PCだからこそできる“地デジ”を提案したい――「MonsterTV HDU」担当者インタビュー(1/2 ページ)

» 2007年10月17日 16時59分 公開
[後藤治,ITmedia]

周辺機器でもコンシューマー製品に注力

 デル初の地デジ対応PCは、サードパーティ製品のバンドルという形で実現した。同社は10月11日に周辺機器の新製品発表会を開催。液晶ディスプレイやプリンタとともに、USB接続の地上デジタルTVチューナー「MonsterTV HDU」を披露した(関連レビュー:「お出かけ地デジ」で山手線を回ってみるテスト)。デルが周辺機器だけの発表会を行うのはこれが初めてのことだが、その会場も日比谷公園内のレストランを選んでいる。

 もちろん、その場所がMonsterTV HDUに有利な電波状況のロケーションだったということもあるだろうが、ホテルや会議室などのかしこまった場所ではなく、報道関係者が食事や談笑をしながら気軽に展示機に触れられる機会を設けたのは、今年に入って特にコンシューマー向け製品に注力している同社のブランド戦略と無関係ではないだろう。そしてデルは今回、コンシューマー市場で他社の後塵を拝していた地デジPCの投入を、エスケイネット製チューナーのバンドルという形で解決したことになる。

 MonsterTV HDUを“二人三脚”で手がけた、デル ソフトウェア&周辺機器マーケティング本部ブランドマネージャの正木龍士氏と、エスケイネット デジタルプロダクツ推進室マネージャの田野勉氏に話を聞いた。

正木氏(写真=中央)と田野氏(写真=右)の付き合いは3年近くになるという。両社の協業を象徴するように、2人の関係もかなり親密に見えた。また、場所がレストランのテラスだったこともあり、終始なごやかな雰囲気でインタビューに応じてくれた

20%以上の同時購入を「当然見込んでいる」

――今回エスケイネットとの協業によって、デル初の地デジPCが実現したわけですが、まず初めにその経緯をお聞かせください。

正木氏 エスケイネットさんとは、ワンセグチューナーが市場に出回り始めた昨年11月に、弊社のBTOメニューの1つとして、ExpressCardタイプのワンセグチューナー(MonsterTV 1D Expressカード for DELL)の供給で協業しています。

 その当時に、例えばPCだけ、ワンセグだけ、というように販売するよりも、お互いを1つのソリューションとして提案できたほうがメリットがあると考えていました。その自然な流れとして、よりパートナーシップを強化する形で、今回のフルセグ版(MonsterTV HDU)を開発しています。

――MonsterTV HDUは外付けですが、内蔵タイプは考えませんでしたか?

正木氏 いまも検討はしていますが、(PC自体は)グローバルデザインなので、地デジチューナー内蔵モデルを開発する場合は国内向けのユニークなデザインになるという問題から、今回は見送っています。

 また、その場合は限定されたモデルだけになってしまうので、(BTOによって)ユーザーの気に入ったモデルで気軽に地デジ対応を選べるというコンセプトが実現できません。それでは、他社が苦しんでいる地デジ搭載PCの状況と同じになってしまうかもしれないという危惧がありました。

――エスケイネット側から見れば、USB接続の外付け地デジチューナーを単体で販売することは現時点ではできない、つまりどこかのPCメーカーに採用してもらう必要があった。それは“自然な流れ”というよりも、それしか選択肢がなかったという印象を受けますが……。

田野氏 両方ですよね。確かに供給先はどのメーカーでもいいわけですが、そこでデルさんを選んだのは、いままでの経緯があったからですし。

正木氏 我々もPC本体に関してはグローバルデザインになりますが、周辺機器の一部、特に国内特有の機能に関しては、ほかのメーカーと協力していく部分だと考えています。

――今回の協業はお互いにとって非常にメリットが大きいわけですね。ちなみに、MonsterTV HDUをほかのPCメーカーへ供給する予定は?

田野氏 まずはデルさんへ独占供給という形になりますが、将来的にはほかのメーカーへ供給する可能性もありますね。ただ、MonsterTV 1D Expressカードは、いまも継続してデル専用になっています。

――そのMonsterTV 1D Expressカード for DELLですが、いまでも同時購入率が平均20%で推移していると発表会でコメントしていましたね。

正木氏 ええ、最大瞬間風速では40%を超えました。当時ワンセグチューナー付きPCは1%を切るくらいでしたから、その実績を考えれば、今回のMonsterTV HDUについても同じ数字を達成できると見込んでいます。

 とくに他社の地デジ搭載PCは、店頭販売モデルで20万円クラスが普通ですが、地デジチューナーを搭載していなければ13万〜14万円と、価格差が大きすぎる。この価格がPC環境で地デジが普及しない要因の1つになっていると思います。

 もう1つの要因として考えられるのは、店頭モデルの地デジ搭載PCのスペックが決め打ちになっていて、自分の気に入ったデザインのモデルを選びづらいという点。デルならエントリーからハイエンドまで、たくさんある選択肢から好きなモデルを選ぶことができます。

――確かに外付けチューナーならエントリークラスでも地デジPCを選べるという価格面でのメリットはあります。でも例えば、1280×800ドットのパネルを搭載したノートPCで、地デジを見たいと思うユーザーはどれだけいるのでしょうか?

正木氏 PCをセカンドテレビとして活用する、といった用途では需要があると思いますし、例えフルHDに対応したパネルではなくても映像は美しいので、潜在ユーザーは多いと思いますよ。

――現在、MonsterTV HDUをバンドルできるのは「Inspiron」シリーズや「XPS」シリーズですが、「Vostro」での展開は考えていますか?

正木氏 基本的にコンシューマーにフォーカスした製品になるので、その予定はありません。大企業向けに「Latitude」、中小企業向けの「Vostro」、そしてコンシューマー市場の「Inspiron/XPS」という区分けが不鮮明になってしまいますから。

――なるほど。次に製品の詳細について少しお聞かせください。MonsterTV HDUはデータ放送に対応していませんが、今後対応するのでしょうか。

田野氏 今回は基本機能だけの提供ですが、当然データ放送への対応予定はあります。もちろんそれだけではなく、おまかせ録画やCMカットのような、録画に関する便利な機能も検討しています。このへんはファームアップで対応できる部分もありますが、例えばダブルチューナーのようなハードウェアの変更になれば、別のモデルということになるでしょう。このあたりは市場の動向を見て投入を検討していきます。

――3波モデルは?

田野氏 それはないですね。仮にBS・CSをやるとアンテナの問題もあるので、“じゃああのでかい円盤を同梱するのか”と(笑)。手のひらサイズのMonsterTV HDUなら地デジだけで魅力的なソリューションだと思います。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  5. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. ゼロからの画像生成も可能に――アドビが生成AI機能を強化した「Photoshop」のβ版を公開 (2024年04月23日)
  10. MetaがMR/VRヘッドセット界の“Android”を目指す 「Quest」シリーズのOSを他社に開放、ASUSやLenovoが独自の新ハードを開発中 (2024年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー