「NECは3波“WWW”チューナー搭載、実はけっこう違います」──登場から17年「最新SmartVision」進化のポイント“テレパソ”、どれも同じ?

» 2012年03月19日 22時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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NEC製地デジPCのカナメ 「SmartVision」

photo PCIカード/アナログテレビ時代のSmartVisionテレビチューナーカード(写真上)と現世代のMini PCI Express接続タイプのVALUESTARシリーズ内蔵カード(写真下)

 NECパーソナルコンピュータは3月19日、同社製個人向けPC「VALUESTAR/LaVie」シリーズに備わるデジタルテレビ機能「SmartVision」の技術説明会を実施。「実は、けっこう進化しています」──と、“PCならではのテレビ利用シーンの提案”を軸に強化してきた課程や機能を説明した。

 2012年3月現在、メーカー製Windows 7搭載PCの多くにデジタルテレビ放送受信機能が備わっている。特に同上のデスクトップPCは、マーケティング会社 GfK Japan調べによると売れ筋TOP10のすべてが地デジチューナー搭載の液晶一体型モデルが占める状況となっている。

 逆に、“ほぼ標準化”してしまった機能だからこそ、PCメーカー別の機能差や差別化ポイントなどが伝わりにくい部分もあるだろう。NECのテレビPCは「PCメーカーから見たテレビ機能はこうである──と提案。つまり、PCならではの機能として何を追加すればいいかを注力してきた」(NECパーソナルコンピュータ 商品開発本部の小野寺忠司本部長)とする姿勢で、1995年のアナログテレビチューナーカードより約17年前からSmartVision(PC+テレビ)を展開してきた。

photophoto NECパーソナルコンピュータ 商品開発本部の小野寺忠司本部長 NECは国内地デジPCシェアで34%を占め、購入者のテレビ機能満足度も高いという。NECの「SmartVision」進化の歴史(写真=右)。2012年現在、増設パーツとしての単体テレビチューナーカード製品は投入していないが、かつてSmartVisionユーザーだった人は読者にも多いだろう。なおワイヤレスTVデジタルなど、単体販売してくれると喜ばしい機器も存在したり

 現時点で最新となる「VALUETAR/LaVie」シリーズ2012年春モデルは、デジタルテレビ放送の受信・表示や番組録画、再生といった基本機能に加え、

  • ハードウェアトランスコードチップ「XCode 5シリーズ」(ViXS製)を採用した新テレビチューナーカードにより、リアルタイムでの「(最大)16倍長時間(AVC)録画」をサポート
  • 従来のUSB外付けHDDへの録画+制限なし増設可能とする点に加え、万一設定したHDDが外れていても自動的に内蔵HDDへ録画する「リリーフ録画機能」
  • 録画しながらCMと本編の切り替わり部分へチャプターを自動生成
  • 自動的に打たれたチャプター情報に応じ、本編のみをスキップ操作(リモコン操作)なしで再生可能
  • ローカル暗号で保護しているため、HDD内の録画番組をカット編集可能。そのため、本編のみを1クリックで抽出可能
  • さらに、フレーム単位でもカット可能(自動チャプター機能でおおむね抽出できるが、冒頭など不要部分が若干含まれる場合がある。少しでも不要部分が残っているとNGというこだわりユーザー向け機能)
  • 1.4倍速、さらに2倍速でも“十分実用的に音声ピッチが変わらず“利用できる早見再生機能「きこえる変速再生」
  • DTCP-IP対応DLNA機能で、デジタル放送番組のネットワーク配信/録画
  • SD画質/ワンセグ画質のいずれかより選べる番組のスマートフォン持ち出し機能「外でもVIDEO」
  • and/or検索も可能──など、キーボードがあるPCだからこその「(マニア向け)番組おまかせ録画機能」

 などを機能を備える。

 「SmartVisionは、3波ダブルチューナー+ダブル長時間録画+ダブル携帯機器書き出しの機能により『3波WWWチューナー』とうたっている(笑)。PCならではの機能を追求すると、実はAV機器に対するアドバンテージもかなり存在する。HDD増設で(概念上は)無限となる録画容量の拡充、マニアックな設定も可能な番組検索/おまかせ録画+番組表、“飾り”ではない実用的な早見再生機能、さらに、高速に処理できるPCが得意とする“編集機能”などのできに特に自信がある」(小野寺本部長)

photophotophotophoto 改めてVALUESTAR/LaVieシリーズに載る、現時点での「SmartVision」の特徴。AV機器と少し異なるPCならではの機能として、「より自由なHDD拡張」「自動チャプター打ち機能(いわゆるCMカット再生機能)」「フレーム単位も含めた録画番組の高速編集機能」「キーボード入力で詳細に番組検索・おまかせ録画予約が可能」などがある
photophotophoto ユーザーインタフェースは、AV機器と違い「まずはキーボード&マウスでの操作ありき」で作られているのも隠れたポイント。もちろんリモコン操作の10フィートUIも存在するが、プライベートルームでPC機能とも併用する活用シーンにを想定すると、この点は既存のAV機器にはない概念だ(たいして変わらないという声もあるだろうが)。単体でほしいという声もある、ルータ機能にワイヤレステレビ機能を追加した「ワイヤレスTVデジタル」。独自暗号化と一体化処理によりデジタル放送基準をクリアしているため単体販売は困難というが、5GHz帯無線LANでデータを飛ばすということで、iPadなどでもフルセグテレビ機能を利用できると非常にうれしかったりする(同じような機能は、アイ・オー・データ機器が「WN-G300TVGR」で実現するようだ)

 SmartVision(NECのテレビ機能搭載PC)の各種機能は、スペックの低いスタンダードモデルでもおおむね利用できる点が他社に対する大きな強み。例えばハイビジョンクラスのMPEG-4 AVC/H.264コンテンツ(長時間録画機能で録画した番組)など、低スペックのPCではスムーズに再生できない例がある。これに対し、SmartVisionは汎用的に用いるマイクロソフト標準描画エンジンに換え、「NEC Presenter」と呼ぶ独自の描画エンジンを開発し、低スペックのPCでもスムーズに再生できるよう工夫した。

 再生のカクつき(スムーズに再生できないこと)は、処理性能が足りないこと(ディスプレイ高解像度化によるデータ量増大で、より高速な性能を要する)と、CPU・グラフィックスの非同期制御(同期タイミングがない点)に起因する。低速なマシンと従来の描画エンジンでは、描画バッファのデータコピー処理が多数発生し、処理が追いつかない→結果として、映像がカクつくことになるようだ。

 この課題に対し、NEC Presenterは「FlipEX」と呼ぶ高速な新方式を新規で開発することで改善した。FlipEXはメモリポインタ制御の概念を導入することで、これまでのネックであったデータコピー処理量を低減、かつディスプレイ垂直同期信号に合わせた描画タイミングを生成する仕組みで非同期制御の欠点もカバーする。

photophotophoto 現世代SmartVisionカードの特長を示した図(写真=左)。早見(遅見)再生機能「きこえる変速再生」も、NEC中央研究所が独自開発した高度な音声時間軸圧縮伸長技術を取り入れている。音声ピッチを変えず(早見時も、音声が高くならない)に再生速度のみ変える。“オマケ機能でなくしっかり実用できるレベル”で「時短」視聴できるという(写真=中央)。Windows標準の描画エンジンより高速なデータ方式となる独自描画エンジン「NEC Presenter」を採用し、遅いPCでもハイビジョンクラスのH.264動画もスムーズに再生できる。こちらは他社PCに対し、低廉スペックのPCでもテレビ機能をしっかり実装できる点でかなり大きなアドバンテージだ

 2012年3月に公開した「つぶやきプラス」も、容易に機能追加・向上できる点ととともに、PCならではの機能として提案する。該当番組に関するTwitterユーザーのつぶやきを確認しながら番組を視聴する“感動を共有できる”機能に加え、他ユーザーがつぶやいた時間から録画番組の該当部分へ移動できる「シーンジャンプ」、つぶやきで外出先から録画予約できる「リモート予約」機能などを実装する。

 シーンジャンプ機能は、オンエア時のつぶやき時間と録画番組の再生時間を連携させるもの。つぶやきプラスは、録画番組の再生中(あとで見る時)も過去の時間帯につぶやかれた内容の時間情報と連動して表示できる。──このつぶやき内容と時間情報を擬似的なチャプターポイントとして応用する仕組みだ。似た機能に東芝の「RZタグラー/タグリストシェア」が存在するが、それ専用に・自己的に作成するのではなく、おそらく誰かしらがつぶやくであろうTwitterでのつぶやき内容を有効活用するのが意外にうまい手段だ。

 「テレビとPC。PCだからこそできるコミュニケーション系機能をもっと強化し、少し大げさかもしれないが、“もっと感動できる”ような機能を今後も開発する。ほかにもチューナー性能を最大限に引き出す独自のRFアンプの実装、独自暗号技術によりケーブルレスで使える“ワイヤレスTVデジタル”など、SmartVisionはソフトウェアもハードウェアもほぼすべてNEC自前で作っているのが強み。同じテレパソといっても、大きな差があると思う。使っていただくとなるほどと実感できる便利機能には自信があります」(NECパーソナルコンピュータ メディアプラットフォーム開発部の小野寺氏)

photophotophoto Twitterと連携したテレビコミュニケーション機能「つぶやきプラス」。Twitterで盛り上がっていた場面へジャンプできる「シーンジャンプ機能」は、自身の使い方次第で相当便利になりそう

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