「OS X Lion」発売から1週間、冷静にその進化を考える本田雅一の注目ポイントは?(2/2 ページ)

» 2011年07月28日 09時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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フルスクリーンのその先にあるもの

初代MacBook Air

 MacBook Airという製品は、実に示唆に富んでいるモデルだ。過去を振り返れば、アルミ削り出しのユニボディを最初に投入したのは初代MacBook Airだったし、取り外し不可の内蔵バッテリーシステム(しかしサイクル性能を上げる)というアプローチもMacBook Airからだ。専用フラッシュストレージによる高応答性、それを活用したオールウェイズオンの運用性の導入も同様。システム復元に使うメディアをDVD、USBメモリ、HD内イメージ+クラウドと変えてきたのも、光学ドライブを内蔵しないMacBook Airだけのためとは思いにくい(実際、Mac miniからも光学ドライブは消えた)。

 Macで扱うたいていのコンテンツはiTunes Storeで提供され、アプリケーションもApp Storeで、システム復元もクラウドになった。さらにはLionと同時にiCloudが登場したことからも分かる通り、アップルは光学ドライブを外すロードマップを着々と進めている。

 今のラインアップは、Macの中心がMacBook Proにあるように見えるだろう。しかしわたしはMacBook Airの利用モデルが、将来の中心になっていくのだと思う。インテルが「Ultrabook」と名付けた薄型の光学ドライブレスなモバイルPCを提案したが、彼らも今後はUltrabookが多数派になっていくとの予測をしている。

 さて、フルスクリーンアプリケーションの話へと戻りたい。

 アプリケーションのフルスクリーン化には、長年のパソコン用OSが抱えてきた問題も解決できる。それは解像度(画素密度)の問題だ。Mac OSもWindowsも、液晶パネルの画素密度が上がってきたことに対応しようとしたが、残念ながら互換性を維持しながら高解像度の液晶パネルに対応する柔軟性は備えることができていない。

 しかし、画面全体の縦横比がおおむね同じならば、フルスクリーンで最適なレイアウトになるようバランスさせておくことで、画素密度が高くなっても表示バランスは崩れない。フルスクリーンアプリケーションの増加、完成度の向上を図ることで、人が画素を認識できないぐらいの高解像度(画面と目の距離にもよるが、パソコン用ディスプレイの場合は1インチ200ピクセル以上の密度と言われている)を持つディスプレイの搭載が見えてくるように思う。

利用シナリオをリフレッシュ

ドッキングステーションとしての役割も担う「Apple Thunderbolt Display」

 そんなわけで、今回のアップデートでは11インチMacBook Airに注目している。こうした小型軽量モデルは、これまで「お出かけのときはこちらをどうぞ」的な製品が多かった。しかし、「Apple Thunderbolt Display」を経由して有線LANや各種USBデバイス、それにHDD(必要なら光学ドライブなど)などを接続し、Lid Closedモード(Macユーザーにはおなじみだが、Macは液晶画面を閉じたままで電源をオン/オフでき、熱設計面でも閉じたときのことが考慮されている)で使えば、机の上でも出先でも1台で快適に使えると思う。

 かつては、こんな利用モデルを考えようにも、このクラスの製品に搭載されるプロセッサが持つ能力は限定的なものだった。もちろん、今でもデスクトップ機並とは言わないが、大きく底上げされたことで、活用できる範囲は大幅に広がっている。

 もし、ふたつだけ要望を付け加えるとするなら、Lid Closedモードと通常操作時の画面レイアウトを両方記憶しておいてくれて、Thunderbolt Displayを取り外すとレイアウトが変わってくれると使いやすさが増しそうだ。外部HDDへの定期的なデータ移動による整理を自動化する機能があれば、内蔵フラッシュドライブの容量負荷を減らすことができるだろう。

 ちなみにわたし自身は、前モデルを所有しているにもかかわらず、13インチモデルを見ながら身もだえしているところ。僕らのような商売では、バッテリー駆動時間の長さに余裕のあるほうが使いやすく、出先で手早くデジタルカメラの画像を取り込む必要もあるからだ(仕事じゃなければEye-Fiでもいいのだけど)。

 今回、アップルが発表した一連の製品は、パソコンの利用シナリオについて再考を促すものになると思う。その影響はMacユーザーだけでなく、Windows搭載PCやWindows自身の設計へも及んでいくことになるだろう。

「MacBook Air」をApple Storeで購入する
8万4800円から購入可能になったスリムノート。

「Mac mini」をApple Storeで購入する
Lion搭載。価格は5万2800円〜。


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