自動販売機にCore i5を載せる理由:組み込みだけどAtomじゃない

» 2011年11月16日 18時43分 公開
[長浜和也,ITmedia]

組み込みデバイスの付加価値は自己増殖する

インテルアーキテクチャー事業本部 副社長 兼 インテリジェント・システム事業部長のトン・スティーンマン氏

 インテルで、PCなどの“汎用利用”CPUではなく、主に“特定目的”に使うデバイスに搭載する“組み込み”向けCPUの事業を行う、インテリジェント・システム事業部のトップである、インテルアーキテクチャー事業本部 副社長 兼 インテリジェント・システム事業部長のトン・スティーンマン氏が、同社の組み込み市場に対する取り組みを紹介した。

 スティーンマン氏は、現在のようにネットワークインフラが普及した環境ではデバイスを接続するだけでは十分でなく、取得するデータをどのように使うのかであり、これらの接続で入手できるデータでどのような価値を生み出すのかが重要だとする。

 その価値には2種類あって、1つは、データを知識に変換することで、これは、さまざまなシステムやクラウドで共有するのかまで考えなければならない。もう1つは、各デバイスを接続するシステムをユーザーにどのように提供していくかで、例えば、救急車と病院の連動や、情報デバイスを搭載した車両と、道路に設置したライブカメラ、ITSなどの交通情報の連動のケースでは、それぞれのシステムを接続する方法とソリューションをどのように提供するかが重要になるという。

 現在では、インテリジェント・システムが家電の分野にも採用するようになり、スマートディスプレイなどが登場することで、インテリジェント・システムと呼ぶ業界カテゴリーが登場している。調査会社のIDCでは、インテリジェント・システムのカテゴリーを組み込み機器分野の一部として扱っているが、すでに、出荷数で18億台と、その市場は、PC、サーバを合わせた規模より大きく、2015年には40億台になるとIDCは予想している。加えて、IDCではインテリジェント・システムのカテゴリーがこれから急速に拡大すると予測しており、そのペースは組み込み製品市場の3〜4倍のスピードという。

 以前の組み込みデバイスでは、ネットワークに接続することなく単体ごとに独立して処理を行っていた。しかし、ネットワークに接続できるようになったことで、搭載したデバイスだけでなく、ほかの場所にあるインテリジェント・システムやクラウドから情報を取得し、その取得した情報を分析して予測される状況に合わせた対応をユーザーに提案、もしくは、システム自身が適切な処理を行うなど、新しい利用方法を生み出すことになると、スティーンマン氏は語る。

 その具体的な例として、インテリジェント・システムを導入した“自動販売機”に搭載した監視カメラの映像から火災の発生を検知、さらに、クラウドでデータを共有しているほかのインテリジェント・システムから取得した周辺情報を基に、適切と判断した避難経路を自動販売機のディスプレイに表示、そして、消防署への通報まで行うことが(アイデアとしては)可能になる。スティーンマン氏は、これが、自動販売機として想定されている機能以上のことが、インテリジェント・システムの導入によって可能になって、ユーザーに付加価値を適用できることを示していると説明する。

これまで単体で動いてきた組み込みデバイスをネットワークで接続するだけでなく、接続したデバイスやクラウドでデータを共有することで「価値を生み出す」ことが重要になる(写真=左)。高機能になったデバイスに対してIDCは「インテリジェント・システム」という新しいカテゴリーを設けた。その出荷台数規模はPC、サーバを合わせた数よりも大きいという(写真=右)

あとのことを考えて自動販売機にCore i5

 このように、インテリジェント・システムでは、開発段階で想定していた以上の機能を追加できるだけでなく、システム自身が学習して自分で実行するという、正のスパイラルが形成できる。

 機能が追加できることで、追加した機能を実行するために、より高い処理能力が必要になる。そのため、組み込み機器の設計では、最初から高い処理能力を持たせる必要があるとスティーンマン氏は主張する。さらに、性能向上によって、ユーザーはより高度な機能を求めるようになる。こうして、処理能力に対する要求は際限なく高くなっていくという。

 こうして、単体でも高機能になったインテリジェント・システムを相互に接続して、全体的に効率の高いシステムを構築して提供することで、生産性を改善できる。複数のデバイスを連動させて、全体としてより高い付加価値をユーザーに提供することが真の価値とスティーマン氏は述べる。

 スティーンマン氏は、その例として病院のシステムを取り上げ、ベッドサイドのデバイスが、ナースセンターや医療システム、集中治療室の機器と接続するだけでなく、病院の外にあるヘルスケアの施設と連動することで、病院だけでは実現できない高度なサービスを利用者に提供できるアイデアを紹介した。

単体で動いていた組み込みデバイスは、ネットワークに接続してほかのデバイスやシステムとデータを共有することで、ユーザーに対して適切な提案を提供できるまでに進化できる(写真=左)。スティーンマン氏は、デバイスがネットワークに接続することで付加価値を増していくことを「正のスパイラル」と呼び、あとから増える付加価値を実現するために、最初から高性能のCPUが必要になると主張する。この典型的な例として、スティーンマン氏は、Embedded Technology 2011の基調講演で、Core i5を搭載する自動販売機のデモを紹介している(写真=右)

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