2015年に発売された製品の中から、PC USER編集部が最も注目した一品を取り上げるアワード企画。タブレット部門の“ベストチョイス”には、協議の末、2製品を選んだ。「ベストなのに2製品?」と思われるかもしれないが、それぞれ違ったアプローチからタブレットの進化を促した新モデルとして、甲乙をつけがたく、このような結果となった。
1つ目の製品は、Microsoftの12.3型タブレットPC「Surface Pro 4」だ。
かなり昔からタブレットPCに取り組んでいながら、iPad以後のタブレット市場でApple(iOS)とGoogle(Android)に出遅れてしまったMicrosoft。挽回のための戦略は、タブレットとしても、ノートPCとしても使えるWindowsベースの「2in1」で差異化を図り、PC業界標準の地位にあるWindowsの強みを発揮しつつ、隣接するタブレットの領域でもシェアを奪うというものだった。
その戦略を具現化したOSが2012年にリリースしたWindows 8だったが、タブレット用OSとしても、PC用OSとしても、中途半端に陥ってしまった感は否めない。事実、Windowsタブレット市場は期待ほど伸びず、法人ユーザーがWindows 7からの乗り換えを見送るなど、PC市場の停滞を招いてしまう。この停滞が、今日の日本におけるPCメーカーの苦戦と再編に通じる一因と言えるだろう。
Microsoftはこの反省を踏まえ、2015年7月29日に一般公開したWindows 10においてユーザーインタフェースを刷新した。Windows 7以前の伝統的なスタートメニューを完全に復活させつつ、Windows 8以降のタイル型スタートメニューをそこに融合、さらに2in1デバイスではタブレットモードとノートPCモード(デスクトップモード)でスムーズに操作画面を切り替えられる新機能「Continuum(コンティニュアム)」も搭載したのだ。
11月12日に国内で発売されたSurface Pro 4は、このWindows 10に最適化したタブレットPCとして登場し、Continuumによる利用スタイルに応じたユーザーインタフェースの自然な切り替え、これまたWindows 10の新機能である「Windows Hello」による手軽かつセキュアな顔認証によるログオンなど、2in1としての使い勝手が向上している。
もちろん、Surface Proシリーズの4世代目ということでハードウェアも進化した。第6世代Core(開発コード名:Skylake)、高速なPCI Express SSD、少し大きくなり高精細化した12.3型ディスプレイ、筆圧検知が1024段階に向上したSurfaceペン、よりノートPCのキーボードに近づいたType Cover(画面保護カバー兼キーボード)など、好評だったSurface Pro 3をさらに改善して完成度を高めている。
MicrosoftがSurface Proで狙ったタブレットとノートPCのイイトコ取りは、Windows 8/8.1世代ではややチグハグな印象もあった。しかし、Surface Pro 4ではハードウェアの進化とOSの世代交代により、その理想がかなりカタチになってきた実感が得られる。
死角をかなりつぶしてきたSurface Pro 4だが、タブレットとして見た場合に注意しなければならないのが、アプリの問題だ。Surface Pro 4はPCなので既存のx86/x64用Windowsデスクトップアプリをフル活用できる半面、iOSやAndroidといったモバイルOSで人気のアプリがWindows用に提供されていない場合も少なくない。
この辺りは、スマホ版のWindows 10であるWindows 10 Mobileが今後どれだけ普及するか、それに伴ってタブレットやPCでも最適に動作するというユニバーサルアプリ(UWPアプリ)がどれだけ登場してくるのか――つまり、Windows 10の成功によるアプリストアの挽回にかかってくるだろう。
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