日本の関係者に向けてエムエスアイコンピュータージャパン(MSI)が10月16日に行った「企業活動報告会」では、MSI台湾本社のアシスタント上級副社長を務めるヴィンセント・ライ氏が、このところ急速に悪化している世界の経済情勢に触れ、不安定な為替の乱高下によって、輸出に依存している国では少なからず影響が出始めており、製造業で生産コストが上昇している現状を伝えた。
加えて、2008年に行われた五輪では、ユーザーの購入資金はPCではなく大型テレビなどにシフトしてしまっただけでなく、最近の経済状況において個人資産が減少したために消費者の購買力も世界中で低下し、その影響で購買行動に変化が現れていると、PC市場の厳しい現状を報告した。
しかし、ヴィンセント氏は、そういう逆境において、低価格のNetbook市場は米国を中心に堅調で、NetbookにおけるMSIのシェアは3位であり、第3四半期には1位になるという強気の見通しを示した。その理由として、ヴィンセント氏は「画面が見やすくて使い勝手のいいキーボードを搭載できる10型クラスの液晶ディスプレイを搭載したNetbookはASUSにもACERにもない」と説明している(ASUSが先日発表したS101は10.2型ワイドの液晶ディスプレイを搭載しているが出荷はまだ先)。
ヴィンセント氏は、景気の悪化に伴なう消費行動の変化について車業界を例に挙げ、「一般のユーザーは、所得の減少によって車の所有をあきらめたり、コストのかからない小型車にシフトするが、富裕層はこれまでと同じように高級車を購入する」と説明した上で、PC市場も2極化が進むと予測。今後は手頃な価格で購入できるPCが主流となるが、2台目3台目として購入してもらうにはトータルソリューションを考慮した製品企画が必要という考えを示している。そして、MSIがWind Netbookシリーズを展開するNetbook市場は、今後もボリュームが期待できるため、積極的に展開していくと語った。
MSIは、IDF上海2008やCOMPUTEX TAIPEI 2008においてすでにNetbook、Nettop、そして、マザーボードを展示していたが、ヴィンセント氏はAtom搭載PCのラインアップのアイデアとして、18.4型ディスプレイを搭載した一体型PCについて言及し、160GバイトのHDD、1Gバイトのメモリ、1.6GHz動作のAtomの構成で価格399ドルというラフアイデアを紹介している。
ヴィンセント氏は、MSIの主要な事業であるPCパーツ部門の見通しについても言及している。2008年にはインテルやAMDなどからCPU、チップセット、GPUといった新製品が登場しており、MSIにとってPCパーツ事業のウエイトは依然として大きいと述べたが、その一方で、インテルがSoCを進める流れの中で、2010年、もしくは2011年には、現在マザーボードに実装されている機能がワンチップに統合されてしまうかもしれないという考えを示した。
ヴィンセント氏は、PCはワンチップとなってマザーボードという概念がなくなってしまうかもしれない将来において、MSIはシステムプロバイダとして生き残っていかなければならないと語っている。
さらに、ヴィンセント氏は「MSIが生き残るための方策」としてブランドイメージの重要性にも触れ、ブランドイメージを高めるために台湾本国では研究開発のプライオリティを高めて、医療機器や携帯型心拍計、そして、ロボット開発などをRDセンターを中心に進めていると述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.