次は測色器を用いて、ThinkVision Pro2840m Wideの表示精度についてチェックしよう。ここではエックスライトのカラーマネジメントツール「i1 Pro」と「i1 Profiler」を使用して、ガンマ特性と色域を調べる。
プリセットのカラーモードは4種類から選べるが、今回は工場出荷状態に戻した場合の初期設定である「赤い」モードと、業界標準のカラースペースとなる「sRGB」モードの2つのモードを選択した。手動による画質調整は一切行わず、固定の色域、固定の輝度のままで測定している。
まずはガンマ特性だが、入力と出力は1:1の関係が望ましい。ガンマ補正結果のグラフを見ると、「赤み」モードは各色がやや蛇行をしながらも、どうにか黒から中間階調、白までを再現している様子だ。「sRGB」モードも傾向としては「赤い」モードと似ているが、ハイライト域でグラフが切れており、白飛びが生じてしまった。
暗部を少し持ち上げ、明部を少し抑えるガンマ補正結果は、元がややS字に近いコントラスト重視のガンマカーブを描いていることを意味する。メーカーによる画作りの味付けと思われるが、青が中間階調で離れ気味で、色や階調の再現性がよいとはいえない。
色域の検証では、Mac OS XのColorSyncユーティリティを用いて、先に作成したICCプロファイルを色度図に展開した。カラーの部分がThinkVision Pro2840m Wideの色域で、薄いグレーのフレームがsRGB規格の色域となる。2つのモードの色域はほとんど変わらず、sRGBの領域からは少々ズレているものの、範囲自体はsRGB相当といってよいだろう。
色再現性について、目視の印象も述べておこう。最も気になったのは、やはり視野角だ。テストは50〜60センチほどの視聴距離で行ったが、正面から見て、画面端にかけてのコントラスト低下や色の変化ははっきり分かる。テストでは粗が目立ちやすいグレーの単色を表示していたこともあり、一般的な用途では軽減されるが、大画面のTNパネルは視野角の狭さを感じやすい点は覚えておくべきだ。ここは低価格とのトレードオフになる。
一方、輝度や色のムラ、ギラつきに関してはさほど気にならずに使用できた。記事の前半でも述べたが、28型で4Kの大画面・高精細グレアパネルは、写真や動画を少し離れた場所から眺めると精細感とコントラスト感があり見栄えがよい。
冒頭で述べた通り、ThinkVision Pro2840m WideはP2815Qと並ぶエントリークラスの4Kディスプレイだが、方向性はかなり異なる。レノボはこれをビジネス向けとしているが、60Hz対応でグレアパネルという特性を考慮すれば、どちらかといえばコンシューマー、それもマルチメディア寄りの仕様だろう。
動画を扱うのに安価な4Kディスプレイを探しているような方にとっては、この仕様でWeb直販価格7万7760円(税込)という価格が魅力的に映るはずだ。
メーカーが意図するターゲットはともあれ、求めやすい価格帯でキャラクターが異なる4Kディスプレイのバリエーションが増えることは、幅広いユーザーにとって喜ばしいことには違いない。今後もより多くの製品が続々と登場し、PC向け4Kディスプレイ市場が盛り上がることも期待できる。
もっとも、ThinkVision Pro2840m Wideの根本的な評価はP2815Qと変わらず、「4Kディスプレイとしては非常に低価格であるがゆえに、高精細表示を除く画質はあまり期待できない」というものだ。この点を4Kへの憧憬(しょうけい)が上回るかどうかがで判断していただきたい。
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