今年は“3D”と“狭額”、FPD International 2011

» 2011年10月27日 18時26分 公開
[ITmedia]

 横浜・みなとみらいにある「パシフィコ横浜」でフラットパネルの総合技術展「FPD International 2011」が開催されている。今年はLEDや有機ELといった次世代照明技術を展示する「LEDソリューション2011」や電力の効率利用を目指す「電力マネジメント2011」「Smart City Week 2011」という4つの展示会を併催しており、合計274社が出展した。

数年前は「World's Largest ××」(世界最大の〜)を競い合う場だった同展示会だが、大型化も一段落した今は「World's narrowest Bezel」や「Super Narrow Bezel」といった表記が目立つ。テレビのデザイン性向上に加え、複数のパネルをつなげて使うデジタルサイネージなどにも活用しやすい

シャープは、NHK技研公開やCEATEC JAPANに続き、8K4K対応の85V型液晶ディスプレイを展示していた

 毎年この時期に開催される同展示会だが、今年はアナログ停波後のテレビ需要低迷を反映してか、国内パネルメーカーの展示スペースがさらに減った印象を受ける。大型テレビ用のパネルを展示しているのは台湾や韓国のパネルメーカーばかりで、国内メーカーはスマートフォンやタブレットをターゲットにした中小型液晶がメイン。むしろ製造機器や部材メーカーのほうが元気のようだ。

 テレビ用パネルに限って見ると、今年は“3D”と“狭額”(ナローベゼル)の2つがテーマだ。多くのブースで「Super Narrow Bezel」という表記が見られたほか、多彩な3Dテレビが展示されている。ただし、3Dについては現在主流の液晶シャッター方式より、偏光メガネや裸眼立体視が多く、より手軽な方向へとシフトしているようにも感じられた。

日東電工が展示した「世界最大級シームレス偏光板」。なんと130インチまで1枚の偏光フィルムでカバーできる(左)。次世代照明技術の展示会も併催されているため、有機EL照明も見ることができた。写真はコニカミノルタが独自の青色リン光発光材料を用いて開発した発光効率45ルーメン/ワットの有機ELモジュール。サンプルキットを販売中

台湾AUOは、IGZO TFT採用の32型有機ELディスプレイを展示していた。解像度はフルハイビジョン(1920×1080ピクセル)で、3Dには非対応。コントラストは10万:1という。IGZO(イグゾー)は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)からなるアモルファス酸化物で、従来より大幅な高解像度化を可能にする新素材として注目されている

LGディスプレイズは、通常のRGBにW(ホワイト)のサブピクセルを加えた32V型液晶を展示。白が鮮やかに映るほか、消費電力を抑える効果もある(左、中)。47V型なのに、フレームの一辺にしかLEDバックライトが入っていない「Vertical 1Edge BLU」。消費電力はわずか29ワット(右)

MHL対応の21.5型ディスプレイ(左)。GHIMEIの46V型4K×2Kパネル(3840×2160ピクセル)。ピクセルピッチは0.2655ミリという(右)

軽いメガネでフルHD 3D

AOU「Scanning Retarder 3D」方式の46インチパネル。軽い偏光メガネでフルHDの3Dが楽しめる。また2Dと3Dの切り替え表示にも対応

 台湾AOUの「Scanning Retarder 3D」は、軽い偏光メガネを使いながら、フルハイビジョン解像度の3Dを実現する技術だ。液晶パネルの上に“Switch Cell”と呼ばれる液晶層を設け、液晶パネルが左右の画像を交互に表示するのと同期して、右偏光と左偏光を切り替える。「いわば、画面側に液晶シャッターをつけたようなもの。Pattern Retarder方式に比べると3D効果(立体感)は落ちるが、精細な3D映像になる」(同社)。今年のInternational CESで話題になったサムスンのActive Retarder方式と同種の技術といえるが、こちらは120Hz駆動で3D表示が可能になっていた。

フィリップスが展示した裸眼立体視対応の4Kテレビ。3Dは720P相当となるが、15視点/実用視野角90度というスペックだ。ただし2Dへの切替機能はない(左)。Samsungの大型3Dテレビ。いずれも4倍速パネルと液晶シャッター方式のメガネを使用するタイプ。75型の大きさはもとより、55V型のSuper Narrow Bezelにも注目(右)

裸眼立体視対応の小型パネル

 小型パネルの3D化は、専用メガネを使わない裸眼立体視対応が中心になっている。

 日立ディスプレイズの「LCL 3D IPS液晶」は、IPS液晶パネルの上に“液晶レンズ”を設けるというもの。液晶配向による光の屈折率分布でレンズ効果を作り出し、左右の目に入る光を分ける。従来の視差バリア方式は、光を分けるためのバリアが一部の光を遮り、3D表示を暗くしてしまうが、液晶レンズ方式では2Dモードよりもむしろ明るくなるという。

液晶レンズ方式3D対応の4.5型IPS液晶モジュール。1280×720ピクセルで、輝度は2D表示時が400カンデラに対して3D表示時は470カンデラ

 一方、東芝モバイルディスプレイでは、OCB液晶を利用した「時分割裸眼方式3D」の試作機を展示していた。こちらはLEDバックライトの光で左右の映像を分ける手法だ。液晶パネルの上ではなく、背面側にレンズシートを設けており、右目用と左目用に分けたバックライトを120Hzで交互に明滅させる。左目用のLEDが点灯したタイミングで液晶パネルが左目用の映像を表示し、右目用のLEDが点灯するのに合わせて右目用の映像を表示する。液晶パネルは常時フルに利用できるため、3D時表示でも画面解像度が下がらない。OCB液晶の高速応答性を利用してクロストークも最低限に抑えた。

昨年の3型に続き、今回は8型を開発した。「技術的には11型までは対応できる」(東芝モバイルディスプレイ)

 これらの裸眼立体視技術に共通するのは、視聴時の適正距離が決まっていて、視野角も狭いこと。例えば東芝のOCB液晶は、画面の正面40センチ程度が最適視聴距離で、視野角は「目の幅程度」という。このためテレビなどよりスマートフォンやタブレットといったパーソナルデバイスへの採用を想定している。


 「FPD International 2011」の会期は10月28日(金)まで。入場料は2000円だが、Webで事前登録を行えば無料になる。

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