5万円程度で購入できるNetbookが国内ノートPC市場でシェアを大幅に伸ばしているが、いまだボリュームゾーンは10万円台前半で販売されているA4クラスのノートPCだ。例えば、2009年春モデルとして登場した国内主要メーカー4社(東芝、ソニー、富士通、NEC)のエントリーモデルは、いわゆる“低価格ミニPC”を除くと、実売価格は平均してだいたい13万円前後になる。Netbookなら2台、モノによっては3台買えてしまう計算だ。
もっとも、これを高いと見るか安いと見るかは人それぞれだろう。性能や液晶ディスプレイの解像度、キーボードの使い勝手などで制約が多いNetbookに比べ、エントリーノートPCのほうが総合的に優れた部分が多く、携帯電話以外のネット端末を常に持ち歩きたいというヘビーPCユーザーでもなければ、Netbookはなかなか勧めづらいものがある。セカンドマシンとして利用するのであれば問題はないが、1台ですべてのニーズを満たすのはやはり厳しいのだ。特にこれから始まる新生活に向けて自分用のPCを1台購入したいと考えている人は、ただ価格だけを見てNetbookに飛びつくよりは、安いノートPCを選んだほうがいい場合もある。
さて、前置きが長くなったが、そんな“新生活者”に見逃せないノートPCと言えば、1月22日にアップデートしたアップルの「13インチMacBook White」だ。MacBookのラインアップは、2008年の10月にアルミユニボディを採用した新型へとモデルチェンジをしているが、最下位モデルのみ従来と同じ仕様で価格だけを下げていた(12万9800円→11万4800円)。ところが、特に告知もなくひっそりとアップデートした今回のMacBook最下位モデルは、白いポリカーボネート筐体を流用しつつ、中身を上/中位モデルと同じNVIDIAプラットフォームに移行している。
| MacBook Whiteと主要メーカー春モデルのエントリー機を比較 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 製品名 | FMV-BIBLO NF/C40 | dynabook EX/33H | VAIO type N VGN-NS51B | LaVie L LL370/SG | MacBook White |
| メーカー | 富士通 | 東芝 | ソニー | NEC | アップル |
| CPU | Celeron Dual-Core T1600(1.66GHz) | Celeron 575(2GHz) | Core 2 Duo P8600(2.4GHz) | Athlon X2 QL-62(2GHz) | Core 2 Duo(2GHz) |
| グラフィックス | Intel GL40(GMA 4500M) | Intel GL40(GMA 4500M) | Intel GM45(GMA X4500HD) | AMD M780G(Radeon HD 3200) | NVIDIA GeForce 9400M |
| メモリ | 2048MB | 2048MB | 2048MB | 2048MB | 2048MB |
| HDD | 320GB | 250GB | 320GB | 250GB | 120GB |
| 光学ドライブ | 2層対応DVDスーパーマルチ | 2層対応DVDスーパーマルチ | 2層対応DVDスーパーマルチ | 2層対応DVDスーパーマルチ | SuperDrive |
| 液晶ディスプレイ | 15.6型(1366×768) | 15.4型(1280×800) | 15.4型(1280×800) | 15.4型(1280×800) | 13.3型(1280×800) |
| 重量 | 約2.8キロ | 約2.5キロ | 約2.9キロ | 約3キロ | 約2.27キロ |
| 実売価格 | 12万円前後 | 11万円前後 | 13万円前後 | 14万円前後 | 11万4800円 |
アルミユニボディのMacBook上位シリーズがNVIDIAのグラフィックス機能統合型チップセット「GeForce 9400M」を採用することで、「従来に比べて最大6.2倍高速」な3D描画性能をうたっていただけに、価格を11万4800円に据え置いたままのモデルチェンジは、かなり衝撃的といえる。昨年10月に「USで999ドルの最下位モデルが日本だと11万4800円って“1アップルドル”はいったいいくらなんだよ」などとつぶやきつつ、それでも「旧MacBook White」を購入してしまった国内ユーザーの悲鳴が聞こえてくるようだ。今回はこの新しいMacBook Whiteで簡単なベンチマークテストを実施した。


いまや懐かしいポリカーボネート筐体を引き継いでいる。ここしばらくは「Mac=白」のイメージで製品を作っていたサードパーティも多いので、人によってはこちらのデザインのほうが周辺機器との調和が取れるかもしれない(写真=左)。従来と同じく1280×800ドット表示に対応した13.3型ワイド液晶を搭載する。上位モデルとは異なり、LEDバックライトではない(写真=中央)。上位モデルとの違いで目を引くのがFireWireポートが引き続き搭載されている点だ。アルミMacBookのFireWire廃止は、高価なMacBook Proを買えないMacユーザーの信仰心を試す試練となったが、これで安心だ(写真=右)比較対象として取り上げたのは、アルミユニボディを採用した新型MacBookの上位モデル「MB467J/A」と、ポリカーボネートの初代MacBookだ。内部システムは前者に近く、見た目は後者の新しいMacBook Whiteは、どの程度のパフォーマンスを発揮できるのか。まずはCPU性能の違いを見るために、iTunesでファイル変換に要した時間を計測した。
結果は、QuickTimeファイル(再生時間1分)の「iPod/iPhone用」変換で89.2秒、Appleロスレスファイル(再生時間10分)のAAC変換では21.9秒を要した。2.4GHzのCore 2 Duoを搭載する上位モデルに比べるとやや見劣りはするものの、同クロックの旧世代CPUに比べればその差は歴然だ。また、MacBook Whiteは14万4800円の中位モデルと同じCPU(Core 2 Duo 2GHz)を採用しており、コストパフォーマンスは申し分ない。
一方、グラフィックス性能では、同じGeForce 9400Mを採用する上位モデルと比較してやや開きが見られた。定番ベンチマークソフト「CINEBENCH」のOpenGLのスコアは、上位モデルの4351に対して、MacBook Whiteは3810となっている。これはメインメモリとグラフィックスメモリがDDR2(White)とDDR3(上位)という違いも影響しているだろう。MacBookにWindowsをインストールしてゲームを楽しむという用途なら、アルミユニボディを採用した中/上位モデルのほうが適正は高そうだ(アルミMacBookのWindows上でのベンチマーク結果はこちら)。もっとも、初代MacBookに比べると約4.4倍の性能を発揮しており、こちらも不満はまったくない。
以上、MacBook Whiteモデルを簡単に見てきた。もちろん、本機はアルミMacBookの売り文句である「すべてが新しい、13インチMacBook」には該当しない――つまりマルチタッチトラックパッドではないし、LEDバックライトディスプレイでもないし、何よりアルミ削りだしのボディではない。しかし、それでもこの性能で11万4800円というのは、“お買い得”を通り越して安すぎる印象さえ受ける。同価格帯のWindows機と比べてもコストパフォーマンスは高く、初期状態でたいていのニーズはこなせるため、新生活向けマシンとしてもうってつけだ。「白い新型」という単語に過剰に反応する、FireWireポートの行く末を思うと夜も眠れないという人たちはもちろん、それ以外の人にとっても魅力的なモデルであることは間違いない。
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