Samsungの新主力SSD「840 EVO」を高速化したターボ技術に迫る3ビットMLCでも書き込みが速い(2/3 ページ)

» 2013年07月19日 13時30分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]

3ビットMLC高速化の秘密兵器「Turbo Write Technology」

 NANDフラッシュは840同様、Samsungがいうところの「3ビットMLC」を採用している。1つのメモリセルに1ビットを記録するSLC(シングルレベルセル)、1つのメモリセルに2ビットを記録するMLC(マルチレベルセル)に対し、1つのメモリセルに3ビットを記録することが可能だ。TLC(トリプルレベルセル)という呼称で知られているが、同社では3ビットMLCと呼んでいる。

 3ビットMLCは大容量化が容易で、製造コストも低くできるという大きなメリットがある。その一方で、電圧を8段階に制御する必要があるため、SLCや通常のMLCに比べると長期耐久性は劣り、書き込み性能がどうしても遅くなる傾向がある。

 従来の840では、オーバープロビジョニング(予備領域の確保)やコントローラの最適化などで長期耐久性の課題を解決したものの、書き込み性能は同時に発表された上位機種の840 PROに比べて劣っていた。

 しかし、840 EVOでは新たに「TurboWrite Technology」を採用することで、その課題を解決している。TurboWrite Technologyでは、データ領域とは別に確保した3ビットMLC NANDをSLCシミュレート(SLC同様、記録容量は1/3になる)の動作により高速化し、これをバッファとして利用する。

 データは最初にこのバッファへ書き込まれ、バッファからデータ領域への転送はアイドル時に行われる仕様だ。これにより、シーケンシャルライトの速度は120Gバイトモデルで410Mバイト/秒、250G/500G/750G/1Tバイトモデルで520Mバイト/秒まで上昇する。

 バッファサイズを超える大容量の書き込みが発生した場合は、データ領域に直接書き込まれるため、その間のシーケンシャルライト速度は120Gバイトモデルで140Mバイト/秒、250Gバイトモデルで270Mバイト/秒、500G/750G/1Tバイトモデルで420Mバイト/秒まで下がる。

 ただし、TurboWrite Technologyに使われるバッファ容量は、120G/250Gバイトモデルで3Gバイト、500Gバイトモデルで6Gバイト、750Gバイトモデルで9Gバイト、1Tバイトモデルで12Gバイトと余裕があり、通常の利用で速度低下が発生する場面は非常に少ないとしている。

「TurboWrite Technology」の仕組み。1Tバイトモデルの場合、36GバイトをSLCシミュレート動作(容量は実質12Gバイトになる)させることで書き込みを高速化し、これを高速バッファとして利用する。バッファからの転送はアイドル時に行われる。バッファ領域のセルに不良が生じた場合、TurboWrite Technologyは無効となるが、SCLシミュレート動作によりセルの書き換え耐久性は約10万回を確保しているため、通常の利用で速度低下が発生する可能性は低いという
TurboWrite Technologyの有効/無効による性能の違い(写真=左)。特に120Gバイトモデルでは、シーケンシャルライト速度が140Mバイト/秒から410Mバイト/秒へと大幅に上昇している。TurboWrite Technologyに使われるバッファの容量(写真=右)。1Tバイトモデルのバッファは12Gバイトと大容量だ
コントローラ/ファームウェアの最適化によって、微細化が進んだプロセスルールであっても高い信頼性を確保しており、コントローラからNANDフラッシュまですべて自社で開発しているEnd-to-Endソリューションによる強みが大きいという(写真=左)。アイドル時の消費電力の低さを示すスライド(写真=右)。45ミリワットという消費電力は、7200rpmのHDDの11分の1となる
温度管理ソリューションについても紹介(写真=左)。70度を基準温度として、過度の高温になるとパワーをセーブする仕組みが搭載されているという。256ビットAES機能を搭載(写真=右)。MicrosoftのeDriveなどにもファームウェアのアップデートにより対応するという

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