世界最小Vista Ultimateマシンは使えるか?――「OQO model 02」実力診断自慢用ミニPCを実戦投入(3/3 ページ)

» 2007年04月26日 17時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]
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ベンチマークテストは振るわないが、レスポンスは実用レベル

 ここからは、OQO model 02のパフォーマンスをチェックしていこう。前回紹介した通り、基本スペックは、CPUがVIAの超低電圧版C7-M 1.5GHz、メインメモリが1Gバイト、HDDが60Gバイト、グラフィックス機能がVIA VX700チップセットに統合されたUniChrome Proコアだ。VIA VX700チップセットにはサウスブリッジの機能も統合されている。

 VX700チップセット統合のUniChrome Proコアは、Windows Aeroを動かすのに必須のDirectX 9に対応しておらず、Windows Aeroの機能は利用できなかった。Vista Ultimate搭載モデルもインタフェースは、Vista Home Basicと同じWindowsベーシックになっている点には注意が必要だ。もっとも、3Dフリップや半透明効果といったグラフィックス機能が使えないだけで、そのほかのVista Ultimateの付加機能は利用できる。

Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア

 まずはWindowsエクスペリエンスインデックスのスコアだが、Vista仕様上の最低値である1.0となった。サブスコアは、プロセッサが1.9、メモリが3.1、グラフィックスが1.9、ゲーム用グラフィックスが1.0、HDDが3.6だ。やはりUniChrome Proコアによるグラフィックス機能が足を引っ張っている。

 総合ベンチマークテストソフトのPCMark 05も試したが、やはりHDD以外はスコアが振るわなかった。ちなみに評価機のHDDは、1.8インチ/4200rpmのUltra ATA HDD「Travelstar C4K60 HTC426060G8CE00」だった。デフォルトで省電力モードは、「高パフォーマンス」「バランス」「省電力」の3つから選べるが、これを「省電力」に設定すると、パフォーマンスはかなり低下し、Vistaを動作させるには少し荷が重い印象だ。

 一方、省電力モードを「高パフォーマンス」にすると、Vistaの動作はようやく実用的なレスポンスになり、ストレスはかなり軽減される。実際にストップウォッチで起動や終了にかかる時間を計測してみたが、動作速度はまずまずだった。Vista推奨のスリープを使うぶんには、復帰のレスポンスが遅いと感じるようなことはない。

PCMark 05のスコア(写真=左)。高パフォーマンスとバランスのスコアは同じだった。実測による各種動作に要する時間(写真=右)

 以上のテストのほか、動画再生も試してみた。「省電力」設定でのMPEG-2ファイル(720×480ドット/4Mbps)再生はところどころコマ落ちするが、動きの激しいコンテンツでなければ視聴できるレベルだった。ただし、CPU使用率はほぼ常時100%になり、ほかの作業はできない。「パフォーマンス」設定にすると、MPEG-2の再生はかなりスムーズになり、CPU負荷率が65%前後に軽減される。小さなウィンドウで動画を表示しながらメールを書くなど、簡単な作業をする程度ならば問題なく行えた。

 さらに「パフォーマンス」設定で、オプションのDVDスーパーマルチドライブ搭載ドッキングステーション(ブルレー販売価格6万6500円)を接続し、Windows Media Centerで全画面のDVD-Video再生を行ったが、CPU負荷率は45〜50%程度で難なく視聴できた。ただし、内蔵スピーカーの音声出力は貧弱なのでヘッドフォンを使うのがベターだ。最後に720pや1080pのWMV HDファイルも再生してみたが、いずれもコマ落ちが激しく視聴は困難だった。せっかくHDMI出力を搭載しているのに、パフォーマンスがハイビジョンコンテンツの再生に追いついていないのは惜しい。

小さなボディの代償は……

 使っていて気になったのはボディの発熱と動作音だ。MPEG-2ファイルを1時間ほど再生したあとボディ表面の温度を放射温度計で測定してみると、キーボード面は35度程度だが、バッテリーが装着された背面は38度程度、上面の排気口付近は45度程度まで上昇していた。さらに高負荷の状態で動作を続けると、背面が部分的に40度を超えることもあり、握った両手が少し熱く感じる。

 また、使用中にファンは常時回転しており、少し高い負荷がかかるだけで高速回転する。高速回転時にはかなり風切り音が発生するほか、キーンと高い音がわずかに混じるため、静かな室内では周囲に配慮して使わなければならなかった。小型軽量のボディを実現するために低消費電力で実装面積が小さいVIAのC7-MとVX700を採用したOQO model 02だが、発熱と放熱にともなう騒音は回避できていない。この辺りはコンパクトボディの代償として、我慢が必要な部分だ。

 もう1つ、これは試作機だからかもしれないが、バッテリー駆動時間の短さにも困ってしまった。標準のリチウムポリマーバッテリー(3.7ボルト 4500mAh)は約3時間の駆動が可能とのことだが、今回入手した機材は1時間から1時間半程度の連続動作が限界だった。たとえば、満充電の状態で「省電力」設定にしてMPEG-2ファイルを再生し続けたところ、30分経過後にバッテリー残量は50%を切り、約1時間後にバッテリー残量不足で休止状態に自動的に移行した。必要に応じて、駆動時間を2倍に延ばせる大容量バッテリー(ブルレー販売価格3万4500円)の追加を検討するとよいだろう。

背面にはリチウムポリマーバッテリー(3.7ボルト 4500mAh)が装着されている(写真=左)。ACアダプターは光沢塗装されている(写真=右)

強気の価格設定だけに、超小型モバイルPCとしての完成度は高い

 以上、短期間ながらOQO model 02を持ち歩いて使ってみたが、入力環境をはじめとする使い勝手は予想以上に洗練されており、ボディの高級感も相まって、超小型モバイルPCとして完成度の高い1台という印象を持った。PCの小型化と軽量化は国内メーカーのお家芸と言える分野だが、OQO model 02には国内メーカーのモデルにはない創意工夫が多数あり、荒削りな部分は残しているものの、素直に感心させられる。

 とはいえ、キーボードを含めて日本語化が完全にされていないことと、何よりオプション類も含めた価格が非常に高価になってしまうことから、一部のユーザー以外にはおすすめしにくいことも事実だ。逆にいえば、OQO model 02の超高級ミニPCというコンセプトに共感できるならば、購入後に非常に高い満足感が得られるだろう。

 今後の課題はパフォーマンスや省電力設計になるが、将来的にはインテルの次世代モバイルプラットフォームなどを採用することで、Vistaを快適に動かせる性能と長時間のバッテリー駆動を両立できる可能性は十分にある。OQOには今後のモデルチェンジによる性能アップと日本市場への本格参入を、そして国内メーカーにはOQO model 02以上の小型軽量を実現したモバイルPCの投入を大いに期待したい。

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