次世代タブレットは「Bay Trail-T」でどう変わる?市場投入迫る(2/2 ページ)

» 2013年09月27日 10時34分 公開
[本間文,ITmedia]
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次世代タブレット向けSoC「Bay Trail-T」

 このSilvermontコアを採用した、新しいタブレット向けSoCの“Bay Trail-T”こと「Atom 3000」シリーズは、同コアを4コア構成(2モジュール)で搭載し、第3世代Coreプロセッサー(Ivy Bridge:開発コード名)に搭載されているものと同じ第7世代のIntel HD Graphics機能を統合するなど、大幅な強化が図られた。

 2次キャッシュの容量は4コア構成のSilvermontベースSoCでは最大の2Mバイトで、メモリインタフェースとしては2チャンネルのLPDDR3-1066に加え、DDR3LRS-1333(セルフリフレッシュパワーを低減することで低消費電力と価格の安さを両立した新しいモバイルメモリ)をシングルチャンネルでサポート、タブレットの熱設計や価格などに合わせて選択できるようにしている。

Intel Atom Z3000シリーズの概要(画面=左)。Intel Atom Z3000シリーズのブロックダイヤグラム。丸で囲んである部分が、従来のAtomから大きく強化された部分だ(画面=右)

Clover Trail+こと、従来のAtomプロセッサーとの機能比較(画面=左)。Clover Trail+(CLT+)とBay Trail-T(BYT)ことAtom 3000シリーズのメモリパフォーマンス比較(画面=右)

 同SoCに統合されたIntel HDグラフィックスは、4実行ユニット構成で各ユニットが8命令を同時実行でき、最大32スレッドを処理できる。グラフィックス機能としては、DirectX 11やOpenGL ES 3.0に対応し、グラフィックスコアの最大動作クロックは667MHzに達する。ビデオ関連機能も強化されさており、さまざまなビデオフォーマットの再生に対応するのはもとより、H.264ビデオのフルエンコーディング機能や、HDCP 1.4、同2.1といったコンテンツ保護機能も強化。動画のエンコードをより高速に行なうことができるようになり、タブレットでもプレミアムコンテンツの再生が可能になる。

 Intelは、この強化されたビデオ機能を、PC向けCPUと同様“QuickSync Video”と名付け、iPhone 5でビデオ変換するよりも3倍高速になるとアピールする。このほか、ディスプレイエンジンは2系統の出力を備え、最大2480×1600ピクセル出力もサポートする。

Atom Z3000シリーズのグラフィックス機能の特徴(画面=左)。Atom Z3000シリーズのディスプレイエンジン(画面=右)

Atom Z3000シリーズでは、ビデオ機能も大幅に強化され、iPhone 5との比較でビデオ変換速度は3倍高速になるとアピール

 Atom Z3000シリーズで、Silvermontコアを採用するとともに、Intel純正グラフィックス機能を統合したことで、パワーマネジメント機能も大きく進化した。同社でモバイルデバイス向けSoCの開発を担当するShreekant Thakkar氏(Chief Systems Architect and Intel Fellow, Intel Mobile and Communication Group)は、Atom Z3000シリーズの特徴として、「Intelグラフィックスの採用により、CPUコアとグラフィックスコアがより緊密に電力を融通し合えるようになり、高性能化と省電力性を両立させることができるようになった」と述べ、前述のIntel Burst Technology 2.0の有効性をアピールする。

 同社関係者は、Intelグラフィックスの採用によって、SoC全体のピーク消費電力は従来のAtomプロセッサーよりも上がったが、CPUコアやグラフィックスコアの性能が大幅に向上したことで、同じアプリケーションであれば、処理時間が短縮される分、Atom Z3000シリーズのほうが、バッテリー駆動時間を延ばすことができると説明。IDF 2013の会期中にも同SoCを搭載したリファレンスシステムによるベンチマーク結果なども公開した。

 Intelは「省電力性では、前世代のClover Trail+でARM陣営に追いついた、そしてBay Trail-Tではパフォーマンスで競合に大きな差をつけることができた」(同社関係者)と自信をのぞかせる。

Intel Burst Technology 2.0では、カメラなどほかの機能の余剰電力分も、CPUコアやグラフィックスのオーバークロック動作に割り当てられるという(画面=左)。ARM陣営とのパフォーマンス比較(画面=右)

Intel Atom Z3700ではWindowsとAndroidの両プラットフォームをサポート。いずれのプラットフォームでも優れたパフォーマンスを発揮するとアピール(画面=左)。iPadやTegra 3を採用したMicrosoft Surfaceとのバッテリー駆動時間の比較(画面=右)

Atom Z3770搭載タブレットのリファレンスモデルによるCINEBENCH結果(写真=左)。SunSpider 0.9.1 JavaScript Benchmark実行中の電力消費。上が従来型Atom搭載タブレット、下がAtom Z3770搭載タブレット。処理が早く終わる分、若干ピーク電力が上でも、処理にかかる消費電力は低くなり、バッテリ駆動時間も長くできるとアピールする(写真=右)

ビデオ編集ソフトのパフォーマンス比較。左が従来のAtomプロセッサー(Clover Trail+)を採用したAcerのタブレット、右がAtom Z3770搭載タブレットのリファレンスモデル。進捗状況を示すバーで分かるとおり、圧倒的なパフォーマンス差を見せつけた

SunSpider 0.9.1 JavaScript Benchmarkの結果。左の従来型Atomプロセッサー(Clover Trail+)タブレットが783.5ms、右のAtom Z3770搭載タブレットが339.7msと、倍以上の速さをみせた

 Intelは、このAtom Z3000シリーズを皮切りに、同SoCとダイを共用するノートPC向けの“Bay Trail-M”やデスクトップPC向けの“Bay Trail-D”も年末までに市場投入し、その製品名にAtomブランドではなく、PentiumやCeleronブランドを採用することも明らかにしている。このことは、SilvermontアーキテクチャとIntel HD Graphicsの採用により、省電力プラットフォーム向けのSoCも、性能レベルで大きなジャンプを果たしたとIntelが考えている証左といえる。そして、これらのSoCの投入で、低価格レンジのタブレットやPCの性能レベルを引き上げることにより、x86プラットフォームのコストパフォーマンスの高さをアピールしたい考えのようだ。

Atom Z3000シリーズを採用するタブレット製品群。Acer、ASUSTeK Computer、Dell、HP、Lenovo、LG Electronicsに加え、日本メーカーでは富士通、東芝、シャープが同製品を採用したタブレットを市場投入する計画だ(写真=左)。Bay Trailチップ(写真=右)

Bay Trail-Tと同じく、Silvermontコアを採用する次期スマートフォン向けSoC“Merryfield”のリファレンスモデル。同社製LTEチップを搭載し、4G(LTE)接続もサポートされる

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