6月25日、米Hewlett-Packard(以下、HP)の上級副社長プリンティング&パーソナルシステムズ事業担当であるトッド・ブラッドリー(Todd Bradley)氏が来日し、国内メディアのグループインタビューに応じた。主な内容は、同社が2012年3月に発表したPC部門(PSG)とプリンタ部門(IPG)の統合についてだ。
これまでHPのPC部門とプリンタ部門は、2005年3月に両部門の分離が行われて以降、同社の中核事業として独立してきたが、2011年8月にPSGのスピンオフを含む再編の可能性を検討するとの発表がなされたことで、一時さまざまな憶測が飛び交った。そして同年9月、CEOに就任したばかりのメグ・ホイットマン(Meg Whitman)氏が「PSGを社内に保持することが顧客、パートナー、株主、従業員にとって正しい選択であることが明らかになった」としてPSGの社内保持を表明し、事態を収拾した経緯がある。
その後HPは、2012年3月にPSGとIPGの統合を発表、これまでPSGを率いてきたブラッドリー氏が、新部門であるプリンティング&パーソナルシステムズ(Printing and Personal Systems Group:PPS)のトップに就任した(一方、IPGを統括してきたヴィオメッシュ・ジョシ(Vyomesh Joshi)氏は同社を去っている)。
同社が5月に発表した大規模な人員削減計画からも分かるように、PSGとIPGの事業統合も経営合理化の意味合いが強い。ブラッドリー氏は「HPはプリンタでもPCでも世界でトップの地位にいる。しかし、それぞれの事業が持つ強みはこれまで異なっていた」と振り返り、今回の統合による、セールスやサプライチェーンなどでのメリットは大きいと説明する。「我々HPはイノベーションに集中し、幅広く製品を展開し、地域拡大を図っていく。(事業統合は)企業としても効率アップするよい機会だと考えている。今が絶好の時期だ」(同氏)。
なお、PPS全体の方針として、ブラッドリー氏は「セキュリティ」「クラウド」「ビッグデータ」(HPは2011年に英Autonomyを103億ドルで買収している)の3つを事業の柱にフォーカスしていくと語り、「HPは何よりもインフラストラクチャーの企業である」というメグ・ホイットマンCEOの基本方針を改めて強調した。
国内における事業戦略については、日本ヒューレット・パッカードの岡隆史副社長が説明した。まず日本のPC事業は、これまで通常のオフィスユースに加えて、仮想化やシンクライアント、業務・業種に特化した企業向けのソリューションビジネスを展開する一方で、5年ほど前からコンシューマービジネスにも取り組み、店頭と直販(HP Directplus)を通じて成長をめざしてきた。最近ではAKB48を起用したCMなどでHPのブランドを知った人も多いだろう。
岡氏は「コンシューマーとソリューションはマーケットが別だと思われるかもしれないが、シナジーはある。『コンシューマで知られているHP』として選択される可能性も高まる。事業のカバーする範囲を広げる中で全体を加速していく」と方向性を説明する。
また、プリンタ事業でも同様に、各セグメントをターゲットにした適切な製品を投入するという基本方針を踏襲しつつ、PCとプリンティング事業が統合されることにより「開発の観点でもいろいろなアイデアのシェアリングが起こる。単純に、HPのPCを使っている顧客でHPのプリンタを使っている人が少ない、という場面で(HPの製品を)紹介できるのもメリット。組織の統合を日本でも生かしていく」と述べた。現在、日本HPでは対外的にはPPSという言葉を使っていないが、今後は日本国内でもグローバルでの方向性に沿う形でビジネスを展開していくことを示唆した形だ。
なお、今後のプリンティング事業については「日本のプリント市場は増えていないが、その一方で年間5兆ページも印刷されている」と述べ、その大部分は輪転印刷機やオフセットなどのアナログ印刷が主体であることを指摘。こうした印刷業者に対し、コスト面で小ロット印刷にも耐えられるデジタル化を訴求することにより成長していくとした。
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