PC USER Pro
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» 2008年06月20日 17時30分 公開

人気モデルをより多機能に:“家庭も仕事もこれ1台”な複合機を求めて――キヤノン「PIXUS MX850」実力診断 (3/3)

[榊信康,ITmedia]
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MP Navigator EXでPDF作成も簡単

MP Navigator EXのメイン画面では、起動するメニューを「読み込み(スキャン)」、「画像の表示/利用(簡易画像管理)」、「ワンクリック(用途別のランチャー機能)」から選択する

 マルチクロップではなく、マルチページスキャンが必要となるビジネスシーンにおいては、ScanGearよりも、むしろ入力統合アプリケーション「MP Navigator EX」の方が有用かもしれない。MP Navigator EXは、スキャナ機能とメモリカードからデータを読み込むためのツールだ。

 ScanGearにもマルチページスキャン用の設定はあるが、スキャン画像の管理や保存など、総合的な面でMP Navigator EXに分がある。スキャナ機能におけるMP Navigator EXは、ADFとの連携を強く意識しており、ADFスキャン用の専用モードを用意している。

 スキャンした原稿はテンポラリデータとしてプールされ、画面内のメインエリアにサムネイルで表示される。ここから任意のデータを選択すると、画面下部の選択データエリアに配置され、保存が可能になる。保存用のデータフォーマットはJPEG、TIFF、BMPが選択可能だ。ファイル名には任意の文字列を指定でき、文字列の後に連番が振られる。

 また、PDFファイルとしての保存も可能だ。単ページごとはもちろん、マルチページPDFも作成できる。さらには、OCRに転送することによって、テキストデータを生成し、透明テキストとしてPDFのイメージとリンクさせられる。これにより、検索機能が利用可能で、利便性が高い資料が作成できるわけだ。

 こうして作成する資料の価値は、OCR機能の文字認識精度に大きく左右されるわけだが、ユーザーが修正していけば完全なデータも作成できるだおる(それなりに手間がかかるが)。いずれにせよ、これだけの機能が複合機の一機能として用意されているのだからありがたい。

 このほかでは、既存のPDFファイルに対して、スキャンしたデータを追加できるなど、細かな点にまで配慮されている。また、セキュリティ機能も充実しており、印刷や編集する場合だけではなく、閲覧する際のパスワードがそれぞれ設定できる。とにかく、MP Navigator EXのPDF作成機能は秀逸の一言に尽きる。

MP Navigator EXのスキャンモード画面では、左にあるボタンでスキャン先(原稿台、ADF、メモリカード)を選択する(写真=左)。スキャン後はメインエリアにサムネイルがリストアップされる。設定画面では、簡易的なものながらスキャン時の解像度や傾き補正などの設定が可能だ(写真=中央)。詳細な設定をするには「スキャナドライバを使う」の設定にすれば、ScanGearで調整が行える。ワンクリックモードでは、各ボタンをクリックすると、あらかじめ設定しておいた形式でファイルを保存したり、指定したアプリケーションへデータを転送する(写真=右)

ADFを生かす豊富なコピー機能を用意

2.5インチ液晶を備えたコントロールパネル

 コピーやFAX、ダイレクトプリントの機能は前面のコントロールパネルで操作を行う。液晶モニタは2.5インチでMP610と同じサイズを確保している一方、FAXを内蔵するなどの機能追加があるため、家庭向けPIXUSシリーズに広く採用されているホイール型ユーザーインタフェース「Easy-Scroll Wheel」は搭載していない。コントロールパネルは、機能別のボタンや十字キー、10キーが並ぶビジネス機らしい構成だ。

 とはいえ、ビジネス向けインクジェット複合機として代を重ねただけあって、MX850のインタフェースは練りこまれており、使い勝手がよい。コピーモードはMP610と同等で、このクラスにしては豊富にそろえている。1ページへの割り付け印刷は2in1および4in1が選択可能なほか、同一原稿を1ページに複数割り付ける「繰り返しコピー」の機能も用意している。もちろん、両面コピーもサポートしており、両面から両面、片面から両面、両面から片面の3モードが選択可能だ。ただし、原稿をADFに通す関係上、若干の制約はあり、用紙サイズがレターまたはA4の場合にのみに限られる。

 また、同じくADFを使用する際の機能として、「ページ順にコピー」がある。これは、いわゆるソータ機能であり、複数原稿のスキャンデータを本体のメモリに蓄積し、1部ごとに正しいページ順で出力する。ユーザーが仕分けする労力を省けるため、大量の部数を出力する際には重宝する。

 このほかにユニークな機能として「枠消しコピー」がある。通常、原稿台よりも小さな原稿をコピーする場合、スキャンする時に原稿以外の部分を取り込んでしまい、この部分が印刷時に黒く出力される。いうまでもなくインクの無駄づかいなわけだが、枠消しコピーを使用すれば、原稿を自動認識し、原稿以外の部分は印刷しないようになる。地味ではあるが、ランニングコストの低減につながる便利な機能といえるだろう。

2.5インチカラー液晶のおかげで、設定内容は分かりやすい(写真=左)。さまざまなコピー機能が用意されている(写真=中央)。スーパーG3規格に対応した普通紙カラーFAXの機能では、8カ所のワンタッチダイヤルボタンや100カ所のFAX番号を登録可能な短縮ダイヤルの機能を持つ(写真=右)。MX850の本体だけでなく、PCからのファクス送信も可能だ

デジタルカメラやメモリカードからのダイレクト印刷機能では、画像を確認しながら印刷設定ができるのはもちろん、4分割や16分割などのシールプリントが行える(写真=左)。ダイレクト印刷でも自動写真補正や赤目補正などの機能を利用できる(写真=右)

ビジネス向けインクジェットとして不満のないスピード

ベンチマークテストの結果
A4カラー写真印刷フチあり(独自サンプル)
「1」で1部プリント 4分37秒16
「きれい(2)」で1部プリント 1分44秒54
L判カラー写真印刷フチあり(独自サンプル)
「1」で1部プリント 1分32秒81
「きれい(2)」で1部プリント 30秒72
L判カラー写真印刷フチなし(独自サンプル)
「1」で1部プリント 1分45秒04
「きれい(2)」で1部プリント 32秒82
A4モノクロテキスト印刷(JEITA J1)
「きれい(2)」で1部プリント 16秒85
「きれい(2)」で5部プリント 1分28秒89
「標準(3)」で1部プリント 4秒93
「標準(3)」で5部プリント 20秒41
L判カラー写真スキャン(独自サンプル)
プレビュー 5秒16
300dpiで1部スキャン(原稿台) 6秒16
600dpiで1部スキャン(原稿台) 11秒56
1200dpiで1部スキャン(原稿台) 33秒85
A4カラー文書スキャン(独自サンプル)
150dpiで5部スキャン(ADF) 35秒54
300dpiで5部スキャン(ADF) 1分9秒53
600dpiで5部スキャン(ADF) 3分12秒36
A4カラーコピー(JEITA J6)
「標準」で1部コピー(原稿台) 28秒11
「標準」で5部コピー(ADF) 1分44秒56
「きれい」で1部コピー(原稿台) 1分7秒04
「きれい」で5部コピー(ADF) 4分50秒11
テストに使用したPCのスペック CPU:Pentium 4 1.6GHz、メインメモリ:1Gバイト、HDD:250Gバイト(7200rpm)、OS:Windows XP Professional(SP2)

 オフィスユースにおいて、軽快なレスポンスは必要不可欠な要素だ。ここでは、MX850におけるプリント、スキャン、コピーの速度をストップウォッチで実測してみた。プリントのテストはPC上で印刷ボタンを押してから最後の用紙が排出される瞬間まで、スキャンのテストはPC上でスキャンボタンを押してから画像が画面に表示される瞬間まで、コピーのテストは本体のコピーボタンを押してから最後の用紙が排出される瞬間までをそれぞれ計測している。

 写真印刷に使用したデータは容量約1.8Mバイト/約600万画素のJPEGファイルだ。用紙はカラー写真印刷の場合のみキヤノン純正の「プロフェッショナルフォトペーパー」を使用した。そのほかは普通紙だ。

 結果は右表の通りだ。定評あるMP610のプリントエンジンを搭載するだけあって、プリントスピードはなかなか高速だ。4608ものノズルを装備するプリントヘッドと3段階の可変ドロップサイズはダテではなく、SOHOや小規模事業所で使うインクジェットプリンタとしてはストレスのない印刷速度が得られる。

 また、フチなし印刷にも注目すべき点がある。PIXUSシリーズは従来からフチあり印刷とフチなし印刷の速度差が小さかったが、本機はより磨きがかかっている。これは給紙側のみならず、排紙側にも紙制御を行うローラーを搭載しているためだ(ダブルエンコーダと呼ばれる)。このため、高精度の用紙制御が必要になるフチなし印刷でも、さほど速度を犠牲にすることなく用紙が搬送できるわけである。

 モノクロテキストの印刷も「標準」モードで5秒弱と高速だ。印刷品位も非常に高く、「きれい」モードを使用する機会はまずないだろう。通常のプリントであれば、1つ下の「はやい」モードでも十分に使用に耐える。

 一方のスキャン速度は、用途によって評価が分かれるといったところだ。MP830と比べると、モノクロはより高速に、カラーではやや低速になったようだ。無論、これはコピーにおいても反映される。

 なお、今回のテストには含めていないが、MX850は高速な起動時間も特徴としている。電源ボタンを押してから約5秒でキー操作が可能になるため、起動時間の長さにストレスを感じることはない。

MP610に多彩な機能を上乗せして幅広い用途に対応

 以上、ざっとMX850の特徴を書き述べてきた。ひとくちにいえば、MP610にADFとネットワーク機能を追加した製品だが、これらがあるとなしでは利便性に格段の違いが出てくる。繰り返しになるが、ビジネス向け複合機としては欠かせぬ機能だろう。また、これらの機能を盛り込んだうえで、ボディを家庭やSOHOに置きやすい外観にまとめている点も見逃せない。

 ベースとなるMP610にしても、スタンダードな複合機ながら、昨年末にPC USERで掲載した複合機特集で高評価を得た人気モデルなので、速度や画質などの性能面に不満はなく、そのプリントエンジンを採用したMX850はフォトプリントを行う家庭向け複合機としても十分活躍できるはずだ(インタフェースなどにビジネス向けの味付けが見られるが)。

 気になるのはMX850の値段だが、これが実売価格で3万円台前半となっている。目立った弱点のない多機能かつコストパフォーマンスの高いビジネス向けインクジェット複合機であり、これはもしかするとMP830以上の人気が出るかもしれない。

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