脳汁どばどば──音楽“専用”PC「canarino1」をピュアオーディオ目線でチェックする14万円超のAtom PC+40万円のUSB-DACで聴く(2/2 ページ)

» 2011年08月04日 09時00分 公開
[野村ケンジ(撮影:矢野渉),ITmedia]
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……はぁぁぁ。とんでもない音を聴かせてくれるPCだ

photo 再生に使用した「Wave File Player for Experimental」

 では早速試聴してみよう。

 さて、canarino1の基本構成例(13万9800円)にはOSは含まれない。高級音楽再生環境をPCを構築しようと考える層ならOSのインストールなどたやすいと思うが、BTOでOSをプリインストールした構成でもオーダーできるので安心してほしい。今回は32ビット版のWindows 7 Home premiumをインストールし、「Wave File Player」およびオリオスペックが推奨する音楽再生ソフト「PlayPcmWin」、リッピングソフト「EXACT AUDIO COPY」、Windows用音質改善ソフト「Fidelizer」を用いて実施した。

 中でもEXACT AUDIO COPYは音質にこだわる層に定評あるソフトなので、よりよい音で楽しみたいという人はこちらを使ってCDリッピングをやり直すのもいいかもしれない。PlayPcmWinもWASAPI対応(Windows Audio Session API:Windows標準のソフトウェアボリュームやイコライザをパスするシステムで、Windows Vista以降で搭載)で、PC音質向上につながるポイントをしっかり押さえている再生ソフトだ。もっとも、本機ははあくまでもPC。Windows Media PlayerやiTunesなど普段使用するものでももちろん動作するので心配はない。いざ音質勝負!というときに推奨ソフトと使い分けてみると、より楽しめるのではと思う。


photo 視聴システムの一部(TADの2ウェイスピーカー)

 試聴環境は、ステレオミニプラグから「SUPRA Biline MP」ケーブル(2メートル/1万5225円)でRCAに変換し、プリアンプ代わりのAVアンプ パイオニア「SC-LX71」と接続し、パワーアンプのヤマハ「101M」経由でTADの2ウェイスピーカー(TL-1601bウーファー+TD4001ホーンドライバ)とするシステム。比較機として日本エイサー「Aspire Timeline AS1410」を用い、まずはヘッドフォン出力でWAV音源(16ビット/44kHz)での音質の違いを聴き比べよう。

 ……。

 一聴してすぐに違いが分かるほど歴然とした差がある。比較PCの音とは解像度がまるで異なる。雑で細部もよく感じられず、ただ単に音が出ているだけのBGM代わり程度としてしか使えない比較PCに対して、canarino1は知らない人が聞けば「高級コンポでCDを再生しているのでは」と勘違いしてくれそうなクオリティが確保されている。さすがに細部の表現が甘いが、これはこれで柔らかな音だと好む人は多いと思う。

 これをデジタル出力による接続に変更すると、グッとクオリティが向上した。音のピュア度が格段に増し、ダイナミック感も向上。ベールを何枚もはいだかのように、音がダイナミックかつリアルになる。本格派のオーディオ用CDプレーヤーに迫るクオリティだ。ここまででも相当スゴイ。

 それならばUSB-DACの力も借りよう。本機はそのまま、比較PCにはHigh Resolution Technologies「Music Streamer II」を接続して聞き比べる。……それでも本機のほうが良好で、音のピュアさとダイナミックさがかなり違う。Music Streamer IIは比較PCの音質をかなり改善させたが、それでもこの差が付いたことにため息が出てしまった。PC本体のみでUSB-DACを超えるサウンドクオリティを感じさせたPCは初めてだ。

 であるなら、canarino1にMusic Streamer IIを接続するとどこまでよくなるのだろう。解像度感は本機+デジタル接続が良好と感じたが、音の厚みや抑揚表現の細やかさはMusic Streamer IIに分がある印象だ。これはDACのキャラクターの違いが表れたものと思われ、どちらもすばらしい。どちらをよいと思うかは、あくまで好みの範ちゅうだ。

photo Antelope Audio「ZODIAC GOLD」

 さらにさらに、最高峰のUSB-DAC兼プリアンプであるAntelope Audio「ZODIAC GOLD」(39万9000円)を使用するとどうだろう。

 ……はぁぁぁ……。とんでもない、とんでもない音を聴かせてくれた。上質で細やかな音をシルキーと例える人がいるが、まさにその表現がぴったりのサウンドだ。まるで虫眼鏡で見ているかのように音の1つ1つが細部まで感じ取れるようになり、室内が音の情報で満ち満ちた状態になった。

 ここまで来ると、ライブ会場の最前席にいるか、録音スタジオの中にいるかのようだ。音楽全体が楽しめるだけでなく、1つの楽器に集中して堪能することすらできる。この効果はZODIAC GOLDの実力が大きいのだが、ベースがフツーではそこまでの高みには達しない。もちろん比較PCでは、さすがのZODIAC GOLDでもここまで脳汁が出るまでには至らない。音楽再生におけるベースプレーヤーの重要性を改めて強く認識した次第だ。



photo  

 canarino1のサウンド再生能力は、音のよいPCという範ちゅうをもはや超え、本格派のオーディオコンポーネンツと呼んでもいいレベルに達している。PCとしては確かに高価だが、本機はフツーのPCではなく、オーディオコンポーネンツである。よしっとチャレンジできる価格帯である。

 長時間再生していると本体がかなり発熱することや、CPUスペックがあまり高くないため、あるプレーヤー+ハイレゾ音源の再生時(USBメモリからの再生時)に音飛びが発生する事例もあったが、このサウンドクオリティを得られるなら筆者としてはどうでいい。何よりZODIAC GOLDとの組み合わせで聴いた至高のサウンドは今でも忘れられない。

 canarino1は楽しい。PCオーディオは楽しい。最近盛り上がりつつあるというPCオーディオを本格的に始めようするオーディオファンのベース機として有力な購入候補にしてほしい。そして「ハイエンド」を追求する自作PCファンにも、ベンチマークテストでは計れない、また違うPCの極みに至る楽しみの1つとしてPCオーディオにチャレンジしてみてはいかがだろう。



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