ASUSのS101は、バッテリーパックにリチウムポリマーを用いており、そのセルの数は4つ、バッテリーパック全体の容量は7.2ボルト4900ミリアンペアアワーとなっている。これは、従来モデルのEee PC 901-Xの6600ミリアンペアアワーより少なく、そのため、ASUSが公称するバッテリー駆動時間もEee PC 901-Xの8時間から約5時間へと短くなってしまった。
しかし、バッテリー容量が減ってバッテリー駆動時間が短くなったとはいえ、1キロ級のS101が5時間のバッテリー駆動時間を実現しているというのは、同じCPU(Atom N270)と同じチップセット(Intel 945GSE Express+ICH7-M)を搭載しているほかのNetbookと比べると格段に長い。液晶ディスプレイが10.2型ワイドと、Netbookの中では最も大きいサイズであるにもかかわらずだ。
この、長時間バッテリー駆動を可能にしているのが、ASUSが独自に開発して、従来のEee PC 901-Xから導入している省電力機能の「Super Hybrid Engine」だ。ASUSのNotebook BU-R&D ジェネラルマネージャーであるヘンリー・ヨウ氏が、Super Hybrid Engineを始めとする、ASUSノートPCに導入された技術を紹介した。
ヨウ氏の説明によると、Super Hybrid Engineは「CPU Smart Step」と「EPU」というハードウェアの組み合わせと「Hybrid Power 4 Gear」というソフトウェアで構成される。ASUSの評価によると、電力管理機能にSuper Hubrid Engineを利用することで、35〜53%の省電力が実現するとされている。
EPUは、すでにASUS製マザーボードで省電力のために導入されているハードウェアで、Hybrid Power 4 Gearは、ノートPCを使っている局面ごとに変わってくるパフォーマンスと省電力の優先順位にあわせて、システムの省電力状態を簡単に切り替えることができるユーザーインタフェースを提供する。
Hybrid Power 4 Gearでは、クーラーファンの回転数も制御できるが、事前に用意されているプリセット設定のうち、Quiet Office Modeでは、ファンの回転数が変化することで、かえって、風切り音が気になることがないように、ファンの回転数を低い値で固定するといった、きめ細かい設定が用意されている。
ASUSでは、ユーザーの満足度を高める要素の1つとして、起動やシャットダウン、そして休止状態や、そこからの復帰にかかる時間も重要と考えている。同社が測定したデータでは、2008年に登場したノートPCと2007年に登場したノートPCの起動、シャットダウン、休止、復帰のそれぞれに要する時間を比較すると、起動時間で22%の減、シャットダウンで66%の減と、2008年のノートPCで大幅に改善されたという。
また、ASUSではPCの起動性能を向上させるために、「Express Gate」という仕組みをマーザーボードやノートPCで導入している。ITmediaでもすでにマザーボードのレビューで紹介しているが、Linuxベースで動作するメールやメディアプレーヤー、Skype、画像管理のユーティリティを用意して、限られた目的のためにPCをすぐ使いたいときに、PCをわずか8秒で起動するのがExpress Gateの特徴だ。
ASUSは、セキュリティーを要するログイン方法として、Webカメラを利用した顔認識を導入している。顔認識の欠点として、髪型など容姿が変わったときに認識が挙げられるが、「Smart Login」と名づけられた顔認識ログインでは、初回利用時に、ユーザーの顔を30枚キャプチャーし、その後も、利用するたびに15枚のキャプチャーを行って画像を蓄積していく。
ユーザーがPCにアクセスするためにSmart Loginのインタフェースを開くとシステムは10枚の“顔写真”をキャプチャーするので、容姿が変化してもログインは成功すると説明している。仮にSmart Loginでログインに失敗しても、パスワードを使って再ログインが可能で、そのときも顔の画像をキャプチャーするので、少しずつ“経年変化”していく容姿に対応できる。Smart Loginでは、最大で480枚の画像データを蓄積できるが、処理負荷を抑えるために、認識処理にはその中の新しい2%の画像を使うとASUSは説明している(とはいえ、画像処理が伴なうため、実用的なのはハイエンドクラスのノートPCになるとのこと)。
ノートPCで重要になる電力管理では、特に液晶ディスプレイのバックライトについて説明がなされた。液晶ディスプレイのバックライトとして採用が進むLEDだが、薄型化と軽量化に貢献するほか、省電力効果も高い。「バッテリー駆動時間を30分伸ばしてくれる」というLEDの消費電力をASUSが測定した結果では、輝度を60ミル(カンデラ平方メートルにほぼ等しい)と最高輝度のそれぞれで、蛍光管利用とLED利用のシステムを比較すると最高輝度で34%、60ミル時で70%の省電力が実現している。
また、立ち上がりの速さもLEDの特徴で、従来の蛍光管液晶ディスプレイが、輝度60ミルまで明るくなるのに起動から15分ほどかかるのに対して、LEDは1秒以下で明るくなるデータがASUSから紹介された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.