世界の多くの国でノートPCのシェアが上昇している。すでに多くの先進国ではノートPCのシェアがデスクトップPCを上回る状況だ。こうなると、初めて触るPCがノートPCだった、というユーザーもどんどん増えてくる。これは同時に、初めて触るキーボードがノートPCのキーボードになる、ということでもある。タイプライターなどという機械は、とっくの昔に市場から消え去ってしまった。
そうでなくても、これだけノートPCが普及すれば、多くのユーザーがノートPCのキーボードに違和感を抱かなくなる。逆に、ノートPCのキーボードと異なる、昔ながらの(デスクトップPC用の)キーボードに対して、「ストロークが深くて疲れる」「キーが重くてイヤ」といった感想が増えても不思議ではない。職業的に大量のテキストを入力しなければならないユーザー向けの製品は別として、これからの一般ユーザーにはデスクトップPCでも、ノートPCに近い、比較的ストロークの浅いキーボードが好まれるようになってくるかもしれない。
実際、リビング設置を想定したコンシューマー向けPCの中には、ノートPCにも使われるパンタグラフタイプのキーボードを採用したものが増えている。机の上ではなく、膝の上に乗せて使うには、キーボードは少しでも軽くしたいし、そもそもリビングのPCで大量のテキストを入力することなどないからだ。
先日発表されたiMacに採用された新しい“Apple Keyboard”も、MacBookのキーボードに似た、きわめて薄いものになっている。このキャラメルの断面のような形状をしたキートップを持つキーボードは、つめを伸ばしていてもキーとキーの間に挟まらないということで女性に評判がいいということも聞くが、筆者にその真偽は不明だ。いずれにしても、ヘビーな入力用途に向いていないのは確かだろう(そういう意味では次のモデルチェンジで、Mac Proにどのようなキーボードが採用されるのか気になるところだ)。
PCの利用する主な用途が、自らデータ(ソフトウェアを含む)を作成することだった時代から、他人が作成したコンテンツを利用する時代に移行したことで、入力デバイスであるキーボードが変貌するのはある意味必然であり、良いキーボードの条件が変わったとしても不思議ではない。ノートPCの普及やPCの利用目的の変化は、デスクトップPCのキーボードにも影響を与えると筆者は考えている。
そんなことを意識したのかどうかは知らないが、米Logitech(日本法人はロジクール)は、デザインを重視したノートPCライクな薄型のキーボードをリリースしている。「diNovo」シリーズと呼ばれる製品で、一般的なキーボードとはひと味違うデザインが特徴だ。キーボードとしては決して安価な製品ではないのだが、米国では好評なようでシリーズ化されている。日本でもマウスとセットになった「diNovo Cordless Desktop」」(DN-800)が販売されたことがあるが、現在ではオンラインストアでの販売も終了し、入手が困難になっている。
そのdiNovoシリーズの最新作、「diNovo Edge」(DN-1000)が日本でも販売されることになった。このdiNovo Edgeは、オンラインストア価格が2万4800円という、同シリーズ中のハイエンドモデルとなる。従来製品と異なりマウスはバンドルされないが、その代わりにスクロール領域を備えた円形のタッチパッド(“TouchDisc”と呼ばれる)をポインティングデバイスとして内蔵する。
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