NVIDIA Optimus Technology(以下、Optimus)は、ノートPCに搭載されたGeForce MシリーズのディスクリートGPUとインテルプラットフォームに実装された統合型グラフィックスコアの切り替えを「自動で」行う技術だ。Optimusに対応するディスクリートGPUは、ノートPC向けGPUで40ナノメートルプロセスルールを導入した世代のGeForce 200MシリーズとGeForce 300Mシリーズのほか、これから登場する次世代GPUと次世代 IONも対応する。また、インテルのノートPCプラットフォームでは、最新の“Arrandale”世代のCPU以外に、Pine view-M、モバイル向けIntel 4シリーズチップセットにそれぞれ統合されたグラフィックスコアをカバーする。
NVIDIAでは、以前からディスクリートGPUと統合型グラフィックスコア(以下、IGP)の切り替え技術「Switchable Graphics 」に取り組んできた。初期に登場した技術では、ハードウェアスイッチを切り替え、PCを再起動することでディスクリートGPUとIGPの切り替えを実現していたが、その後、再起動なしで切り替えられる第2世代の技術も確立している。それでも、ユーザーからは、「GPUの切り替えを忘れてしまう」「スイッチの切り替えが面倒」「切り替え時に画面が暗くなって故障したかと思う」という不満が寄せられ、この解決のために、有効になるグラフィックスコアを自動で切り替えるOptimusを開発したという。
NVIDIAのグラフィックスコア切り替え技術としては第3世代になるOptimusでは、ディスプレイドライバの上流にある「Optimus Router」でアクティブになっているアプリケーションをプロファイル情報からチェックして、ディスクリートGPUを有効にするのかIGPを有効にするのかを判断する。ディスクリートGPUを有効にした場合は、NVIDIAのディスプレイドライバに処理が進むが、IGPを有効にした場合は、インテルのグラフィックスドライバに制御が移る。なお、ディスクリートGPUを有効にするアプリケーションがインアクティブに移行すると、Optimusは自動的にIGP側を有効にする。また、アプリケーションが利用するGPUをユーザーが指定することも可能だ。この場合は、アプリケーションを起動するときにアイコンをサブクリックして表示されるコンテキストメニューから、有効にするGPUを選択して起動する。
このように、Optimusではプロファイルに登録されたアプリケーションごとに有効にするグラフィックスコアを設定する。これは、NVIDIA SLIにおいてアプリケーションごとに最適な設定を指定したプロファイルに近い。このプロファイルの作成では、NVIDIAに設けられたラボで、膨大な数のアプリケーションに対して継続的に検証が行われ、その結果を逐次オンラインで反映していく。
OptimusではディスクリートGPUが有効になった場合でも、描画が終わったデータはIGPのディスイプレイコントローラを介してディスプレイに出力される。そのため、システムが利用できるディスプレイ出力インタフェースは、ディスクリートGPUがサポートするものではなく、IGPが対応する仕様に限られる。
また、NVIDIAのGPUを制御するディスプレイドライバとインテルのIGPを制御するディスプレイドライバが1つのOSに共存するにはWindows 7でサポートされたデュアルディスプレイ機能を利用する。そのため、Optimusを利用できるOSはWindows 7に限定される。
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