レノボ・ジャパン 基礎研究・先端技術 専任研究員の山崎充弘氏は、ThinkPad X1 Hybridの切り替え機構についてハードウェア面から解説した。ThinkPad X1 HybridのIMMは、SoCサブシステムとして提供された二次環境で、Mini PCI Express拡張モジュールとしてPC本体内に実装する。IMMでは、Webブラウジング、メールの利用、動画、静止画、音楽の再生が可能で、Windows動作状態とIMMは動作中でもワンクリックで移行できる。
IMMが動作するSoCサブシステム(IMMサブシステム)は、モジュール単体でディスプレイインタフェース、オーディオ出力を持ち、データストレージとして利用する16Gバイトフラッシュメモリと無線LANコントローラを実装する。Windowsとx86系CPUで動作するPCシステムは、サブシステムとUSBで接続することでデータストレージとリモートNDISを共有できる。
また、PCシステムとIMMサブシステムは、ThinkPad X1 Hybrid本体に搭載したキーボード、ポインティングデバイス、液晶ディスプレイ、スピーカー、ヘッドフォン端子を共有するが、キーボードとポインティングデバイスはPCシステム側のエンベデットコントローラとIMMサブシステムを専用線で接続して共有するほか、液晶ディスプレイ、ヘッドフォン端子、スピーカーは、スイッチング回路でPCシステム側とIMMサブシステム側の接続を切り替える。
IMMサブシステムが起動したとき、PCシステムはACPIのS3(スリープ状態)に移行して電力消費を抑える。ただし、PCシステムが起動しているときでも、IMMサブシステムはUSBで利用するデータストレージにアクセスするためアイドル状態で待機したままとなる。山崎氏が示した構成パーツごとの消費電力構成を従来のThinkPad X1とThinkPad X1 HybridのIMMで比較では、液晶ディスプレイの消費電力は変わらずIMMサブシステムの消費電力が加わるものの、マザーボードの消費電力が大幅に減るため、システム全体では2分の1程度になるとしている。この消費電力の削減は、液晶ディスプレイの輝度を下げることでさらに効果的になると山崎氏は説明している。
ThinkPad X1 Hybridのハードウェア開発におけるポイントとして、山崎氏は、Lenovoが6年間にわたって取り組んできたHybrid開発における省電力評価でバッテリーによる長時間駆動が実現したほか、Mini PCI Express拡張モジュールによるSoCとしてIMMサブシステムを実装するために、省スペース化と効率的なシステムインタフェースをデザインした。
なお、サブシステムはPCI ExpressバスでPCシステムを接続しているが、ほかにもディスプレイ出力やオーディオ出力のために専用のコードを用意しているため、Mini PCI Express拡張モジュールという形態ながら、ThinkPad X1 Hybrid専用のモジュールとなる。山崎氏は、SoCとしてIMMサブシステムをThinkPad X1 Hybridの本体に搭載することで、分けて開発するのが難しい熱設計などでそれぞれの性能を最大に発揮できたという。
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