IGZO液晶+第4世代Coreの“日本製”Ultrabookはこうして生まれた「FMV LIFEBOOK UH90/L」分解&開発陣インタビュー(前編)(2/4 ページ)

» 2013年08月22日 12時45分 公開

先代のUH75/Hから受け継いだもの

従来機の「FMV LIFEBOOK UH75/H」

―― 従来機のUH75/Hでは、開発手法を変えたと聞きました。最初に技術者側から第3世代Core(開発コード名:Ivy Bridge)のUltrabookで「限界の薄さ」を提示し、デザイナーがその薄さで理想とするデザインのモックアップを作り、その形に可能な限り最終製品を近づけるよう設計することで、見た目も中身も限界に挑戦するというものです。今回のUH90/Lも同じ開発手法でしょうか?

安藤氏 まったく同じではないですが、その考え方は踏襲しています。FMVの初代UltrabookにあたるUH75/Hのサイズをベースとして、新しいUH90/Lの開発コンセプトを具現化したモックアップを数パターン作成し、そこから最適なものに絞り込んで、モックアップと実際の製品をどこまで近づけられるか、ということを皆で確認しながら開発を進めました。まず理想とするデザインを掲げて、設計を突き詰めることで、美しいフォルムと高性能を両立させています。

―― 第4世代Core搭載のUltrabookでは、インテルがコンバーチブル型のデザインも推奨していますが、UH90/Lでは最初から従来通りのクラムシェル型に決めていましたか?

松本氏 はい、開発の初期から決めていました。UHシリーズの大きな狙いは、13型クラスのボディサイズに、一回り大きな14型ワイドの液晶ディスプレイを搭載する点にあり、従来のUH75/Hと同様、オーソドックスなクラムシェル型ノートPCでの上質を追求しています。着脱式なども案としては出ましたが、すでに2Wayスタイルの「STYLISTIC QH」シリーズを展開していたこともあり、UHシリーズではクラムシェル型にこだわりました。

タッチパネルを追加しつつ、薄さ、軽さ、頑丈さも強化

―― モバイルPCの開発で重要な、薄さや重さの目標はどのように設定しましたか?

商品企画として開発をリードした松本氏

松本氏 UH75/Hの段階でHDD搭載ノートPCとして最薄を実現できていましたが、これからの使い方を検討したときに、今後のPCにはタッチパネルが必要だと考えました。そこで、商品企画としては、タッチパネルを追加してさらに薄型化してほしいと要望を出しました。

 また、UH75/Hは大きめの14型ワイド液晶ディスプレイを搭載する関係で、モバイルを想定したUltrabookでは少々重かった(約1.44キロ)ため、重量をどこまで切り詰められるかもチャレンジしています。つまり、タッチパネル付きでUH75/Hより薄型軽量というのが、今回掲げた目標の最低ラインです。

 薄さと軽さに加えて、重視したのは堅牢性です。実は開発当初に1〜1.2キロ程度の軽量ボディは可能なのか、という議論がありました。しかし、現在販売されている非常に軽量なUltrabookを拝見したところ、やはり堅牢性への不安は感じます。一般的にPCの使用年数が延びている中で、長期間使っていただくため、堅牢性の強化に努めました。

 薄くてもこれだけ頑丈にできている、ということがしっかり伝わるようなモノ作りをして、安心感や信頼性という価値を富士通としては提供していけることが大事だと考えています。

 結果として薄さは9.2〜15.5ミリ、軽さは約1.39キロにまとまり、約200kgf(重量キログラム)の重さにも耐えられる堅牢性(天板全面加圧試験より)が得られたので、当初の目標はクリアできています。

左がUH90/L(幅329.9×奥行き229.9×高さ9.2〜15.5ミリ、約1.39キロ)、右がUH75/H(幅327×奥行き225×高さ9.0〜15.6ミリ、約1.44キロ)。幅が2.9ミリ、奥行きが4.9ミリ長い一方、最厚部は0.1ミリ短く、重量は50グラム軽くなった

―― 一方でUH75/Hに比べて横幅は2.9ミリ、奥行きは4.9ミリ長くなっています。特に奥行きが伸びた原因は何でしょうか?

立神氏 液晶ディスプレイにタッチパネルを追加したため、画面の下に液晶パネルの制御部に加えて、タッチパネルの制御部も必要になりました。そこで、液晶ディスプレイ下部のスペースを広げた結果、奥行きが長くなっています。

―― UHシリーズで特徴的なのが、HDDの内蔵にこだわっていることです。薄さや軽さを優先するならば、SSD専用の設計にしたほうが有利ですが、なぜHDD(ハイブリッドHDD)を採用したのでしょうか?

松本氏 日本では自分の大切なデータを手元に置いておきたい、というニーズが根強くあります。欧米ではクラウドサービスに写真や動画をアップする使用法が増えていますが、日本ではまだその段階まで行っていません。ストレージの容量がすぐに足りなくなって、外付けHDDを増設するか、オンラインストレージを使うかなど、ユーザーの手を煩わせるより、HDD内蔵のほうがベターという考えです。

山田氏 もちろん、単に従来型のHDDを内蔵するのでは、対抗他社と比較して、スピードやレスポンスの面で劣ってしまうので、NANDフラッシュメモリが備わったハイブリッドHDDを採用しています。これにより、500Gバイトの大容量と、SSDに近いレスポンスの速さを両立しました。さらに、パフォーマンス重視のユーザーのため、富士通 WEB MARTで直販するカスタムメイドモデルの「WU1/L」では、128Gバイト/256GバイトのSSDを選べるようにしています。

注意!

製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません。



隠しネジで固定された底面カバーを外すと、内部構造が一望できる。薄さを重視したUltrabookながら、奥側に7ミリ厚のハイブリッドHDDを内蔵しているのが目立つ。メモリもオンボードではなく、SO-DIMMスロットを1基備えている

―― 薄型軽量や高い堅牢性を実現するには、ボディの素材もポイントですが、各部にどのような素材を使っていますか?

立神氏 天面と底面は軽くて頑丈なマグネシウム合金、パームレスト面(キーボードベゼルと一体)から側面は硬く質感の高いアルミニウムの1枚板、液晶ディスプレイ表面は高硬度のガラス、ガラスの周囲をリブ状に覆っている部分は樹脂となっています。細かいところでは、タッチパッドもガラス製です。

天面(写真=左)と底面(写真=右)はマグネシウム合金を採用。底面には余計な凹凸やネジ穴がなく、360度見られることを意識したデザインだ。実際の製品では、底面に製品名や注記、各種規格のロゴがレーザー刻印で目立たないよう配置されている
液晶ディスプレイ表面は高硬度のガラスが貼り付けてある(写真=左)。3200×1800ドットという高解像度の液晶パネルだが、狭額縁設計により、13型クラスのUltrabookに近い横幅におさめている。キーボードカバーとパームレストは一体成型で、アルミニウムの1枚板で構成されている(写真=右)

富士通 FMV LIFEBOOK UH

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