Acerは11月26日、同社の事業戦略に関する報道関係者向けの説明会を開催した。同説明会では、今回初めて来日したAcerのCEOであるジャンフランコ・ランチ(Gianfranco Lanci)氏が登壇し、今後の事業方針を語るとともに、新たに参入したスマートフォン市場への取り組みなどについて語った。
同氏はまず、2008年の後半から始まった世界的な景気後退について触れ、2009年の業績を振り返りながら3Q以降は回復の兆候が見られるとし、「最悪の時期は去った。2010年は10〜15%の成長が2012年まで続くだろう」と展望を語った。事実、同社の財務状況を見ると、2009年3Qの収益は50億米ドルまで回復し、世界不況の影響が顕在化する前の前年同期とほぼ同じ水準まで持ち直している。ランチ氏はここで改めて「危機は去った」と強調し、2010年は15%の成長率で収益を190億米ドル、2012年には300億米ドルを達成すると抱負を述べた。


2009年にAcerは800万台のデスクトップPCと、2500万台のノートPCを出荷した。ディスプレイやプロジェクターの出荷も伸びている(写真=左)。2009年3Q以降は新興国市場がけん引して成長がプラスに転じると予測している(写真=中央)。2012年に向けたグループ目標。300億米ドル規模のビジネスに成長する(写真=右)市場シェアを見てもAcerグループの拡大はめざましい。PCの総出荷台数は2009年3Qでついにデルを抜き2位に浮上。ノートPC市場だけで見ると、Netbookのけん引もあってシェアは21%を超えており、首位のHPにわずか1%弱まで迫っている。同社は引き続きモバイルPCを中心とする製品ラインアップを軸に、Acer、eMachine、Gateway(欧州ではPackard Bell)のマルチブランド戦略を推し進め、顧客の幅広いニーズに対応していく。
なお、地域別の市場シェアでは、EMEA(欧州・中東・アフリカ)でHPを抜き24%まで数字を伸ばしているのが目を引く。一方、米国では3位と変わらないもののシェア自体は14.2%へ伸び、特にノートPCの好調が影響しているのが分かる。アジア市場はPC全体で4位(7.8%)、ノートPCでも3位(12.8%)と苦戦しているが、「収益の点から見ればEMEAが柱となる一方で、成長率でみればアジアに可能性がある」と述べるなど、成長地域へ積極的に投資を行っていく姿勢を見せた。
日本国内市場の状況については、日本エイサー代表取締役社長のボブ・セン氏が質疑応答を受け、現在の6〜7位の位置にあることを明らかにしたほか、「2012年までに国内PC市場でトップ5に入る」という従来の目標を改めて繰り返した。ただし、Acerグループ全体から見た日本市場への期待値は高いようで、言葉を引き継いだランチ氏は「日本はローカルプレイヤーが強い特殊な市場なので3年後の予想は立てにくいが、ノートPC市場ではトップ5ではなくトップ3になっていると思う。そういう計画を立てるべきだし、達成できると思っている」と期待を語った。
スマートフォン市場への参入については、インターネット端末としてPCと携帯電話が融合しつつある現状を挙げ、モバイル市場でスマートフォンが重要な位置を占めると説明。会場にAndroid 1.6を搭載したスマートフォン「Liquid」などを展示し、新しい分野での施策もアピールしていた。なお、質疑応答で国内投入時期(すでに台湾、香港、マレーシア、タイでは販売されている)の質問が出ると、日本市場でスマートフォンを展開するためにはキャリアとの関係構築が前提となるため現状で投入時期は未定という回答にとどまった。
このほか、Chrome OSを採用したPCの投入予定などについての質問も挙がったが、(Chrome OSの)リリースが2010年の2Qくらいに早まるのではないかと予想したうえで、「現在、テストをしている段階だが(搭載製品を出すかどうか)コメントするのはまだ時期尚早だ。現段階では何も言えない」と語った。
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