ソニー「苦渋の決断」 平井社長が話したPC事業とテレビ事業

» 2014年02月06日 21時42分 公開
[園部修,ITmedia]
Kazuo_Hirai ソニーの代表執行役社長兼CEO、平井和夫氏

 ソニーが2月6日、日本産業パートナーズ(JIP)と、PC事業の譲渡に関する意向確認書を締結したことを明らかにした。PC事業のさらなる精査と協議の後、2014年3月末までに正式契約を結ぶという。JIPは、先日NECビッグローブの全株式を取得した投資ファンドとして話題になったばかり。

 同日開催されたソニーの2014年3月期第3四半期決算の会見に登壇した平井一夫社長は「VAIOは常にソニーらしい、普通のPCとは違うデザイン、機能、形態によってPC市場に一石を投じてきたブランド。商品としてソニーに大きな貢献があったと思う。またサプライチェーンのオペレーション効率化などにも役割を果たした。社員、関係者の努力と貢献があったことを考えると苦渋の決断だった」と話した。

 第3四半期の決算自体は、デバイス分野をのぞくエレクトロニクス4分野の業績改善と金融分野の好調などにより、前年同期比で大幅な増収増益を達成した。ただし、通期の連結営業利益は、減損と評価損を計上したことなどにより、2013年10月に発表した見通しを下方修正している。当期純損益は赤字になる見込みだ。

 平井氏は「エレクトロニクス事業を取り巻く経営環境は今後も厳しく推移する。PCとテレビの今期黒字化は困難と判断し、将来を見据えたエレクトロニクス事業の成長を加速するためのさらなる構造改革を実施する」と話し、成長が見込めるイメージング、ゲーム、モバイルというコアの3事業に経営資源を集中させ、PC事業の収束とテレビ事業の分社化を行うと説明した。

PC事業は日本産業パートナーズに譲渡

 「VAIO」のブランドでファンも多いPC事業は、前述のとおりJIPが設立する新会社に事業譲渡する。新会社の設立当初は、商品構成を見直した上で、適切な事業規模で日本を中心にコンシューマーおよび法人向けPCを適切な販路を通じて販売するという。ソニーでは、PC製品の企画、設計、開発を終了し、製造、販売についても各国で発売する2014年春モデルを最後に事業を収束する。VAIOを販売した顧客へのアフターサービスは継続する。

 JIPが設立する新会社は、長野県安曇野市豊科に拠点を設ける予定。ここは、ソニーイーエムシーエスの工場「長野テクノロジーサイト」がある場所で、日本国内ではVAIOの開発から製造までを担う唯一の拠点であることから、“VAIOの里”などとも呼ばれている。

 この新会社が、VAIOブランドのPCの企画/設計/開発/製造/販売のすべてを担当することになる。現業務執行役員SVP VAIO&Mobile事業部 本部長の赤羽良介氏はこちらに移る模様だ。なお、新会社の立ちあげと円滑な事業移行のため、ソニーも新会社に5%出資する。

 ソニーでPC事業に携わる社員はおよそ1100人ほどいるが、およそ250〜300人程度が新会社に移る見込み。またソニーグループ内の他の事業部門への配置転換も行うほか、異動が困難な社員には早期退職支援プログラムなども用意する。

 「ソニーのPC事業は終了するが、JIPのもとでVAIO事業を再生し、VAIOをご愛顧いただいている顧客の期待に応えてくれると期待している。VAIOを通じて培った特徴ある製品作りとオペレーションの経験はソニーの製品作りに生かしていく」(平井氏)

 なお、PCのブランドとしてのVAIOは新会社に引き継がれるが、ソニーとしてVAIOのブランドを使わなくなるのかどうかは、現時点ではまだ決まっておらず、新会社とも協議しながら、継続して検討していくという。また「Microsoftとの関係は維持するのか」という質問に対して平井氏は「PC事業が別会社になるという点では、Windowsを搭載する製品は新会社に移ることになるが、その後MSのOSを使った商品をどうするかは、ソニーの戦略としてどうしていくか考える」と答え、なくなるとも続けるとも明言はしなかった。

 海外でのPC事業について平井氏は、「海外展開についてはJIPが決めることだが」と前置きしながら「当初は日本国内からスタートすることになるだろう」と話した。

テレビ事業は分社化、2015年3月期での黒字化を目指す

 テレビ事業は、当初目標としていた2014年3月期での黒字化は達成できなかったものの、損失は250億円程度まで圧縮できる見込み。2年間の取り組みの結果、高付加価値化へのシフトが進み、テレビ事業再生への道筋は見えており、2015年3月期以降は安定的な収益が出せる体制を構築できるという。

 事業が好転しており、市場でのシェアも確保できていることから、テレビ事業は商品ラインアップの強化、高付加価値商品の販売構成比向上、地域ごとの市場ニーズに適した機種の企画・導入、費用の削減と規模の最適化などを実施する計画だ。なお、経営のスピードアップなどを目的として、2014年7月をめどにテレビ事業は分社化するという。

 分社化する意味を問われた平井氏は、ソニーモバイルコミュニケーションズがXperiaブランドでスマートフォンやタブレットを展開し、ソニー・コンピュータエンタテインメントがプレイステーション事業を担当していることを例に挙げ、「どちらもスピーディーにいろいろな判断をして経営をしている。これをテレビビジネスにも持ち込みたい。会社は違うがマネジメントは一丸となってやっている。テレビも子会社化するが、One Sonyのスピリットの中でビジネスをしてもらう」と、経営のスピードアップが目的であることを強調し、事業売却の可能性は将来的なオプションは常に検討しているものの、「現時点ではない」と否定した。

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