苦戦するAndroidタブレット:iPadを超える勢いじゃなかったの?

» 2010年11月24日 15時38分 公開
[登丸しのぶ/Shinobu T. Taylor,ITmedia]

Androidタブレットはどこにいる?

 Androidを採用したタブレット(いまではスレートと呼ぶことが多くなってきた)デバイスの新製品が2010年の後半になって“大量に”登場している。「iPad販売、量販店では失速」という話がでてくるなど、メディアで紹介される記事では、Android採用タブレットデバイスが、iPadを駆逐する勢いで店頭に並んでいるようにも感じる。

 しかし、製品の流通が先行している米国の量販店を訪れてみると、どうも状況が違う。筆者が滞在するシアトルにあるBest BuyのPCコーナーには、Android搭載製品がどうのこうのという以前に、タブレットデバイスらしきものがまったく見当たらない。AppleのコーナーでiPadのデモを行っているだけだ。売り場のスタッフにタブレットデバイスの取り扱いはないのかと質問すると、「MP3プレーヤー売り場にAnchosの製品が1台と、モバイル(携帯電話)の売り場に数種類置いてあるだけ」という。

 MP3プレーヤー売り場にあったAnchosのタブレットデバイス「Archos 7 Home Android Tablet」(型番:501521)は、7型ワイド(解像度800×480ドット)のタッチパネルを搭載した重さ約850グラムのAndroid 1.5採用のタブレットデバイスだ。データストレージには8Gバイトフラッシュメモリを搭載する。2010年8月から出荷されている製品で現在の実売価格は199ドル99セントと、この種類の製品では最も安い。ただし、通信は無線LANのみで3Gのデータ通信は利用できない。

 Archosはポータブルプレーヤーとしての機能を訴求しているので、BestBuyでは“MP3プレーヤー”の扱いで販売しているようだ。ただ、メールやWebブラウジングといった基本的なインターネットサービスを利用する機能は備えているので。無線LANでインターネットにアクセスできる環境を用意できるユーザーには、コストパフォーマンスが高いといえる。

Anchosのタブレットデバイスは、Best BuyのMP3プレーヤー売り場で販売されていた。Anchosはこの製品を「ポータブルプレーヤー」として訴求しているが、メールやWebブラウザなど、インターネットサービスを利用する機能も用意している

Androidタブレットデバイスの敵はAndroid携帯

 モバイル(携帯電話)の売り場では、広いスペースをAndroidを採用したスマートフォンのために割り当てていた。製品のラインアップも数が多く、多数のメーカーが製品を並べている。BestBuyとしても、Android導入スマートフォンにはかなり注力しているようだ。同社はテレビCMでもAndroid導入デバイスを2010年の年末商戦で主力商材と位置づけているが、そのCMでも主役はあくまでスマートフォンだ。

 同じAndroidを導入しているのに、タブレットデバイスの売り場は、フロアの隅にわずかなスペースを割いて設けられていた。しかも、デモ機が展示されていたのはHuaweiの「Ideos S7 Tablet」という、実売価格299ドル99セントの低価格がアピールポイントという中国メーカーの製品だけだ。ディスプレイは7型ワイドで解像度は800×480ドット。データストレージとして8Gバイトのフラッシュメモリを標準で付属する。無線接続は無線LANのみだ(Huaweiのスペック表では、3Gもサポートするとされているが)。Andriodは2.1を導入している。

Huaweiの「Ideos S7 Talet」。実売価格が300ドルを切る7型ワイドディスプレイ搭載のAndroid 2.1導入タブレットデバイスで、コストパフォーマンスは高いが注目度は高くはない。Best BuyではSamsungのGalaxy Tabと並べて展示されていたが、手に取る人はほとんどいなかった

 このように、いたって地味な扱いのAndroidタブレットデバイスの中で、唯一注目されているのが日本でも評価が高いSamsungの「Galaxy Tab」だ。11月11日に発売されたばかりということもあり、ユーザーの関心も高いようで、2台あるというデモ機は、“休む間もなく”客の間を行き来していた。おかげで製品の展示台があるのに、そこにデモ機がいつもないというほどだ。

 実売価格599ドル99セントと「Ideos S7 Tablet」や「Archos 7 Home Android Tablet」と比べて割高に設定されている。無線接続では3Gにも対応していて、Sprintとの契約で月当たり2Gバイトまで29ドル99セント、月当たり5Gバイトまで59ドル99セントのデータプランを2年間申し込むと、本体が399ドル99セントになる。しかし、スマートフォンや携帯電話、そして、いまや主役の座を降りた感のあるNetbookの割引率と比べると、まだまだ控え目だ。

 このように、高い価格設定にもかかわらず、販売スタッフによると、正確な数は教えてくれなかったが、発売から3日間で「それなりの数」を販売したという。

 試しに店頭スタッフに「iPadに比べてAndroidタブレットデバイスはどこがいいの?」質問してみると「Androidはオープンソースというところが人気だ」という答えが返ってきた。しかし「そのほかには?」と聞くと答えに詰まる。このやり取りが示すように、販売店側はAndroid導入タブレットデバイスのプロモーションに意外と苦労している。Fry'sでは、ディスプレイユニットが取り外せてタブレットデバイスとして使えるモデルを取り扱っていたが、タブレットデバイスはなかった。

量販店の店頭で苦戦するAndroidタブレットデバイスにあって、唯一人気の「Galaxy Tab」だが、こちらも、iPadとの差別化をどのようにアピールするかで、販売スタッフは苦労しているようだ

タブレットPCは直販で

 BestBuy、Fry'sという米国二大家電量販店の状況が示すように、数少ない例外はあるものの、ニュースやメディアでの露出度に反して流通の現場ではどうも盛り上がりに欠ける、というのがAndroidタブレットデバイスの実情だ。Androidスマートフォンと比べても、タブレットデバイスは目立たない存在になっている。

 その大きな理由として、販売側がAndroid導入“タブレットデバイス”の位置づけに困惑している、ということがあるだろう。特にiPadとの違いを普通のユーザーにどのように説明するかが難しいようだ。

 人気のある新製品が専用売り場を設けるほど大量にないにないことも、流通の現場では懸案材料として挙がっている。ヒューレット・パッカードのSlate PCが、現在Web直販限定であるが、もしかしたらこれは賢い選択なのかもしれない。iPadが作り出したタブレットデバイスの市場になんとか食い込みたいAndroidタブレットデバイスだが、メディアの盛り上がりほどには“楽”でないようだ。

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