新しい設計思想を導入して登場したRadeonの新世代ミドルレンジの性能はどの程度なのか。AMDのリファレンスカードを用いてベンチマークテストで測定してみた。
もう一度Radeon HD 4670の姿をチェックしておこう。リファレンスカードに搭載されたクーラーユニットはワンスロット厚でサイズもコンパクトだ。基板に外部電源コネクタがないので、ちょっと古い電源ユニットを使っている自作PCや、メーカー製PCをアップグレードしたいユーザーにも手軽に組み込める。基板の左上には、CrossFire用のコネクタも用意されているので、マルチGPU構成で性能を向上させることも可能だ。
ベンチマークテストで使用したシステムは、「イマイタ」GPUレビューにおける通常の構成で、CPUは、Core 2 Extreme Q6700を搭載し、nForce 680i SLI搭載マザーボードを使用。メモリ容量は2Gバイト用意した。
比較用のデータとして、同じシステム構成で測定して以前のレビューで掲載したミドルレンジGPUのベンチマークテストの結果を用意した。比較したGPUは、Radeon HD 3850、GeForce 8800 GT、GeForce 9600 GTの3モデルになる。なお、Radeon HD 4670に適用したドライバは、AMDから配布されたβ版を用いた。
まず、3DMark06のスコアから見てみよう。軽い負荷条件では、すべての解像度においてRadeon HD 3850に及ばず、GeForce 8800 GTとGeForce 9600 GTには大きく差を付けられた。ところが、Radeon HD 4670の結果は、重負荷条件のテストになっても落ち込みが非常に少なく、Radeon HD 3850を大きく超えて、GeForce 9600 GTに迫る勢いを見せている。ほかの3DMark06テスト項目でもほぼ同じ傾向を見せており、Radeon HD 4670が負荷の重い条件で強みを発揮していることが分かる。
F.E.A.Rでは傾向が異なり、軽負荷条件でRadeon HD 3850に近いスコアであるのに、負荷を重くすると差を付けられてしまう。しかしながら、スコアはRadeon HD 3850と同等といっていいだろう。軽負荷条件では1920×1200ドットの解像度で、フレームレートが30FPSを超えており、AMDの主張する「ゲームで30FPS超え」を、クリアしている。ただ、1920×1200の重負荷条件では、30FPSをわずかに下回った。
Unreal Tournamnt 3でも、Radeon HD 4670の結果はRadeon HD 3850に近い。ただし、解像度が上がるにつれて、少しずつ差が開いてしまう傾向がみられる。とはいうものの、1920×1200ドットの条件で50FPS以上を実現しているので、快適にプレイできると考えていいだろう。
Enemy Territory-QUAKE Wars DemoおよびCrysisでは、重負荷時のスコアの落ち込みの少なさに注目したい。負荷を重くしてもスコアはほとんど変わらず、重負荷時にはRadeon HD 3850を超えている。
Radeon HD 4670パフォーマンスは、1世代前のハイエンドモデルであるRADEON HD3850にほぼ匹敵する。市販ゲームタイトルを利用したベンチマークテストでもAMDが主張する高解像度でも快適にプレイできるパフォーマンス」を実現した。
ただ、処理条件を重くしたときにスコアの落ち込みがほとんど見られない結果については注意が必要かもしれない。同じアーキテクチャを持つRadeon HD 4850のレビューでも、負荷が重たい場合の落ち込みが少ないことが分かっているが、今回の測定結果はその差があまりに少ないように思える。
GeForceとの比較では、価格帯に違いがあるとはいえ、GeForce 9600 GTに対しては明らかな差をつけられている。AMDは「GeForce 9500 GT」が競合であるというが、ミドルレンジクラスとしてはGeForce 9600 GTにも十分戦えるだけのパワーがほしい。ただ、テストによってはGeForce 9600GTに迫るパフォーマンスを発揮している。
Radeon HD 4670は、登場した当初から1万円台前半で購入できる価格帯を各ベンダーで設定している。これまでのRadeonラインアップにおけるミドルレンジクラスよりも一段高いパフォーマンスを発揮してくれるので、一通りPCゲームをやってみたいが、グラフィックスカードにだけコストをかけてられないゲーマーにとって非常に魅力的なモデルになる。外部電源供給が必要ないことを考えると、メーカー製デスクトップPCなどのアップグレード用としても使いやすい。ユーザーを選ばない、ボリュームゾーンで広く支持されるGPUになるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.