Androidタブレットでもキーボードが欲しい人へ――「Eee Pad Slider SL101」徹底検証普通のタブレットはいりません(2/5 ページ)

» 2011年10月24日 16時30分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]
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好きな人にはたまらないキーボード開閉ギミック

 タブレットスタイルの状態で、カメラのある側の液晶フレーム部分を少し上に持ち上げると本体がスライドして2つに分割され、キーボードが現れるとともに、液晶ディスプレイの角度が約140度にカチッと固定される。

 この開閉機構はなかなか秀逸だ。液晶フレームを軽く持ち上げるだけで、スタンド部のスプリングと画面の四隅に内蔵されたマグネットの作用により、開きながら画面部分が自然にスライドし、即座に固定される。

 金属パーツを利用したジョイント/スタンド部の剛性もしっかりしており、不安定な感じはまったく受けない。あまり乱暴に扱うのはおすすめできないが、開いた状態のまま液晶フレームだけをつかんで上に持ち上げてみても固定が外れないのは立派だ。

 また、キーボードを収納する際は、持ち上げた部分を軽く下に押してやるだけでパタンと畳むことができる。先行した写真/動画レビューで見てもらったほうが分かりやすいと思うが、軽い力でスチャッと開き、パタンと畳めるこの開閉操作は“好きな人にはたまらない”と思われる。

 先ほど片手で持って操作するにはギリギリの重さと書いたが、SL101はキーボードを開いた状態でキーボードのサイドをつかんで、あるいはキーボード底部を片手の手の平に乗せるといった方法でも使える。画面は横置きに固定されるものの、キーボードの下から支えてしまえば体感的な重さは半分くらいに減り、意外と楽に操作できる。

液晶ディスプレイ部を軽く持ち上げて奥にスライドさせると、ディスプレイ裏側のアームが持ち上がり、隠れていたキーボードが現れて、液晶がカチッと固定される

キーボード使用時の側面と背面。液晶ディスプレイの角度は約140度に固定され、チルト角度は調整できない

5段配列のコンパクトなキーボードはタッチも上々

スライド式キーボードは5段配列。キーボード側にポインティングデバイスは用意されていない

 キーボードはTF101の6段配列に対して、5段配列に簡略化されている。

 TF101の最上段にあった輝度調整と無線LAN/Bluetoothのショートカットキーを4段目のキーと共有(Fnキーとの同時押し)するのみで、画面ロック(スリープ)やアプリケーション切り替え、メディア操作キーなどは省略されているが、特になくても操作に支障はないだろう。ホーム、戻る、検索といったショートカットキーは用意されている。

 パームレストはないが、机など平面の上に置けばキーボード部分との段差は1センチほどしかなく、その平面をパームレストとして利用し、無理なくタイプできる。実測で主要キーのピッチは約17.5(横)×14.5(縦)ミリ、キーストロークは約1.5ミリ弱といったところだ。キー押下時に多少たわむが、ストロークが浅いだけにこのくらいの遊びがあったほうが疲れにくいかもしれない。キーのスイッチはTF101より反発が少なめだが、クリック感はしっかりあり、良好な感触だ。

 縦のキーピッチが狭いため、多少窮屈に感じるのは否めないが、普段フルサイズキーボードでの入力に慣れている筆者でも対応できるので、ほとんどの人にとっては慣れで使いこなせるレベルだと思われる。

 配列で気になったのは、カーソル上キーの右に検索キーがあることで、これを右Shiftキーのつもりでミスタイプしてしまうことがしばしばあった。また、Windows PCではないので仕方がないが、ファンクションキーは用意されていないため、ファンクションキーを使った変換やショートカット操作を使い慣れている場合は戸惑うだろう。

TF101(左)とのキーボード比較。SL101は狭いスペースを有効活用し、5段配列キーボードを敷き詰めている。パームレストやタッチパッドは省略されている

日本語入力ソフト次第ではノートPCに限りなく近い感覚での文章入力が可能

標準の日本語入力ソフトは富士ソフトの「FSKAREN for Android」だ。ハードウェアキーボードを使った場合の入力画面では、1文字ごとに下部の予測変換候補が更新されていくため、慣れないうちは気になる。変換精度はよいとはいい難い

 TF101同様、日本語入力ソフトは、富士ソフトの「FSKAREN for Android」を採用する。キーボードで文字を打つと、即座に予測変換の候補が画面下に表示され、スペースキー/カーソルキー、または画面へのタッチで候補を選択しながら、文字入力を進めていく。

 携帯端末用として開発された日本語入力ソフトのため、細かく変換しながら文章を書き進める必要があり、PCのような感覚で入力していくとつまずいてしまう。また、予測変換候補が画面の下1/3ほどを使ってズラリと表示され、しかも1文字打つごとにめまぐるしく変化するので、これがかなり気になった。

 ハードウェアキーボード自体が打ちやすいだけに、ついどんどん先に入力してしまいがちで、変換時に調子が狂うところだが、少し我慢して使っていれば、ある程度は慣れることができた。

 もっとも、ライターである筆者の本音をいわせてもらえば、FSKAREN for Androidでは原稿執筆のような長文入力が困難だと感じる。短い単位で変換していかなければいけないのはともかく、変換精度が低く、辞書の登録単語もあまりに少ない。例えば、「輝度」や「6段」といった単語が辞書になく、「かがやく」と入力して「輝く」を出して「く」を削除し……という調子でやらなければならなかった。学習させて辞書を鍛えるには時間がかかりそうだ。

「FSKAREN for Android」のタブレットスタイルではソフトキーボードを利用できる。キーボードのタイプは、QWERTYキーボード入力(画面=左)、テンキー入力(画面=中央)、手書き入力(画面=右)の3パターンが用意されている

「ATOK for Android お試し版」を使ってみた。1文字ごとに予測変換候補が更新されていくことは同様だが、下1列のみのため、さほど煩わしくない。変換精度が高いことから、ある程度の文を長めに入力してからでもスムースに変換できた

 ならば、市販の日本語入力ソフトの振る舞いはどうかと「ATOK for Android お試し版」をインストールしてみたところ、これが相当に良好だった。

 検索候補は下に1段だけなので目障りなことがなく、変換精度も高い。ある程度長めの文節まで入力してしまってからでも変換できる。もちろん、Ctrl+C(コピー)、Ctrl+X(カット)、Ctrl+V(ペースト)といったショートカット操作も可能だ。ATOK for Androidならば、PCとかなり近い感覚で入力できるという手応えを得ることができた。

 なお、画面の角度は変更することができないが、これは不思議と気にならなかった。それだけ文章入力に集中することができる環境が整っているということかもしれない。

 ただし、難点もある。ハードウェアキーボードでの動作に正式対応していないためか、「半角/全角」キーや「無変換」キーなどが使えず、SL101のハードウェアキーボード上では英語入力/日本語入力の切り替えができない。そのため、英単語をタイプする場合は、日本語で入力して変換するか(Windowsなどのメジャーな単語に限る)、スペル通り打って辛抱強く半角の変換候補が出てくるのを待つしかない。

 それでも一度学習させてしまえば、次からは楽だし、単語登録も可能なので十分実用にはなるのだが、ハードウェアキーボードでも英語入力/日本語入力の切り替えはできてほしい。

 同程度の変換精度や辞書を持つほかの日本語入力ソフトがあればそれでもいいのだが、ATOKのような長文入力に耐えうる日本語入力ソフトをハードウェアキーボードに対応させたうえでプリインストールするか、追加モジュールの配布といったような形でフォローしてもらえると完成度がさらに高まるはずだ(ATOK for Androidは追加モジュールを配布している機種もある)。

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