富士通のリビング本格進出なるか?――HDMI搭載PC「FMV-TEO」の実力を探る大画面TVにつなぐVistaマシン(1/4 ページ)

» 2007年03月08日 14時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

大画面TVと接続して使うリビングPCがトレンドに

ディスプレイが付属せず、PC単体で販売されるFMV-TEO

 「FMV-TEO」は富士通の2007年春モデルとして登場した小型のデスクトップPCだ。同社は以前からリビングPCに積極的で、37インチワイドという大画面液晶ディスプレイ一体型のデジタルTVチューナー内蔵モデル「FMV-DESKPOWER TX」も投入しているが、FMV-TEOは既に家庭にある大画面TVと接続して利用することを想定している。これは同社製品としては初めてのアプローチだ。同種の新製品としてはソニーからテレビサイドPC「TP1」がほぼ時を同じくして登場しており、“HDMIケーブル1本でTVに接続するPC”が今年のトレンドになりつつある。

 デザインは、リビングへの設置に配慮したホワイト基調のカラーだが、形状やサイズは既存のブック型PCに近い。突起部を含まない本体サイズは340(幅)×362.5(奥行き)×65(高さ)ミリ、重量は約6.4キロで高さを抑えたスリムなボディだ。光学ドライブをスロットインタイプとし、前面の端子類はすべてカバー内に収め、角を落とした形状にしつつ、インシュレーター風のフットスタンドを設けることでAV家電のようなスマートな印象を与えている。それでもあえてPCであることを感じさせるデザインにまとめているのは、比較対象にされやすいソニーの円形PC「TP1」と大きく異なる点だ。PCベンダーのイメージが強い富士通らしい仕上がりと言える。

ホワイトとグレーのツートーンカラーを採用(写真=左)。前面にはスロットインタイプの光学ドライブを搭載する。上面と右側面には放熱用のホールが設けられている。底面にはAV機器を意識したインシュレータ風のフットスタンドを装備(写真=右)。別売のスタンドを使えば、縦置きで設置することも可能だ

 店頭販売モデルのラインアップは、3波デジタルTVチューナー内蔵の「TEO50U/D」と、TVチューナーを内蔵しない「TEO30U」の2製品がある。両製品ともOSはWindows AeroやWindows Media Centerの機能を持つVista Home Premiumだ。基本スペックの違いは、こちらの記事を参照してほしい。TEO50U/Dは単にリビングPCとしての利用に限らず、デジタル放送対応レコーダーとしての活用が可能。一方、TEO30UはTV録画を家電のレコーダー機器にまかせて、低価格のリビングPCに徹する、と製品の位置付けは明確だ。今回は上位モデルのTEO50U/Dを試用してみた。なお、試用した機材は一部ドライバが製品版より古いバージョンだったため、実際の製品と一部異なる可能性がある点をお断りしておく。

HDMIケーブル1本で接続、HDCP対応のDVI-I端子も用意

 基本スペックを確認しておくと、CPUはノートPC向けのCore 2 Duo T5500(1.66GHz)、メインメモリはPC2-5300対応で容量1Gバイト(512Mバイト×2のデュアルチャンネル)、HDDは回転数7200rpmで容量400Gバイト、光学ドライブはDVD±R DL対応DVDスーパーマルチドライブだ。

 チップセットはATI Radeon Xpress 1250+SB600を採用し、グラフィックス機能はチップセット内蔵となっている。そのグラフィックス機能だが、ATI Radeon X700相当と1世代前ながらミドルレンジクラスの性能を実現しており、Windows Aeroの利用を考慮して投入されたチップセットだ。HDMI出力のサポートに加えて、HDMIとDVIの同時出力も行える。ATIのセットトップボックス/デジタルTV向けグラフィックスチップ「Xellion」(ジリオン)で蓄積された技術をPC向けに応用したAvivoもサポートしており、HD映像にも対応する強力な動画再生支援機能やTVとの高い接続性を実現する。現時点でリビングPC向けにはもっとも適したチップセットと言えるだろう。

 メモリスロットは2つだが、購入時点でメモリモジュールが2枚装着されているため、空きスロットはない。拡張スロットはPCIスロットを1つ備えているが、TEO50U/DではデジタルTVチューナーカードが実装済みで、こちらも空きはない。拡張インタフェースは、USB 2.0ポートを前面に2つと背面に4つ、前面に4ピンのIEEE1394とメモリカードスロット(SDメモリーカード/メモリースティックPro/xDピクチャーカード対応)を備えている。拡張性は高くはないが、リビングPCという位置付けを考慮すれば、必要十分といったところだ。

 通信機能は、1000BASE-Tの有線LANとV.90のFAXモデム、そしてIEEE802.11a/g/bの無線LANを用意している。ネットワークケーブルの配線がしにくい場所に設置する際、無線LANが重宝するだろう。

前面のカバーを開くと、2つのUSB 2.0、4ピンのIEEE1394、サウンド関連、メモリカードスロット、B-CASカードスロットが現れる。背面には、TVアンテナ入力、HDMI出力、HDCP対応のDVI-I出力、4つのUSB 2.0、光デジタル音声出力などのインタフェースが並ぶ

 映像出力は2系統あり、HDMIとデジタル/アナログ兼用のDVI-Iを備えている。大きな特徴は、HDMIケーブル1本で大画面TVと接続できる点だ。PCとTVをデジタル接続し、デジタル放送の視聴や録画した番組のハイビジョンクオリティでの再生を行うにはデータの暗号化が必要なため、HDMIの採用は必然と言える。

 FMV-TEOにおけるHDMI接続のメリットは、映像と音声をケーブル1本で高品位に伝送できることと、ビエラリンクに対応することが挙げられる。パナソニックのビエラリンク対応TVと接続する場合、FMV-TEOに付属するリモコンの電源ボタンを押すだけで、PCとTVの電源オンからTV側の入力切り替えまでが自動実行される「ワンタッチ画面表示」機能が利用できるため、液晶ディスプレイ一体型PCのような手軽さで扱えるだろう。

 HDMIに限らず、DVI-I端子も著作権保護機能のHDCPに対応しており、HDCP対応のTVやPC用ディスプレイとDVI-D接続することでデジタル放送の視聴や録画した番組の再生が可能だ。DVI-IからD-Subへの変換アダプタを用いてアナログRGBで接続することも可能だが、この場合はデータ保護の観点からデジタル放送の視聴や録画番組の再生が行えない。つまりTEO50U/Dを利用するには、HDMIもしくはHDCP対応のDVI入力を持つTVやディスプレイが必要になるので注意が必要だ。

 HDMI接続は民生機ですら相性問題がゼロではないので、この点を考慮するとD端子の出力もサポートしてほしかった。デジタル放送の著作権保護の関係からD端子があまり好ましくないことは理解できるが、買ってはみたがTVとの相性問題で映らないというのでは納得がいかないだろう。富士通のWebサイトでTVとの接続確認情報が公開されているが、現状では製品数が多くない状況だ。FMV-TEO自体は魅力的な製品なだけに、今後も接続検証の情報を随時追加で公開し、幅広いユーザーが安心して購入できる製品になってくれることを望みたい。

内部のレイアウトはすっきりしており、メモリ交換などの作業がやりやすい(写真=左)。ノートPC向けCPUのCore 2 Duo T5500(1.66GHz)を採用するため、CPUクーラーは小型で動作音も小さい。HDMIとDVI-Iの出力端子を実装したマザーボード(写真=中央)。デジタルTVチューナーカード用のPCIスロットとFAXモデムカード用のAMRスロット、無線LANモジュールはライザーカードに配置されている。地上・BS・110度CS対応のデジタルTVチューナーカードはピクセラ製で、シャープ製のチューナーユニットと富士通の暗号化技術を採用したセキュアLSIを搭載する(写真=右)

 キーボードはタッチパッドが一体となったワイヤレスタイプが付属する。リモコン操作でAV機能やWebブラウザが扱えることもあり、キーボードは余分なキーやワンタッチボタンがないシンプルな設計だ。ただし、キーボードを小型化するためか、タッチパッドは右側に配置されているため、文字入力とマウスポインタの操作を交互に行うような作業では、手の動きが大きくなってしまう。リビングでの利用は、キーボードを膝の上に乗せて使うスタイルが多いと思うので、マウスを付属するよりタッチパッド一体型のワイヤレスキーボードを採用するという選択はよいのだが、使い勝手にもう一工夫が欲しかったところだ。

タッチパッドを備えたワイヤレスキーボードは単三形乾電池を2本使用し、稼働範囲は最大10メートルとなっている(写真=左)。付属のリモコンには、Media Center起動ボタンや専用の10フィートUIを起動する「インターネット」ボタンが用意されている(写真=右/クリックで全体を表示)
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