デュアルコアCPUを買うのは待った方がいい

» 2005年06月14日 11時56分 公開
[IDG Japan]
IDG

 「2」は常に「1」よりもいい。2台のモニタ、2枚のグラフィックスカード、2切れのチョコレートケーキ。1はいいが、2はその2倍いい。だから皆さん、AMDとIntelが初の64ビットデュアルコアデスクトッププロセッサを発表したときの私の期待が想像できるだろう。その理由はもっぱら、2つのコアを持つプロセッサは、1つしかコアを持たないプロセッサよりも速くて性能がいいということにある。真の、体感できる性能向上を求めるすべての人にとって、これにアップグレードしようと決意するのはこれまでで最も簡単なことのはずだ。そうだろう?

 ところが、どうやらそうではないようだ。

 デュアルコアプロセッサ(特にAMDのAthlon 64 X2)の先行テストは幾つかの有望な結果を示した(それについては後で詳しく)。しかし実際は、多くのコンピュータユーザーにとって、今日の最も要求が高いアプリケーション(ゲームなど)の一部についてはシングルコアプロセッサの方がデュアルコアよりも高い性能を発揮するかもしれない。その理由は、発熱と電力と制約から、初期のデュアルコアプロセッサの大半はトップエンドのシングルコアプロセッサよりも低いクロックスピードで動作するからだ。さらに、これら初期のプロセッサは値段が高いという現実がつきまとう。それに、Intel CPUが欲しいという人は、マザーボードをアップグレードしなければデュアルコアプロセッサを機能させられない。

 苦しいことではあるが、多くの人にとって、デュアルコアプロセッサに飛びつくことは意味がないかもしれないということは認めざるを得ない。

価格とアップグレードパス

 デュアルコアプロセッサは2つの物理的な処理装置と2つのL2キャッシュを搭載する。MicrosoftのWindows XPは両方のコアを認識でき、複数のプログラムを走らせる場合、同OSはそれぞれのコアに処理をさせる。またデュアルコアはマルチスレッドアプリケーションを走らせる場合に便利だが、この種のアプリケーションはデスクトップではめったに見あたらない。願わくは、デュアルコアCPUに移行するデスクトップが増えるにつれて、マルチスレッディングを活用するプログラムも増えるといいのだが。

 AMDとIntelはかなり異なるアーキテクチャでデュアルコアを実現した。議論になりそうなことに首をつっこむ気はないが、AMDの実装の方が優れているように見える――少なくとも今のところは。

 Intelは最初に3.2GHzのPentium Extreme Edition(EE)840を投入し、最近Pentium Dラインを立ち上げた(5月27日の記事参照)。Pentium Dには3.2GHzの840、3GHzの830、2.8GHzの820がある。Intelのデュアルコアプロセッサはすべてデュアル1MバイトL2キャッシュを備えている。

 AMDの新しいAthlon 64 X2はスピードとL2キャッシュが異なるバージョンが4つ用意されている。2.4GHzで2つの1Mバイトキャッシュを持つ4800+、2.4GHzで2つの512Kバイトキャッシュを持つ4600+、2.2GHzで2つの1Mバイトキャッシュを持つ4400+、2.2GHzで2つの512Kバイトのキャッシュを持つ4200+の4種類だ。

 残念なことに、手持ちのシステムにそのまま新しいデュアルコアプロセッサを取り付けて仕事に取りかかることはできない。939ピンマザーボードをサポートするAthlon 64搭載システムを持っている人なら、アップグレードパスは一番簡単だ。マザーボードによっては、デュアルコアプロセッサに対応するためにBIOSをアップグレードしなくてはならないだろう。だがIntelが好きな人の場合は、マザーボードを交換しなくてはならない。Intelの新しい945チップセットしかデュアルコアプロセッサをサポートしていないのだ。

 そしてもう1つ、デュアルコアプロセッサに関するちょっとした情報だ――デュアルコアプロセッサは安くない。このコラムを書いている時に、PC World Product Finderで売りに出されているデュアルコアプロセッサを1つだけ見つけた。IntelはEE 840に1000個ロットで999ドルという値段を付けているが、オンラインではなんと約1100ドルで売られている(言っておくが、けたは間違っていない)。AMDの4800+、4600+、4400+、4200+の立ち上げ時の価格は、それぞれ1001ドル、803ドル、581ドル、537ドル――それも1000個ロット時だ。1個で購入したときに幾らになるかは分からない。IntelはPentium D 840、830、820にそれぞれ530ドル、316ドル、241ドルの値を付けているが、これも1000個ロット時の値段だ。

では性能は?

 そこで私はアップグレードは面倒で、価格は――特に食物連鎖の頂点では――ばかばかしいほど高いという結論に至った。では性能はどうだろうか? PC WorldのテストセンタースタッフがIntelのデュアルコアEE 840とAMDのAthlon 64 X2 4800+のベンチマークテストを行った。ただしまだPentium Dのテストは行っていない。

 EE 840のテスト結果はまちまちだった。先に書いたように、デュアルコアプロセッサのほとんどはトップエンドのシングルコアプロセッサよりクロックスピードが低い。Intelの最速シングルコアExtreme Editionは3.73GHzだ。PC WorldBench 5でシングルコアEEが102のスコアを、3.2GHzのデュアルコアEE 840が95のスコアを出したのはおそらくそのためだろう。数学が得意でない私でも、これが正しい方向でないことは分かる。とは言え、EE 840は3.2GHzのシングルコアPentium 4 640(スコア92)をわずかに上回った。

 同様の構成のシステムで、AMDのAthlon 64 X2 4800+はかなり優れたベンチマーク結果を出した。PC WorldBench 5ではこれまでで2番目に高い116のスコアをたたき出した。シングルコアの2.6GHz Athlon 64 FX 55を搭載した2台のシステムの平均値も上回った。

 Athlon 64 X2はその後、マルチタスキングテストで期待を超える成績を出した。同プロセッサ搭載システムは、PC WorldBench 5のマルチタスキングテストを6分44秒で終えた。シングルコアFX 55プロセッサ搭載システム2台の平均よりも3分42秒速かった。IntelのデュアルコアEE 840はAthlon 64 X2よりも3分程度遅かった。

シングルスレッドにはシングルコア

 それでもAMDはことあるごとに、シングルスレッドアプリケーションで絶対最速の性能を求めるなら、同社のシングルコアAthlon 64 XP FXシリーズを選ぶべきだと指摘している。同社は間もなく次のFXプロセッサを投入する計画だ。このシリーズは当面はシングルコアのままだという。次のFXプロセッサはシングルスレッドテストでX2 4800+を超える成績を出すと思う。残念なことに、このプロセッサも法外な値段になるだろう。

 それで結局どういうことなのか? デュアルコアはすごいものになるだろう。それから現時点ではAMDのデュアルコアがIntelのデュアルコアを上回っている。CDをリッピングしながら、高解像度画像を編集しながら、そして腹をさすりながらガムをかむ――これを全部同時にやってきたような人なら、きっといつか、このバッドボーイを欲しくなるだろう。

 残念ながら、両社のデュアルコアラインの最高のプロセッサは、限られた予算しかないパワーマニアには高すぎて手が届かない。ポケットに札束がうなっているのでなければ、もっとたくさんデュアルコアプロセッサが登場して、第一陣のモデルの価格が少し下がるまで待つのをお勧めする。それまでには、デュアルコアプロセッサを活かせるよう調整されたデスクトップアプリケーションも増えているかもしれない。

(by Tom Mainelli, PC World)

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年05月10日 更新
  1. 新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと (2024年05月09日)
  2. 個人が「Excel」や「Word」でCopilotを活用する方法は? (2024年05月08日)
  3. M4チップ登場! 初代iPad Proの10倍、前世代比でも最大4倍速くなったApple Silicon (2024年05月08日)
  4. Core Ultra 9を搭載した4型ディスプレイ&Webカメラ付きミニPC「AtomMan X7 Ti」がMinisforumから登場 (2024年05月08日)
  5. パナソニックがスマートTV「VIERA(ビエラ)」のFire OSモデルを6月21日から順次発売 Fire TVシリーズ譲りの操作性を実現 (2024年05月08日)
  6. iPad向け「Final Cut Pro 2」「Logic Pro 2」登場 ライブマルチカム対応「Final Cut Camera」アプリは無料公開 (2024年05月08日)
  7. SSDの“引っ越し”プラスαの価値がある! 税込み1万円前後のセンチュリー「M.2 NVMe SSDクローンBOX」を使ってみる【前編】 (2024年05月06日)
  8. マウス、モバイルRyzenを搭載した小型デスクトップPC「mouse CA」シリーズを発売 (2024年05月08日)
  9. これは“iPad SE”なのか? 新型iPadを試して分かった「無印は基準機」という位置付けとシリーズの新たな幕開け (2022年10月24日)
  10. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー