静岡県磐田市にあるヤマハの豊岡工場は、1970年の設立から44年の歴史を数える同社の生産拠点の1つだ。もともと管楽器の製造を主としていたが、現在は弦楽器や打楽器、電子楽器、音響機器といったさまざまなジャンルの製品を扱うとともに、音に関する研究や開発まで行う一大拠点としてヤマハを支えている。いわば総合楽器メーカーであるヤマハの“音作り”の総本山といっていい。
また、オーディオ用アンプICやDSPといった半導体事業、オーディオ信号処理技術など、音・音楽に関することであればなんでも、幅広い技術開発を行っている。PC USERの読者であればご存じの通り、同社が開発した歌声合成技術である「VOCALOID」はあまりにも有名だ。
さて、今回そのヤマハ豊岡工場で、NEC製PCに搭載されたサウンドシステムに関するメディア向け説明会が開催された。NECは2009年(秋冬モデル)からヤマハと共同でオーディオ機能を開発し、搭載モデルのラインアップを拡大してきた。
具体的には、一体型デスクトップPCの「VALUESTAR W」(2009年)シリーズにSR-Bass対応の2.1チャンネルサウンドシステムを搭載したのを皮切りに、FR-Port対応スピーカーを搭載した「VALUESTAR N」(2010年)や「LaVie L」(2011年)、磁性流体を用いた2WAYスピーカーを備える「VALUESTAR N」(2013年)などを投入し、年々その技術を発展させている。
このように、NEC製PCに搭載されるヤマハ製スピーカーは、年々改良が施されている。そして2014年の夏モデルでは、DSP機能をソフトウェア化した「Audio Engine」を搭載したのがトピックだ。
これによって、例えばPC本体とスピーカーの位置による反射や回折によって、音が耳に届くまでに高域が失われたり、音がそろわなくなるといった現象をソフトウェアでリアルタイムに補正できるようになる。実際に「VALUESTAR N」で体験してみたところ、本体下部についたスピーカーの音が、位相や遅延を効果的に補正して、あたかもPC正面から鳴っているように聞こえた。
このほか、これまで同社が培ってきたコンサートホール設計の技術を用いたサラウンド効果や、脳の錯覚を利用して、実際には再生されていない低域音を認識させるとユニークな高音質化を実現している。
これまでPCの新製品リリースでは、新デザインへの言及やCPU性能といったスペック面での強化を詳しく説明することはあっても、ことサウンドについては一言「音質強化」とのみ触れられるにとどまり、具体的な内容は分からないことが多かった。しかし、今回実際に、共同開発を行っているヤマハの技術者を訪ね、音質の違いを体験してみると、「お客さまによりよい音を提供したい」と語る両社の熱意を強く感じた。NECのPCはこれからも豊かなサウンドでユーザーを楽しませてくれるはずだ。
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