まずは写真印刷の画質だ。階調の滑らかさに、染料インク機の成熟度が感じられる。人物の首筋など、明暗差が比較的大きい部分は粒状感が出やすいが、滑らかさでは顔料インク機のPX-G920などより上だ。
発色はドライバ設定やアプリケーションによる変化の幅が大きい。付属の印刷ツール「EPSON Easy Photo Print」を使った印刷では、画像によって自動補正の内容が違う。推奨設定にすると、デジカメ画像のExifPrintやPIM(Print Image Matching)が優先され、これらの情報がない画像はドライバ機能の「オートフォトファイン!6」の適用となる。なお、ドライバの詳細については関連記事を参照していただきたい。
最近のデジカメはExifPrintが主流となっているが、ExifPrintベースの自動補正はかなり派手めの発色だ。明度はあまり高くならず、彩度とコントラストがアップする。インク濃度も高くなるようで、好みが分かれそうだ。
オートフォトファイン!6は、ドライバ設定のデフォルトとなるオートレタッチ機能だ。シャドウから中間調が明るくなり、発色が淡くなる傾向が見られる。記憶色系の発色なので、多くの人に好まれるのはオートフォトファイン!6だと思う。なお、PM-A900のオートフォトファイン!6にも、最新カラーエンジンの「EPSON NATURAL PHOTO COLOR 3」が使われている。
メモリカードダイレクト印刷では、印刷メニューとして「L判印刷」と「こだわり印刷」がある。前者は色調補正をしないようなので、撮影に失敗した画像(露出アンダーやオーバー、ホワイトバランスのミスマッチによる色かぶりなど)は、きれいに印刷できない。「きれいに印刷する」という目的であれば、オートフォトファイン!6やExifPrintが使える「こだわり印刷」を使ったほうがよいだろう。
●Easy Photo Print/推奨(ExifPrint)
●PhotoshopCS(オートフォトファイン!6)
●ダイレクト印刷(L判印刷)
続いてスキャン画質だ。反射原稿は若干アンダー気味になりやすいが、原稿色の再現性は高く、まったく不満はない。また、ネガフィルムも良好な色でスキャンしてくれるのはポイントが高い。
ただしフィルム特有のザラつきが目立つので、TWAINドライバの「EPSON Scan」が備える「粒状低減」が有効だ。控えめな処理なので、強度を「強」から試してみるのもよいだろう。
フィルムの「ホコリ除去」機能はソフトウェア処理なので、ハードウェア処理(GT-X800の「Digital ICE」やキヤノンの「FARE」)よりは精度が落ちるが、誤修正が発生する確率は低い。フィルムをできるだけきれいにしてスキャンすれば、十分に働いてくれる。
すでにPM-A900を購入している人も多いと思うが、使ってみて不満に感じたのはどんなところだろう? 筆者としては、ポンプユニットの動作音とインク消費が意外と速い点くらいだ。写真印刷がもう少し速いと一層よかったが、画質的には十分満足した(カラーマネジメントや色の作り込みには向かないが、こういう要望のために「PX-G920」や「PX-G5000」が存在する)。機能と性能、使い勝手が高いレベルで融合しており、フォト環境を中心に考えるなら、確実に第一候補とすべき複合機だ。
●A4普通紙コピー時間
●スキャン時間(反射原稿)
●スキャン時間(35ミリネガスリーブ)
●プリント時間
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