「どわわわわー!」
通路を埋める人の頭で驚いた。現地時間の日曜日19時過ぎ。普通ならば、週末の休み疲れを癒しつつ、翌日の月曜から始まる仕事のことを思い、はりきっているか憂鬱になっているかする、とにかく、日本では多くの人が家で過ごしている時間のはずだが、Singapore EXPOの会場は来場者、それも、家族連れであふれていた。人の波は、Singapore EXPO会場に隣接したMRT(地下鉄のようなモノレールのような公共交通機関)の駅からHallの入り口まで行列を成しているほどだ。
この人垣を乗り越えなければ、ブースに展示してあるはずの未知なる製品にたどり着かない。きえぇぇぇぇっぃぃぃぃい! 通してくれ! 通して! 通してくださあああああああいいいいい! 通れたあああ!
なんとかブースにたどり着いた。しかし、なんか違う……ぞ。CEATEC JAPANやInternatonal CESのPCメーカーブースといったら、広々とした展示コーナーに、新製品や未発表の参考展示品が整然と並び、その前には、きれいなお姉さんがにっこり、というのが定番じゃないか。しかし、SITEX 2012では、有力PCメーカーのロゴを掲げる大規模ブースに足を踏み入れると、そこは、製品パッケージのダンボール箱をうず高く積み上げた壁と、その合間に設けた台に既存の製品がパンフレットとともにおいてあるという、とにかく、なんだか雑然とした雰囲気に満ち満ちている。製品の前には、きれいなお姉さんがにっこり、ではなく、そろいのTシャツを着た汗だくのおにいちゃんたちが待ち構えていた。その雰囲気は量販店の販売スタッフに近い。
「うっ、えっ、あ、あのー」
「なんだ、どうした、これ買うのか、値段はここに書いてあるぞ」
なんだー! いきなり展示している製品を売り込んできたぞ。ああ、これは、イベントでよくある物販ブースに迷い込んでしまったか。有力PCメーカーのロゴをドドンと掲げたでっかいブースが、物販ブースとは思わなかったよ。なるほど、だから、同じPCメーカーのロゴを掲げたブースが複数存在するのね。物販ブースと展示ブースだ。では、こちらが展示ブースと。え、ちょっと、製品パッケージの山と雑然とした展示品とおにいちゃんが待ち構えているのは、さっきのブースと同じじゃないか。
「うっ、えっ、あ、あのー」
「なんだ、どうした、これ買うのか。値段はここに書いてあるぞ」
なんだー! ここも、物販ブースか! しかし、物販ブースはここだけでなかった。いや、正しくは、SITEX 2012の会場に設けているブースの圧倒的多数が物販ブースだった。展示している製品を売っていなかったのは、IEMの会場も兼ねていたIntelブースのみ。
ブースに掲げたメーカーロゴをよくみると、販売店のロゴも掲げてある。掲げるPCメーカーのロゴが異なる大規模ブースでも、販売店のロゴは同じだったり、同じPCメーカーのロゴを掲げている大規模ブースで販売店のロゴが異なっていたりする。
同じ販売店のロゴを掲げているブースは、シンガポールの有力販売店が構えていて、PCメーカーごとにブースを設けている。販売店単位でブースを構えるので、販売店が異なると、同じPCメーカーのロゴを掲げるブースが登場することになる。
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