というわけで冒頭の問いの答えだが、ドラフト2.0準拠製品のユーザーが今、購入すべきアクセスポイント/ルータは、Wi-Fi Allianceのドラフトn認証ロゴのついた製品、ということになる。ノートPCの場合、WindowsやCentrinoのロゴのように、本体にステッカーがはってあることはあまりないが、多くの場合内蔵する無線LANモジュールは、業界団体であるWi-Fi Allianceの認証を受けている。認証ロゴのついた製品同士の接続性は、Wi-Fi Allianceが検証済みだ。ただし、Wi-Fi Allianceの認証ロゴがある機器同士でも、データ転送レートが保証されるわけではない。製品のパッケージなどに書かれている数字はあくまでも理論値であって、実効値とは異なる。
難しいのはドラフト1.0に準拠した製品を持っているユーザーだ。古いドラフト1.0に対応したアクセスポイント/ルータを探すべきなのか、それともドラフト2.0に準拠したドラフトn認証ロゴのついた製品にすべきなのだろうか。
ドラフト1.0に準拠した古い製品は、Wi-Fi Allianceによる認証の対象ではない。したがって、ロゴによる接続性の保証といった恩恵は受けられない。かといって、ドラフト1.0の機器同士であるからといって接続性が保証されるわけではない。もちろん、ほとんどの場合は問題なく接続できるはずだが、細かな相違により、データ転送レートに差が生じる可能性はある。しかし、無線のデータレートは、規格上(サポートする高速化オプション)の違いだけでなく、環境も含めさまざまな要素に影響を受ける。一概にドラフト1.0機器同士のほうが高速になるともいえないし、逆もまた然りだ。
この場合、やはり無難なのは新しいWi-Fi Allianceのドラフトnロゴ認証を受けたアクセスポイント/ルータだという。新しい機器のほうがチップの世代が新しく、基本的な性能が向上している。将来、無線LANクライアントを買い替えたり、買い増したりした際も、新しいアクセスポイント/ルータの方が有利であるからだ。世代間の互換性に不安があるのであれば、同じベンダーのクライアントとアクセスポイント/ルータであれば、かなり安心なのだが、ノートPC内蔵の場合、それを実現できるのはNEC(ノートPCとアクセスポイント/ルータの両方を製品に持つ)など、ごく限られたベンダーに限られる。現実的にはロゴを信じて購入することになるだろう。
主な無線LANチップ | ||||
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ベンダー | 型番 | 周波数帯 | MIMO構成 | 最大データレート(送信/受信) |
Atheros | AR5008E-3NX | 2.4GHz/5GHz | 3×3 | 300Mbps/300Mbps |
AR5008E-3NG | 2.4GHz | 3×3 | 300Mbps/300Mbps | |
AR9280 | 2.4GHz/5GHz | 2×2 | 300Mbps/300Mbps | |
AR9281 | 2.4GHz | 1×2 | 150Mbps/300Mbps | |
Broadcom | BCM4321/2055 | 2.4GHz/5GHz | 2×2 | 270Mbps/270Mbps |
Intel | 4965AGN | 2.4GHz/5GHz | 2×3 | 200Mbps/300Mbps |
WiFi Link 5100 | 2.4GHz/5GHz | 1×2 | 150Mbps/300Mbps | |
WiFi Link 5300 | 2.4GHz/5GHz | 3×3 | 450Mbps/450Mbps | |
こうした規格策定中の、ドラフトをベースにした製品でよく聞かれるのは、このドラフトベースの製品は、最終規格が出たときにアップグレードできますか、という点だ。筆者は802.11nについて、アップグレードを望むのは期待薄だと思っている。ドラフト1.0からドラフト2.0になった際、多くの無線LANチップベンダーは、既存の製品で2.0に対応したが、すでに消費者に販売された製品を2.0対応にすることはなかった。
ファームウェアアップデートなどで技術的には可能であっても、消費者の手元にある無線機の仕様を変えることは法規上認められない。もし、これを行うのであれば、ファームウェアアップデートを行ったノートPCをもう1度技術適合審査に出す必要があるが、そんなことをしてもコスト的に割に合わない。まだ決まってもいない最終規格に準拠した製品と、ドラフト2.0準拠製品の相互接続性など誰も保証してくれるわけはないが、ドラフト2.0の完成度から考えて、接続できなくなることはないだろう、ということのようだ。ここでも同じメーカー製であれば相互接続性についてはできる限りのことをしてくれるはずだが、これも容易ではない。ロゴに込められたWi-Fi Allianceの努力を信じるしかなさそうだ。
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