ファン氏は、2010年10月28日に発表されたスーパーコンピュータランキング「TOP500」で第1位となった中国の「Tianhe-1A」を取り上げ、このマシンが7168基のTesla M2050を搭載することで短期間でシステムの構築が可能となり、そのGPUコンピューティング性能でTOP500のトップとなっただけでなく、同じ性能をCPUだけでは実現不可能だと語った。
同時に、ファン氏はGPUコンピューティングの性能だけでなく、電力効率の高さも訴求している。TOP500のベスト5のうち、「Tianhe-1A」「Nebullae」「TSUBAME」の3台がNVIDIAのGPUを採用しているが、その消費電力は、第2位の「Jaguar」、第5位の「Hopper II」を下回ることを示して、「重要なのはエネルギー効率」であると強調する。
東京工業大学のTSUBAMEは、ワットあたりの性能という指標でTOP500のトップになっているが、基調講演では同大学の松岡聡氏が登場して、TSUBAME 1.0から最新のTSUBAME 2.0までの開発を振り返った。2006年に登場したTSUBAME 1.0は、主要な企業や同大学など2000名のユーザーに利用されて「みんなのスパコン」と評価されるなど一定の成功を収めたが、その一方で、運用するためのエネルギーコストの高さが問題になった。電気代はピーク時で年間1億円にも達したという。
2007年のTSUBAME 1.1を経て2008年に登場したTSUBAME 1.2でTesla S1070を170基搭載し、TSUBAME 2.0では2.4P(ペタ)FlopsというTSUBAME 1.0の30倍という性能向上を実現しながら、消費電力は1億5000万円に収まっていると、松岡氏は説明している。
続いて、ファン氏はCUDA環境普及のために、ソフトウェア開発者を積極的に支援していることをアピールした。NVIDIAは、多くの開発者がCUDAを体験できるようにほとんどのNVIDIA製GPUでCUDAに対応する一方、開発者を支援するテクニカルイベントとしてGTC 2010を行っている。
GTC 2010では、各カテゴリーの有力アプリケーションがCUDAに対応したことが紹介されたが、今回の基調講演では日本で開発されたCUDA環境対応アプリケーションが紹介された。
その1つとなるリンクスの「HALCON」最新版が同社Machine Vision Solutionマネージャーの島輝行氏から紹介された。HALCONは画像解析技術を利用して回路パターンの不具合や液晶パネルのカラー欠陥などを検出するアプリケーションで、第10世代液晶パネルの基板検査では画素幅5ミクロン、5120×3840配列の画像情報を短時間で処理しなければならず、CUDA対応によって演算性能が23倍に向上したことで可能になったとしている。
また、先日Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)でインスタンスタイプの運用が発表されるなど、商用サービスも始まったネットワークを経由するCUDA環境の利用や、「CUDA-x86」によるx86系CPUを搭載したシステムにおけるCUDA環境への対応など、CUDA対応GPUを持たない既存のシステムでもCUDAに対応するソフトウェア的な解決策が示された。
ファン氏は、GTC 2010でも紹介した、NVIDIAのGPUアーキテクチャロードマップを示し、2011年に登場する予定の「Kepler」では性能をFermiの4倍に、2013年に登場する予定の「Maxwell」で10倍にするとした上で、「これでも始まりに過ぎない」と述べ、11月のSC10において米NVIDIAのビル・ダリー氏が2018年に登場すると紹介した「Echelon」では、Fermiの100倍の性能を実現するとアピールした。
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