インテルは、11月27日に開発コード名“Bay Trail”世代のAtomに関するアーキテクチャ概要と、搭載するタブレットの展開を紹介する説明会を行った。この中で、インテル モバイル&コミュニケーションズ事業部 カスタマー・テクノロジー・ソリューションプラットフォーム・ハードウェア・エンジニアの平井友和氏が、「Intel Dynamic Platform Thermal Framework」(Intle DPTF)の概要を説明した。
Intel DPTFは、Bay Trail世代のAtomに導入した電力管理技術で、システム各部の温度をセンサーで検知し、事前に用意した変数に従って消費電力やシステム設定をリアルタイムで変更する。Bay Trail世代のAtomを搭載する軽量薄型のタブレットでは、ファンを使った放熱ができないため、高クロックでかつマルチコアのプロセッサを搭載するとボディ内部が高温になってしまう。Intel DPTFは、高い処理能力を発揮するプロセッサを搭載したボディ内部でも温度上昇を抑えるためにインテルが用意した技術だ。
Intel DPTFでは、ボディ内部の各部に用意した複数の温度センサーと消費電力センサーの情報をリアルタイムで収集し、その状況に合わせて各部コントローラの挙動や動作クロックを変更することで、処理性能を確保しつつ、発生する熱を抑えることを目的としている。温度や消費電力に合わせたシステムの制御は、Intel DPTFに用意したパラメータに従って行う。この仕組みで「急速充電を優先するとチャージコントローラが高温になって、その影響でプロセッサの動作クロックが下がってしまうが、充電の優先順位を下げるようにパラメータを設定して充電時間が長くなる代わりに、プロセッサの処理能力を優先することも可能になる」(平井氏)という。
さらに、このパラメータの設定を、製品ごとに異なるハードウェア構成やボディ形状と材質などを考慮して、最適な制御をタブレットメーカーが独自に行えるだけでなく、「最近のWindows 8.1導入の8インチディスプレイ搭載タブレットでは、ある特定のフラッシュゲームに注目しているようですが」(平井氏)といったような、ユーザーの利用動向の変化に合わせて、パラメータをオンラインアップデートなどで随時変更できるのもIntel DPTFの特徴として平井氏は説明している。
平井氏は、手に持って使うタブレットも、ドッキングステーションに接続したときは手で持つことがないので、この状態では設定を切り替えて熱くなっても処理能力を優先したり、ボディの素材の違いで、タッチ操作で触れることになるディスプレイでガラスパネルを使っている場合は40度を超えるとユーザーが熱く感じたり、金属素材の削りだしを用いたボディでは熱の拡散が早いため、低温でも熱く感じたりするので、その場所だけ発熱しないように抑制するといったケースを設定最適化の理由として挙げている。「ほかのタブレット搭載プロセッサと比べて、より細かい制御が可能だ」(平井氏)
なお、Intel DPTFで設定するパラメータの種類や設定方法、ガイドラインなどは非公開で、インテルとNDAを結んだメーカーにのみ提供する。また、パラメータの設定について、ハードウェア構成やボディレイアウトなどの情報をインテルと共有することで、インテルから技術的な助言や最適化に必要な開発ツールの提供、さらには、ディスカッションといったサポートもNDA締結メーカーは受けることができるという。
平井氏はユーザーに向けて、Intel DPTF関連のモジュールやプロセスがデバイスマネージャーやタスクマネージャーなどに表示されるが、それを無効にしないようにアドバイスしている。ただし、ユーザー側でIntel PDTFの設定にアクセスすることはできない。また、Intel DPTFはAndroid OSでも利用することが可能で、この場合、モジュール名称やプロセス名称はWindows OSの場合と異なると平井氏は説明している。
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