摘してくださった読者の方々に感謝申し上げるとともに、関係各位にご迷惑をおかけしましたことをお詫びします。

グラフ

●A4普通紙コピー時間

画像 原稿は「カラリオ・プリンタ総合カタログ(2004年9月28日版)」の6ページ目。カラーもモノクロも画質的には「速い」で必要十分だろう

●スキャン時間(反射原稿)

画像 原稿は「カラリオ・プリンタ総合カタログ(2004年9月28日版)」の表紙。全面プレビューは実行からCCDが戻るまでのタイム。まったくストレスを感じない速度だ

●スキャン時間(35ミリネガスリーブ)

画像 3200dpiのスキャンが約2分少々というのは、なかなか高速だ。ホコリ除去を有効にすると、スキャン時間に加えて画像処理の時間がかかるため、遅くなる

●プリント時間

画像 L判の用紙は「EPSON写真用紙」、はがきは「インクジェット官製はがき」だ。全体的に高速とは言えないが、我慢できないほどではない。写真印刷は「推奨設定-高精細」、はがき印刷は「推奨設定-速い」がおすすめだ
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