Intelの新しいタブレット向けSoC「Atom Z3000」シリーズこと、“Bay Trail-T”(ベイ・トレイル)は、これまでのSoCとは異なるアーキテクチャを採用した、Intelにとっての戦略的製品だ。同社はこのBay Trailコアを、タブレットだけでなく、低価格PCや組み込み機器向けにも採用する意向を示している。
Atom Z3000シリーズのCPUコアとなる“Slvermont”(シルバーモント)は、現行の第4世代Coreと同じく、3次元(3D)構造のトライゲートトランジスタ技術を用いた22ナノメートルプロセスに最適化した設計が施され、従来のAtomに比べ、CPUコアのピーク性能を3倍に引き上げられるほか、同一性能であれば消費電力を5分の1に低減できるという。
Intelは今後、省電力SoC向けプロセッサーのアーキテクチャを毎年リフレッシュしていくことを表明しており、Silvermontは同社の新しいSoC戦略の先陣を切るアーキテクチャとなる。
これまでのAtomは、プログラムの命令をその順番通りに処理していくイン・オーダー型を採用していたのに対し、新しいアーキテクチャのSilvermontは、依存関係のない命令の並び順を、高速に処理できるように並べ替えて実行するアウト・オブ・オーダー型を採用している。これにより、Silvermontコアはシングルスレッド性能を大幅に引き上げている。
また、Silvermontは2つのCPUコアで最大1MバイトのL2キャッシュを共用するモジュール構造を採用することで、マルチコア化を容易にし、最大8コアまでのSoC設計を可能にしている。その一方で、従来のAtomでサポートされていたHyper Threadingは非対応とした。
その命令セットは、Intel Core 2 64ビットアーキテクチャ(Meromアーキテクチャ)に、SSE 4.1と同4.2を拡張した構成を採っており、ハードウェア仮想化技術のVT-x2や、“Westmere”(第1世代Coreプロセッサー)と同等のAESセキュリティ機能と、McAfeeのDeepSAFEに対応したIntel OS Guardをサポートするなど、Pentium相当の命令セットだった従来のAtomプロセッサーから大幅な進化を遂げている。
Intelは、Silvermontコアの設計において、パフォーマンスを犠牲にすることなく省電力性を高めるため、アウト・オブ・オーダー型パイプラインの採用以外にも、命令実行の遅延を低減したり、演算パイプラインのリソース管理徹底したりといった改良を加えている。また、同時に分岐予測の整合性を高めるとともに、大容量かつ低レイテンシの2次キャッシュを搭載することで、メモリアクセスの効率化も図っている。
Silvermontでは、Intel Burst 2.0テクノロジーと呼ばれる、動的なパワーマネジメント技術が採用されている。同テクノロジーは、現行のCore iプロセッサーで採用されているIntel Turbo Boostテクノロジと同様のアプローチで、CPUコアとグラフィックスコアが、動的にその電力を融通し合うことで、より高性能かつ効率的な処理を実現するというものだ。また、CPU負荷が高くグラフィックスにあまり負荷がかかっていない状況であれば、ごく短時間、CPUコアのTDPを超えて動作させることも可能という。
もう1つ、Silvermontの重要なポイントとして、Intelの最先端プロセスである22ナノメートル3Dトライゲートプロセスを採用したことが挙げられる。これにより、従来のAtomプロセッサーのコアであるSaltwell(ソルトウェル:32ナノメートルプロセス)に比べ、周波数で1.3倍、同一周波数における消費電力は半分になり、これとマイクロアーキテクチャの大幅な進化が加わったことで、タブレットプラットフォームでは、最大4.7倍、マイクロサーバプラットフォームでは最大5.6倍の性能向上を果たすという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.