“Windowsの恩恵”を受ける超小型マシン――工人舎「PM」シリーズに迫る345グラムで7時間駆動(2/3 ページ)

» 2009年10月07日 15時30分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

キーボードは「NetWalker」以上だが……

 このサイズのガジェットの例に漏れず、キーボードはかなり変則的だ。本来タブキーがあるところにQがあり、タブキーはAのとなりに移動している。また、Ctrl、Altが1キーずつしかないだけでなく、Shiftキーまで左側のみの1キーだ。両手親指打ちを基本と考えた場合、これら修飾キーを左親指で押下し、それと同時に一般キーを右親指で打つことになる。当然ながら左よりの一般キーとの併用はちょっと窮屈な操作になる。

日本語56キーボードを採用。配列はかなり変則的(写真=左)。想定される使い方はやはり両手持ちの親指入力スタイルだろう(写真=右)

 さらに凸型のカーソルキー配置を堅持した結果、4段目は「,」「↑」「.」という、機能キーの外側に一般キーがあるという事態になっている。ベースとなっているmbook M1の韓国語キーボードと見比べると、スペースバーの右隣に「半/全・漢字・カナ/かな・ローマ字」キーを配置したために対で配置される「<」「>」をとなり同士に置く場所がなくなったことによる苦肉の策だろう。mbook m1からキートップの印刷、マッピングは変更されたものの、キーそのものには変更がないことを物語っている。

 Fnキーとの併用が多用されることは避けられないこととはいえ、「\」「:」「/」などはURLの入力時やコマンドプロンプトなどで多用する。単独キーでの入力が可能であってほしかったというのが正直なところだ。

ポインティングデバイスはタッチパネル、だけ

スタイラスは本体左下部に収納できる

 PMのポインティングデバイスはタッチパネルのみだ。スタイラスは筐体左下に収納できるが、スタイラスのモールドに爪を引っかけないと取り出しづらい。また、個体によるものかもしれないが、取り出し中にスタイラスの伸縮する部分がひっかかることも多々あり、素早く取り出すのは難しかった。ただ、ゼロスピンドルモデルであるため、Windowsを起動しながら筐体を裏返してスタイラスを取り出すなど、取り回しでカバーできる点もある。

 タッチパネルは直感的な操作はしやすいものの、クリックボタンがないためやや特殊な操作を必要とする。タップで左クリック、しばらくスタイラスを押しつけたままにすることで右クリックになる。右クリックはコンテキストメニュー、つまり状況に応じたクイックメニューとして使われることが多いため、特定のキーとの併用などで素早く対応できるとよかった。

 1つ気になったのはタッチパネルの有効範囲だ。縦方向を有効に使うためにタスクバーを自動的に隠す設定にしていた場合、タスクバーを表示するためにはディスプレイの最下部にカーソルを動かす必要がある。しかし、最下部にスタイラスを当ててもカーソルはわずかに上にずれてしまっており、タスクバーを表示させることができなかった。タッチパネルのキャリブレーションで調整可能だが、その際も下段での設定で指示されたターゲットよりも心持ち上に当てる必要があった。マウスやトラックボールでは画面端に移動させることはもっとも容易な操作だが、タッチパネルの場合は調整次第では不可能な操作になる。

オフィススイートは「EIOffice」

 Microsoft Office互換製品としてはオープンソースのOpenOffice.orgがよく知られているが、PMには有償製品であるEIOfficeがプリインストールされている。EIOfficeはEvermore Integrated Officeの略で、中国の永中科技有限公司が開発したオフィススイートだ。Integrated(統合化された)の名前どおり、ワード/表計算/プレゼンテーションソフトの機能が統合化されたアプリケーションとなっており、1つのソフトでWord、Excel、PowerPointのすべてに互換性があるというユニークな製品だ。

 EIOfficeでは3つの種類のファイルを複数まとめてバインダーという独自形式で保存することができる。同様の機能は以前はMicrosoft OfficeにもOfficeバインダーとして搭載されていたが、Office XPで廃止されたという経緯がある。ビジネスにおいては1度のミーティングに必要なファイルのフォーマットが複数に渡ることもめずらしくない。例えばアジェンダやプレゼン資料をPowerPointで作成し、見積書をExcelで、議事録をWordで後日追加、というケースはよくある。また、ほとんどの部分をWordで作成し、別紙資料としてExcelブックを添付するという場合もあるだろう。そのようなとき、個別ファイルではなく1ファイルで管理できれば効率がよい。MicrosoftがなぜOfficeバインダーを廃止してしまったのかは定かではないが、重宝していた人にとってはEIOfficeはその代替案となりうるかもしれない。

 もっとも、EIOfficeの独自形式である以上、バインダー形式はMicrosoft Officeとの互換性はない。互換性を保つには個々のファイルをそれぞれのMicrosoft Office互換形式で保存する必要がある。

Word文書の比較。再現性は高い

PowerPoint文書の比較。フォントが折り返されており、その部分での崩れが発生している

Excel文書。グラフの色数に制限があるのか、色はまったく再現できなかった

 EIOfficeは高い再現性がうたわれている製品だが、もちろん100パーセントではない。低価格化を狙うのであればOpenOffice.orgもあるだろうし、有料でも高い互換性を、というのであればNetbook向けのMicrosoft Office 2年ライセンスもある。また、EIOfficeはJAVAベースであり、マルチプラットフォーム対応というメリットはあるものの、Windows XPを搭載しているPMではあえて選択する理由はなんだったのだろうか、という疑問を感じた。

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