このSilvermontコアを採用した、新しいタブレット向けSoCの“Bay Trail-T”こと「Atom 3000」シリーズは、同コアを4コア構成(2モジュール)で搭載し、第3世代Coreプロセッサー(Ivy Bridge:開発コード名)に搭載されているものと同じ第7世代のIntel HD Graphics機能を統合するなど、大幅な強化が図られた。
2次キャッシュの容量は4コア構成のSilvermontベースSoCでは最大の2Mバイトで、メモリインタフェースとしては2チャンネルのLPDDR3-1066に加え、DDR3LRS-1333(セルフリフレッシュパワーを低減することで低消費電力と価格の安さを両立した新しいモバイルメモリ)をシングルチャンネルでサポート、タブレットの熱設計や価格などに合わせて選択できるようにしている。
同SoCに統合されたIntel HDグラフィックスは、4実行ユニット構成で各ユニットが8命令を同時実行でき、最大32スレッドを処理できる。グラフィックス機能としては、DirectX 11やOpenGL ES 3.0に対応し、グラフィックスコアの最大動作クロックは667MHzに達する。ビデオ関連機能も強化されさており、さまざまなビデオフォーマットの再生に対応するのはもとより、H.264ビデオのフルエンコーディング機能や、HDCP 1.4、同2.1といったコンテンツ保護機能も強化。動画のエンコードをより高速に行なうことができるようになり、タブレットでもプレミアムコンテンツの再生が可能になる。
Intelは、この強化されたビデオ機能を、PC向けCPUと同様“QuickSync Video”と名付け、iPhone 5でビデオ変換するよりも3倍高速になるとアピールする。このほか、ディスプレイエンジンは2系統の出力を備え、最大2480×1600ピクセル出力もサポートする。
Atom Z3000シリーズで、Silvermontコアを採用するとともに、Intel純正グラフィックス機能を統合したことで、パワーマネジメント機能も大きく進化した。同社でモバイルデバイス向けSoCの開発を担当するShreekant Thakkar氏(Chief Systems Architect and Intel Fellow, Intel Mobile and Communication Group)は、Atom Z3000シリーズの特徴として、「Intelグラフィックスの採用により、CPUコアとグラフィックスコアがより緊密に電力を融通し合えるようになり、高性能化と省電力性を両立させることができるようになった」と述べ、前述のIntel Burst Technology 2.0の有効性をアピールする。
同社関係者は、Intelグラフィックスの採用によって、SoC全体のピーク消費電力は従来のAtomプロセッサーよりも上がったが、CPUコアやグラフィックスコアの性能が大幅に向上したことで、同じアプリケーションであれば、処理時間が短縮される分、Atom Z3000シリーズのほうが、バッテリー駆動時間を延ばすことができると説明。IDF 2013の会期中にも同SoCを搭載したリファレンスシステムによるベンチマーク結果なども公開した。
Intelは「省電力性では、前世代のClover Trail+でARM陣営に追いついた、そしてBay Trail-Tではパフォーマンスで競合に大きな差をつけることができた」(同社関係者)と自信をのぞかせる。
Intelは、このAtom Z3000シリーズを皮切りに、同SoCとダイを共用するノートPC向けの“Bay Trail-M”やデスクトップPC向けの“Bay Trail-D”も年末までに市場投入し、その製品名にAtomブランドではなく、PentiumやCeleronブランドを採用することも明らかにしている。このことは、SilvermontアーキテクチャとIntel HD Graphicsの採用により、省電力プラットフォーム向けのSoCも、性能レベルで大きなジャンプを果たしたとIntelが考えている証左といえる。そして、これらのSoCの投入で、低価格レンジのタブレットやPCの性能レベルを引き上げることにより、x86プラットフォームのコストパフォーマンスの高さをアピールしたい考えのようだ。
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