「VAIO」と「Mac」週末アップルPickUp!

» 2014年02月09日 14時44分 公開
[青山一丁目りんご園,ITmedia]
VAIO Z 15周年記念限定カラーモデルの背面。「15th ANNIVERSARY COLLECTOR'S EDITION」の後に、VAIOノートの生産拠点である「MADE IN AZUMINO, JAPAN」の文字が刻印されている

 今週PC業界を騒がせた話題といえば、やはりソニーのPC事業、「VAIO」売却でしょう。ソニー製ノートPCの天板に光るルミナスミラーロゴには、今現在もVAIOが特別な製品なのだと思わせるだけのブランド力があります。ソニーファンでなくても、今回のPC事業譲渡にショックを受けた人は多かったかもしれません。

 さて、アップル連載らしくMacにまつわるVAIOの話をすると、Macworld Expo 2008の基調講演で、スティーブ・ジョブズが初代MacBook Airを発表した際、その比較に「VAIO TZ」を引き合いに出したことを覚えている方もいるでしょう。本田雅一氏が「ソニーから分離で『VAIO』の魂は失われてしまうのか」という記事で、

 VAIOがAppleのコンピュータと極めて近いコンセプトで作られていると見える読者もいるかもしれないが、むしろ、VAIOが目指していたコンセプトをAppleがキャッチアップし、独自に磨き込んだという方が正しいだろう。

と指摘しているように、先に挙げたMacBook Airもその源流には、薄型ノートPCの傑作機「VAIO NOTE 505 EXTREME」、さらにさかのぼれば初代「VAIO NOTE 505」(1997年)があります。

 MacBook Airの登場以降、各社がこぞって参入したUltrabook市場は“Airクローン”とも言える薄型ノートPCであふれかえり、そうした製品を指して「Airみたい」「しょせんアップルのマネ」と揶揄(やゆ)するコメントを目にする機会が増えました。古くからソニー製品に親しんできた人たちは、こうした言葉がVAIO製品にさえ向けられることを苦々しく思っていたのではないでしょうか。「ただの無知」と一笑に付すには、ノートPC市場におけるMacの影響力は大きくなりすぎていましたし……。ここ最近は「VAIO Pro」をはじめ魅力的なノートPCが増えていた矢先だっただけに、ソニーの手からVAIOが離れたことは残念です。

 そんなことをぼんやり考えていたら、PC USERでもおなじみの林信行氏が、自身のブログで興味深いエントリーをポストしていました(The tales of Steve Jobs & Japan #02: casual friendship with Sony)。

 1997年、ジョブズがアップルに復帰して、破滅寸前の会社から奇跡の復活を遂げるまで、まずはじめに手をつけたのがMac互換機ビジネスをやめること。しかし、ソニーのVAIOだけは例外と考えていたようで、ソニーの幹部たちが2001年の新年を祝うゴルフコンペをした際に、ジョブズとアップル幹部が、Mac OSで動作するVAIOを手に最終コースで待っていた、という安藤国威元社長が語った逸話を紹介しています。もちろん、みなさんもご存じの通り、この話が実現することはなかったのですが。もし、Mac OS Xが載ったVAIOの道があったなら(あるいはMac互換VAIOの存在する平行世界では)、結末はまた違ったものになったのかもしれませんね。

 と、林信行氏にブログ紹介の話を伝えたところ、“二言”コメントをもらいました(1回の息継ぎでこれだけ出力してくるなんて、林さんの息はどれだけ長いんだろう……)。

 Macは、ユーザーの能力を伸ばす自転車のような存在なので、パソコン側の個性は使わない時の姿(例えば持ち歩くときの姿や本体の裏側)では主張するけれど、使う時にはパソコンとしての個性を消すアプローチのパソコン。

 これに対して、VAIOは本体が鮮やかな色だったり、超小型だったり、大きなカメラと一体型だったりと強い個性を放つ機種がたくさんあり、Macユーザーの中には、こういった個性的なVAIOに惹かれる人もかなり多かった。

 実際、1998年にコンパクト型のVAIO C1が出た当時は、これに旧Mac OS(今のMac OS Xではない)のエミュレーターを入れて使っている人をMac関係のイベントでも大勢見かけるようになった。

 VAIOの一部機種は映像の取り扱いに注力し際立ったハード的特徴(カメラの内蔵など)を持っていたが、もし、それらの機種で元々映像編集ソフトが充実していたMac OSが利用できていたら、その部分でも大きな違いが生まれたかもしれない。

 私は六本木ライブラリーという六本木ヒルズ内の会員制施設をよく使っているが、ここには見晴らしのいいカフェエリアと、シーンと静まり返ったスタディエリアがある。最近は少しその傾向が崩れつつあるが、出来た当時は、見晴らしがいいカフェ側で仕事をしている人はMac(当時はMacBookではなく、PowerBookやiBook)ユーザーとVAIOユーザーの比率が圧倒的に高く、スタディエリアはThinkPadかLet'snoteユーザーばかりと、キッパリと傾向が分かれていた。

 それくらいにこれら4ブランドは、パソコン全体の中でも個性が際立っていた。そして、その中でもMacとVAIOのユーザーは傾向が近かったんじゃないかと思う。

 今回、私が書いた1本のブログ記事が、まずはthe Vergeという英語圏で大きな注目を集めるブログに紹介され、それが世界中のIT系ブログに翻訳され、引用されまくった(確認しているだけでも3桁台のブログに記事が載っている)。Twitterで「Steve Jobs VAIO」で検索をすると、英語はもちろん、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、トルコ語、アラビア語、ギリシャ語などあらゆる言葉でこの話題が出てきており、昨日、当たりから私のブログ記事を元にした英語記事の日本語翻訳まで話題になり始めている。

 一体、どれくらいたくさんのツイートが流れているか分からないが、この話題が出る前のジョブズとVAIOの話題と言えば、1〜2年前のツイートいくつか、その前はジョブズ逝去の前後のものまでさかのぼる。

 そういう意味では、世界中に話題を振りまいた私のブログ記事だが、これはずっと書こう書こうと思っていたものを、ようやく形にしたものだ。

 私は日本の媒体ではたくさん記事を書いてきたし、日本語の本もたくさん記事を書いてきたが、中身では決して海外の媒体の記事に負けない自負は持っていた。一昨年、あるイベントでガンホー創業者の孫泰蔵さんに「Nobiさん(私のこと)のスティーブ・ジョブズの本は絶対に英語に翻訳すべき。あれは海外の本に絶対に負けていない」と言って背中を押してもらって以来、なおさら自分の記事を英語圏で出したいと思っていた。

 できれば昨年中、できれば1月中と延ばし延ばしにしてしまっていたが、2月3日、ついにすべての仕事を一度ストップし、辛抱たまらず、まずはアルプス電気とスティーブ・ジョブズの関係をブログ記事につづった(The tales of Steve Jobs & Japan #01: Mr.Floppy disk)。この記事は英語圏でそこそこ反響があった。そしてこの勢いを落とさないようにと、さっそく次のソニー元社長、安藤さんの記事に取りかかった。

 下書き状態の記事を何度か書き直している間に、ソニーがVAIO事業を売却する話がネットに流れてきたのはまったくの偶然のタイミングだったが、そのことを記事の最後にいれたところ、今回の事態になった。iPadの活用事例でも、3Dプリンタの利用の事例を見ていても、日本には世界に誇れるものがまだまだたくさんあると思う。

 今回、私に起きたことをきっかけに、少しでも日本の中だけでなく、世界に目を向けてくれる若者が増えたらうれしく思う。

「クロコダイル革の手触りがユニークな「VAIO P」レアモデル。常に新しいことに貪欲(どんよく)にチャレンジし続けてきたVAIOの足跡の1つ。これは工業製品の手触りに革命を巻き起こすd3 textureという技術がある(ケイズデザインラボの技術)。この技術がまだ初期段階のときに、それを真っ先に採用したのがSONYのVAIOだった」(林信行氏より)

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