MSIと聞くと、ベテランの自作PCユーザーは、「トリッキーだけど遊べるマザーボードとグラフィックスカード」と思うかもしれないし、最近では、「一時期、やたらめったら薄いノートPCを出していたメーカー」と記憶しているユーザーもいるかもしれない。意外なところで、「自作教室に行ったー!」という新人自作PCユーザーや小中学生も少なからずいるはずだ。
以上のように、MSIはPCパーツベンダーとしてユニークな立場や役割を日本の自作PC市場で確立してきた。さらに、ノートPCでも小型軽量のUシリーズやゲーミングノートPCのGシリーズなどで、自作PCユーザー以外にもMSIのブランドが知られるようになった。
2012年になって、MSIの日本市場における拠点「エムエスアイコンピュータージャパン」が、事業所を移転し、新しい代表取締役に林文通氏が就任するなど、新しい動きを打ち出している。日本市場におけるMSIの動きにも変化があるのだろうか。MSI台湾本社の上級副社長で日本のマーケティングも担当するアレックス・クオ氏に聞いた。
──2011年は多くのPCパーツベンダーが苦戦をしたと聞いているが、MSIの業績は。
アレックス・クオ氏(以下、クオ) グローバルでは、グラフィックスカード、マザーボードともに成長を維持できた。ただ、ノートPCのビジネスはスローペースだったことは否定できない。しかし、すべての事業で利益は十分に出している。
2011年の自作PC市場は、世界的に見ても不利な問題が続けて発生した。特に、Intel Z68 Expressチップセット搭載マザーボードが、登場してすぐに実売価格の引き下げ競争となってしまったことと、CPUの供給不足、特に“Sandy Bridge-E”世代のCPUが不足したのが、ビジネスに大きく影響した。
2012年は、自作PC市場にとっていい条件がそろいつつある。Ivy Bridgeの登場ももちろんだが、インテルが用意するチップセットのラインアップがシンプルになるという情報もある。これは、マザーボードベンダーにとっていい影響を与える。
──グローバルの視点で見た場合、自作PC市場の規模はどのように推移しているか。東南アジアや欧州では成長しているのか。
クオ グローバルでも自作PC市場は縮小傾向にある。しかし、なくなることはない。その中で生き残っていく方法を模索している。2012年はもっとアグレッシブに自作PC市場でも事業を展開していく考えだ。
──ノートPCや液晶一体型PCの事業はどのように展開する予定か。
クオ ノートPCと液晶一体型PCの事業は、ニッチな分野に特化していく。ゲーミングノートPC、モバイル、そして、タブレットPCにリソースを集中する。ただし、モバイルカテゴリーでUltrabookを投入するかどうかは未定だ。一時期、MSIはノートPCと液晶一体型PCに社内のリソースを大きくシフトさせたが、2012年からはシフトさせたリソースを再びPCパーツの分野に戻す。
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