「PCパーツショップである前に、アキバにある店なんだな……と」――アキバの1年を振り返る:2011年のアキバ(前編)(1/3 ページ)

» 2011年12月29日 13時47分 公開
[古田雄介(ぜせ),ITmedia]

業界の波、街の波、日本を襲った波――2011年のアキバは3層で読む

3月12日の秋葉原中央通り。ソフマップ リユース総合館(当時)の壁の一部がはく離して、周辺が立ち入り禁止となっていた

 アキバは昔から変化の激しい街として有名だが、そこには2つの意味があると思う。1つは街という器に乗っているコンテンツの変化だ。ラジオの部品に始まり、オーディオ、家電、パソコン、自作PC、スマホ、サブカルチャーと、街で触れられるコンテンツ(=業界)は時間を経るごとにどんどん増えている。

 もう1つは、中心的なコンテンツの内部で起きている激しい新陳代謝。街の大看板や店内POPを彩るアニメやゲームのタイトルは頻繁に切り替わり、自作PCの常識は半年も経てば過去のものになるほど、世代交代が早い。

 しかし、2011年はこの枠に収まらない巨大な変化が起きた――3月11日の東日本大震災だ。東北を中心にした日本全体の影響は言うに及ばずだが、アキバという小さな街を振り返る場合も、この変化は無視できない。

 この記事はあくまで“自作PCの街としてのアキバ”が舞台だが、街のPCパーツショップには、自作PC業界だけ眺めていても見えてこない変化が起きている。その流れを読むために、時系列を基本としつつ、業界の波と街の波、そして、日本を襲った波――この3層を意識して、2011年のアキバを辿ってみたい。

業界の波:Sandy Bridgeの大ヒットと、マザー回収、そして復活

ドスパラ秋葉原本店もSandy Bridgeの深夜販売を決行していた

 2011年のアキバは、インテルの新型CPU「Sandy Bridge」が大ヒットするという明るい話題で幕を明けた。Sandy Bridgeは同社で初めてグラフィックチップを内蔵したCPUだ。最上位モデルの「Core i7-2600K」でも3万円弱で買える割安感も手伝って、発売解禁の1月9日から大ヒットを記録している。「真冬ですし、50人も集まれば御の字です」と語って深夜販売イベントに臨んだツートップ秋葉原本店も、街全体で300人が集まる反響の大きさを目にして驚いていた。

 Sandy Bridgeを使うには、同じく新製品のP67/H67チップセットを搭載したマザーボードが必要とあって、1月中はマシン一式を買い換える人が各ショップに殺到した。ソフマップ秋葉原本館は当時、「評判が評判を呼んでいる印象ですね。気がかりは一番人気のCore i7-2600Kが品薄なことだけです」とコメントしている。

1月末に撮影したソフマップ秋葉原本館のCPUだな。1月後半にはCore i7-2600Kの在庫を切らすショップが多かった

 しかし、この好景気は一瞬で冷める。2月1日にインテルがP67/H67チップセットに設計上の不具合があると発表し、その日のうちにほとんどのPCパーツショップからSandy Bridge対応マザーが姿を消したのだ。

 不具合の内容は、SATA 2.0ポートを長く使っていると接続しているデバイスの品質が低下するというもの。突然の発表に街にはとまどいの声があふれた。フェイス秋葉原本店は「まさに青天の霹靂(へきれき)です。プラットフォームでみるとSandy Bridgeは圧倒的なシェアを持っていたので穴埋めも容易ではないですし、すでに買われているお客様のサポート体制もすぐ整えないといけないでしょう」と語っていた。実際、H55マザーといった1世代前の主力モデルを急きょ仕入れるショップも多かったが、完全な穴埋めがどこもできなかった様子だ。

 不具合が解消された「B3ステップ」のSandy Bridge対応マザーが出回るようになったのは、1カ月経った3月初旬。まずはASRockやBIOSTAR製品が出回り、3月末までにはインテルを除く主力メーカーのマザーが出そろった。このころになって、ようやく複数のショップから「回復」の2文字が聞かれるようになった。新生活準備シーズンとの重なりもあり、B3ステップのSandy Bridgeマザーが再び軌道に乗るまでに時間はかからなかったようだ。

 クレバリー1号店は独自の視点で当時を振り返る。「年初のころはASRockを“キワモノメーカー”とみる向きがまだ根強かったんですが、この時期に一気に主力のイメージに引き上げた気がします。Sandy Bridgeマザーのリスタートも早かったですし、製品の評価も上々ですから。不測の事態を好機にしたのはすごい。こういう活力は業界全体を元気にしますよね」。

2月1日のフェイス秋葉原本店。マザーボードコーナーには、急いで作られた手書きPOPが張られていた(写真=左)。2月中旬のツートップ秋葉原本店。1世代前のH55マザーが急きょ店頭に並べられた(写真=中央)。3月初旬のパソコンショップ・アーク。P67とH67に加え、H61マザーも並ぶようになった(写真=右)

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