ミドルレンジの複合機は、エプソンのPM-A840、キヤノンのMP610、日本HPのC6280を検証してきた。市場での人気が集中している価格帯だが、ここで取り上げた3機種は特徴がはっきりしているため、例年よりも選びやすい。
PM-A840は、ハイエンドのPM-T960と同等のプリントエンジンを備え、写真印刷の画質に優れる。PM-T970と比べて省かれているのは、有線/無線LANインタフェース、2系統給紙機構(PM-A840は背面給紙のみ)、自動両面印刷、フィルムスキャンなどの機能だ。液晶モニタのサイズと画質も下がるが、実用上これは大きな問題ではないだろう。豊富なコピーレイアウトや手書き合成印刷など、アミューズメント系の機能に関してはPM-T960とほぼ同じ仕様だ。写真印刷の画質を最重視する人に向いている。


PM-A840:ボディの形状はPM-T960と似ているが、光沢ブラックの天板が個性的だ(写真=左)。操作パネルのレイアウトはPM-T970と共通で、左から右へ向かってボタンを順番に押していく仕組み(写真=中央)。給紙は背面からの1系統とシンプルな作りだ(写真=右)一方でキヤノンのMP610は、ハイエンドのMP970とほぼ同等の基本機能を持ちつつ、プリントエンジンに差を付けている。エプソンのPM-T960とPM-A840とは、まったく逆のアプローチだ。MP610の写真印刷は4色インクだが、6色インクのMP970と比較しても、見た目の画質には大差がない。むしろ、MP810譲りの高速印刷が可能なプリントエンジンが、実際の利用シーンで有利に働くことも多いだろう。
2系統給紙や自動両面印刷、顔料Bkインクの搭載といった製品のウリも、昨年のベストセラーモデルだった「PIXUS MP600」からしっかり受け継いでいる。ミドルレンジでここまでの機能を実装してくると、足りないものはネットワークインタフェースくらいのものだ。


MP610:プリントエンジンを強化しつつ、ボディは従来より高さを抑えた(写真=左)。iPodをほうふつさせるホイール型ユーザーインタフェースの「Easy-Scroll Wheel」は健在(写真=中央)。前面と背面の2Way給紙と自動両面印刷に対応する(写真=右)最後にC6280だが、SPTプリントエンジンなど主要な機能と性能はハイエンドのC8180に準ずる。ネットワーク機能が有線LANのみで、フィルムスキャンやDVDスーパーマルチドライブは持たないが、自動両面印刷ユニットが標準で付属するのは利点だ。C6280は販売店を限定したモデルなのがネックだが、Web通販で買えるので大きなマイナスではない。C8180よりも幅広いユーザーにおすすめできる。
※記事初出時、「C6280はCD/DVDレーベルへのインクジェット印刷機能を用意している」との記載がありましたが、実際はCD/DVDレーベルへの印刷機能を備えていません。お詫びして訂正させていただきます。


C6280:上位のC8180とは異なり、標準的な液晶パネルと機能別のボタンを組み合わせた操作パネルを採用する(写真=左、中央)。給紙機構は小型のフォトトレイを加えた2系統で、前面給排紙と自動両面印刷に対応する(写真=右)。有線LANインタフェースの標準搭載がありがたい以上を踏まえてミドルレンジで選ぶ1台は、おおかたの予想通りMP610だ。写真印刷こそ4色だが、6色印刷のPM-A840やC6280と比べても画質は遜色ない。加えて顔料Bkインクを備えている点や、2系統給紙機構と自動両面印刷に標準で対応している点などもアドバンテージになる。ミドルレンジはMP610を軸にして、PM-A840やC6280と比較して必要な機能をより多く満たしている1台を選べばよいだろう。
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