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» 2014年09月10日 14時00分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:「Apple Watch」はこれまでのスマートウォッチと何が違うのか? (3/3)

[本田雅一,ITmedia]
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正常進化の「iPhone 6」ファミリー

 編集部からはiPhone 6/6 Plusの感想も求められたのだが、実はさほど大きな印象はない。あらかじめ多くの情報が出回っていたこともあるが、iPhoneとiOS、それにiTunesを取り巻くシステムの完成度・洗練度が高いため、各部をより磨き上げるしかないのだろう、と察している。

 アップルのことだから、ただ単に画面が大きくなっただけではないだろうと思っていたが、きちんと片手でも使いやすいよう配慮した画面モードも持っている。当然のごとく高性能化され、バッテリー容量も増えているものの、iPhone 6/6 Plusのインパクトが強くないのは、ハイエンドのAndroidスマートフォンが、スペック面で先行しているからにほかならない。

iPhone 6/6 Plusは、ホームボタンに2回タッチするだけで、画面全体が親指の方向に降りてくるなど、大画面化しても片手で操作しやすいよう配慮されている

 しかし、次の2点については着実な進歩を感じている。

 1つは携帯電話としての本質部分だ。これまでアップルは可能な限りモデル数を減らしていたが、LTEの時代にはそれも限界がある。LTE向けに使われている周波数は、地域ごと、キャリアごとにバラバラで、少ないモデル数では対処するのが難しい。

 それでもマルチバンド化の技術は進んできているが、昨今はさらに事情が複雑化している。複数の周波数帯での通信を束ねて高速化する「キャリアアグリゲーション」という技術が使われるようになり、一部の周波数帯に対応しているだけでは、世の中の通信速度に置いて行かれる状況になってきたためだ。

 しかし、iPhone 6/6 PlusはLTEのキャリアアグリゲーションに対応し、最大150Mbpsでの通信が可能になり、さらに200もの携帯電話キャリアにも対応しているという。日本では3つの携帯電話キャリアすべてに対応しているようだ。現在は2周波数帯のキャリアアグリゲーションだが、これがもっと多くの周波数を束ねるようになったとき、アップルはどう対応していくのだろうか? という疑問は残るが、現時点のハードルはクリアしたと思う。

 もう1つは各種センサーの履歴管理についてだ。というと、なんだか地味に感じるかもしれないが、アップルは昨年からセンサーが検出するデータの履歴を省電力に記録、管理する専用プロセッサを内蔵している。昨年は「M7」と呼ばれ、今年は「M8」と数字が1つ上がったが、これまで活用しきれていなかった部分だけに何らかの変化があるのではと考えていた。

 これはモーションコプロセッサというもので、M7では加速度センサー、ジャイロスコープ、コンパスのデータを検出、記録していたが、さらに移動距離の記録とともに、気圧変化による上下運動も検出可能となった。

 つまりスマートフォンを持ち歩くだけで、一部のウェアラブルデバイスが記録している活動量計のような情報を記録できるのだ。iPhone 6/6 Plusに合わせて開発された基本ソフトのiOS 8には「健康(Health)」というアプリケーションが用意され、健康データ管理を行えるほか、オンラインの各種ヘルスケアサービスと直結できるようになっている。このHealthで、M8が記録される活動データを活用するという。

 ちなみに同様の専用プロセッサはサムスン製品も搭載しており、同じくヘルスケアやフィットネスでの活用について言及しているが、まだ商品力へとつなげることはできていないだけに、アップルとしてはチャンスではないだろうか。

新たに気圧計を内蔵し、登った階段の高さや登山での高低差なども計測可能になった。加速度、ジャイロスコープといったセンサー類も健在だ

 一方、NFCの内蔵に関しては、どこまで競争力になるかは分からない。特に日本でどのように使われるかは未知数だ。

 これまでアップルは、たびたびNFCの搭載を検討してきた。あちこちから電波干渉を防止するフィルム素材などを取り寄せ、試作を何度か行っていたが、結局は採用してこなかった。1つには金属で覆われるデザインとの相性の悪さもあったが、今回はアップルのロゴマークにNFCアンテナを仕込んだようだ。

 アップルがNFCの最も典型的なアプリケーションとして選んだのは、クレジットカード決済の「Apple Pay」。iPhoneのカメラでクレジットカードを撮影し、それをPassbookに登録しておくと、クレジットカード決済に必要な情報を認識し、対応NFC端末のある店舗で支払いができる。

 アメリカン・エキスプレス、VISA、マスターカードが対応し、全米22万カ所で利用が可能なほか、オンラインショッピングでの利用も可能とのことだが、とりわけ日本での展開についてはまだ分かっていない。

アップルのモバイル決済サービス「Apple Pay」。クレジットカード情報を暗号化してiPhone 6/6 Plusに保存し、店頭の専用端末にかざしてから、Touch IDで指紋を認証させることで支払いが行える。米国で10月から利用可能だ

 さて、iPhone 6は新たなるイノベーションの幕を下ろす歴史的な製品になるのだろうか? 確かに素晴しい製品であるうえ、iOSとiPhone、それにiTunesが創り出す世界観に、グーグルはまだ追いついていない。しかし、感覚的にその差はかなり縮まっているというのが、単体製品としてのiPhone 6/6 Plusの発表を見ての偽らざる感想だ。

 しかし、Apple Watchはいくつか問題はあるものの、これまでスマートウォッチが抱えていた問題を解決し、今後この分野のリファレンスとなる製品に仕上がっている。

iPhone 6とApple Watch。Apple Watchは、後に語り継がれるような製品に成長できるだろうか
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