「VAIO P」2010年夏モデル徹底検証(前編)――新世代ポケットスタイルPCの実力は?一般向けの先行予約販売を開始(4/5 ページ)

» 2010年05月17日 11時30分 公開

液晶ディスプレイは視認性に配慮

1600×768ドット表示の8型ワイド液晶を装備

 液晶ディスプレイのサイズと解像度は従来モデルと同じだ。画面サイズは8型ワイド(アスペクト比は16:7.68と非常に横長で、ソニーは「ウルトラワイド」と呼ぶ)、解像度は1600×768ドットとなっており、一覧できる情報量がNetbookなどに比べて多い半面、ドットピッチが非常に狭い。つまり、表示が細かいわけだが、実際に使ってみると従来モデルに比べて文字が見やすいサイズに調整されているのが分かる。

 これは出荷状態のフォントサイズ(dpi)設定をWindows 7標準の96dpi(小−100%)から大きめの120dpi(中−125%)に変更しているからだ。同様の工夫は「VAIO Z」にも見られるが、dpi設定を変更していることで、ソフトによってメニューバーが2行になったり、表示されない項目が出てくるなど問題があるので注意したい。本来の高解像度を最大限に生かしたい場合、非常に細かい表示に耐えられるならば、フォントサイズを「小−100%」に切り替えてみるのもいいだろう。

 また前述の通り、キーボードの下に解像度切り替えボタンを新設し、これを押すことで1280×600ドット表示にワンタッチで変更できるようになった。表示の細かさは従来モデルの問題点として指摘されることも多かったが、新型VAIO Pではdpi設定と解像度切り替えボタンの2点で対処している。これらは抜本的な解決策とはいいがたいが、視力や利用シーンなどに応じて情報量と視認性のバランスが手軽に選べるようになったのは前進といえるだろう。

出荷状態の120dpi表示でWebブラウザを表示した様子
この状態で解像度切り替えボタンを押すと、表示はさらに大きくなる

96dpi表示に切り替えると表示領域は大幅に広がるが、表示は細かくなる
96dpi表示で解像度切り替えボタンを押した状態。情報量は120dpi表示に近くなる

解像度切り替えボタンを押すと、1280×600ドット表示に切り替わる。動画はAtom Z550+128GバイトSSD搭載機で撮影。スペックが低い標準仕様モデルでは、切り替わりにもう少し時間がかかる

 画面とフレーム部が継ぎ目なくフラットにつながったフラッシュサーフェスデザインは見た目に美しく、デザインの一体感を出すのに貢献している。光沢仕上げの表面には低反射処理が施されており、黒っぽい表示では照明の反射が少し気になるが、鏡のように自分の姿が映り込むことはないため、光沢画面にしては視認性がよいほうだ。

 視野角は上方向がやや狭いものの、ヒンジの角度は140度程度まで開くため、ヒザの上など少し低い位置で使っても視認性は十分確保できるだろう。従来モデルに比べて色味が少し変わっているが、視認性は同レベルといえる。

 なお、液晶ディスプレイのヒンジは従来同様、チルト角度によってヒンジの固さが異なる可変トルクヒンジを採用しているが、新型VAIO Pでは片手でも液晶ディスプレイを開けやすいように、ヒンジのトルクが少し軽くなっている。

左が新モデル、右が従来モデルの液晶ディスプレイ表示。画面サイズ、解像度に変更はないが、色味が少し違う

左が新モデル、右が従来モデルの液晶ディスプレイを開いた状態。新モデルのほうが、ボトム側が約1ミリ薄く、液晶ディスプレイ側が約1ミリ厚い。新モデルの厚さはボトム側が約13.4ミリ、液晶ディスプレイ側が約6.4ミリだった(突起部を除く実測値)

直販モデルではZ560+US15Xが選択可能に

 基本スペックの底上げにも注目したい。標準仕様モデルの基本スペックは、CPUにAtom Z530(1.6GHz)、チップセットにグラフィックス機能のIntel GMA 500を統合したIntel SCH(System Controller Hub) US15W、メインメモリに2GバイトのDDR2-533 SDRAM(オンボード/増設不可)、データストレージに64GバイトのSSD(Ultra ATA)を採用する。プリインストールOSは32ビット版のWindows 7 Home Premiumだ。

 VAIOオーナーメードモデルでは、CPUをAtom Z530(1.6GHz)/Z550(2.0GHz)/Z560(2.13GHz)の3種類から選択できるが、新しく追加されたZ560を選んだときのみ、組み合わされるチップセットがIntel SCH US15Xになる(選択時の製品着荷は7月上旬以降を予定)。US15Xではグラフィックスコアが200MHzから266MHzに高速化されるため、CPUの高クロック化も合わせて、従来モデルよりワンランク上のパフォーマンスが期待できる。

 CPUとチップセットの発熱はマグネシウム合金製フレームを伝って拡散されるが、大型化した銅製のヒートパイプを内部フレームに埋め込んで放熱効率を大きく高めたことにより、高クロックのCPUとチップセットに対応しつつ、従来モデルで存在した側面の通気口もふさいでいる。Z560とUS15Xの組み合わせではTDPが上がるが、スロットリングが早く発生して下位スペックとのパフォーマンスの逆転が生じないような工夫もしたという。

 さらにVAIOオーナーメードモデルでは、データストレージに128Gバイト/256GバイトのSerial ATA SSD(Ultra ATA変換によりチップセットと接続)、OSに32ビット版のWindows 7 Professionalも選択可能だ。

 ここでの見どころはデータストレージで、従来モデルからHDDを排除し、SSDのみを採用している。SSDの構成は「VAIO X」と同様、64Gバイトのみ小型カードのUltra ATAタイプ、128Gバイト/256Gバイトは薄型(幅54×奥行き71×高さ2.4ミリ)のSerial ATAタイプとなる。

64GバイトSSD搭載機のデバイスマネージャ画面。SSDは「SanDisk pSSD-P2」だった
128GバイトSSD搭載機のデバイスマネージャ画面。SSDは「TOSHIBA THNSNB128GMLJ」だった
256GバイトSSD搭載機のデバイスマネージャ画面。SSDは「TOSHIBA THNSNB256GMLJ」だった

CrystalDiskMark 2.2(ひよひよ氏作)のテスト結果。64GバイトSSDに比べて、128Gバイト/256GバイトSSDはかなり高速だ。これくらいのCPUクロックの差はテスト結果にさほど影響しないため、SSD自体のパフォーマンスに大差があることが分かる。詳しいベンチマークテストの結果は後編で紹介する

 チップセットのIntel SCH US15W/US15XはSerial ATAをサポートせず、Ultra ATA/100のIDEインタフェースしかないため、64GバイトSSDの場合のみダイレクトに接続し、128G/256GバイトSSDではSerial ATA/Ultra ATA変換アダプタの小型基板を経由して接続する仕組みだ。

 Ultra ATAへの変換がボトルネックとなり、128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDは本来のパフォーマンスを発揮できないが、それでも64GバイトUltra ATA SSDに比べてかなり高速だ。また、ブリッジチップを転送速度が速く、消費電力が低いタイプに変更したことで、従来モデルよりパフォーマンスを向上したという。

 なお、分解記事でも紹介したように、SSDへのアクセスは非常に面倒なことに加えて、小型化と軽量化のため、基板むき出しの薄型SSDモジュールを採用しており、端子も標準的なものではないので、ユーザーによるSSDの換装はハードルが高いだろう。

Sony Style(ソニースタイル)

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