常識破りの2画面タブレット「Sony Tablet P」を丸裸にする完全分解×開発秘話(2/4 ページ)

» 2011年12月08日 00時00分 公開

ポケットに入る横長のコンパクトボディは長財布をイメージ

 試作機でのフィードバックから、2画面折りたたみ端末の製品化に向けた手応えを得た後は、いよいよ具体的にどのようなハードウェアやOSを採用するかの検討だ。各社のプロセッサなど、あらゆるプラットフォームを検討し、市場動向なども踏まえたうえで、最終的にはソニーとしてやりたいことが一番できそうなNVIDIA Tegra 2とAndroid 3.xの組み合わせに決定したという。

「VAIO P」よりもグッと小さなボディは、ジーンズのバックポケットにも入るコンパクトさ。このまま座るのは怖いが……

 開発時に目指したボディサイズは、ジャケットの胸ポケットやパンツのバックポケットに入れられる長財布のイメージで、本体サイズは閉じた状態で180(幅)×79(奥行き)×26(高さ)ミリ、開いた状態で180(幅)×158(奥行き)×14(高さ)ミリだ。ボディが丸みを帯びているため、多少厚みは出ているが、フットプリントはほぼ狙い通りにおさまった。

 一方、重量のターゲットについて、辛島氏は「持った際に軽さが感じられた300グラム以下を目指した」とするが、十分なバッテリー容量を確保するなどの調整で、最終的には約372グラムとなった。それでも400グラムを切っており、コンパクトなボディも合わせ、持ち運びはしやすい。

 液晶パネルの表面にアクリルを採用したり、ボディのフレームをアルミと樹脂のインサート成形にすることで、軽量化しつつ、強度を確保する工夫も見られる。「強度に関しては落下試験が厳しかった。PCで基準となる机の高さではなく、携帯端末で基準となる胸の高さからの落下試験に耐える必要があったからだ。しかし、こうした工夫により、胸の高さからの落下試験もパスした(製品において、落下で破損しないことを保証するものではない)」(佐久間氏)

難産だった2画面タッチパネル

 画面サイズと解像度については、Webサイトやアプリの表示を想定して最適なバランスを追求していった。Webサイトを閲覧する場合、横解像度が1024ドットあれば、ユーザーが左右スクロールをしないで済み、上下スクロールだけでたいていのWebサイトが見られるので、まずは横解像度を1024ドットに決めた。

 次に横解像度が1024ドットの状態でWebページの画面キャプチャを行い、画面サイズを0.5型くらいずつ変えて作ったモックの液晶部分にはめ込み、サイズの印象や表示の細かさを確認。そこで視認性と携帯性のバランスを比較し、5.5型ワイドの画面サイズがベストと判断した。縦解像度の480ドットは、さまざまなAndroidアプリが1画面内におさまることを考慮したものだ。

 Sony Tablet Pは2画面構成ということで、画面間の距離や使い勝手にもこだわった。液晶ディスプレイモジュールのフレームぎりぎりまで2画面を接近させ、画面間の距離を約9ミリに縮めている。佐久間氏は「将来的には2画面の距離をゼロにしたいが、これ以上に画面間の距離を詰めるには、フレームがないような液晶ディスプレイモジュールを作らなければならない」という。なお、天面と底面をつなぐヒンジ部を背面の中央ではなく、左右に出っ張った状態で配置したデザインも、開いたときに2画面を近づけるのに一役買っている。

画面サイズを0.5型くらいずつ変えて作った開発時のモック(写真=左)。1024×480ドット表示の5.5型ワイド液晶を上下に2画面搭載しており、画面の間は約9ミリまで近づけた(写真=中央)。開いたときの画面間のスペースを詰める目的もあり、ヒンジ部は背面の左右に少し出っ張って配置されている(写真=右)

 開発では2画面に最適化したソフト面のチューニングにも苦労した。液晶ディスプレイには1つのつながった画面を表示していても、タッチパネルは2つの別々なデバイスとして反応するので、2画面をまたいだピンチイン/アウト操作を行うと、それぞれのタッチパネルでは1本の指でなぞっているようにしか認識されない。それをユーザーが1画面のタッチパネル付き液晶ディスプレイと同じ感覚で扱えるように仕上げるのに時間がかかり、試作の終盤でようやく搭載できたという。

 佐藤氏は「PCの開発とは比べものにならないほど、いろいろな人が触れられる試作機を用意し、操作感のフィードバックを受けながら開発を進めた。デバイスドライバのかなり深いところのパラメータやタイミングまで調整し、オーディオのチューニングに通じるような感覚的な領域でAndroid 3.xの限界に近い追い込みをした」と語る。

そして、Sony Tablet Sと共同開発へ

“Sony Tablet”Sシリーズと共同で開発が進められることになり、デザインなどの共通化が図られた

 Sony Tablet Pの開発が着々と進む中、スマートフォンやタブレットが技術的なトレンドになり、社内では他部署の開発チームで別の端末の検討も始まった。

 これが後にもう1つのタブレット端末“Sony Tablet”Sシリーズ(以下、Sony Tablet S)になるのだが、ソニーとしては開発体制を統合し、統一した戦略のもとでAndroidタブレット市場に注力することを決定した。

 こうして、2010年夏にはSony Tablet Sと共同で開発を進めることになり、さまざまなチームから人員が加わっていく。共同開発を始めてからは、Sony Tabletで共通のイメージを打ち出すため、包み込むようなボディデザインを採り入れ、内部の回路なども基本的に共通化し、今のカタチに仕上げていったという。

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