Microsoftが放つAR HMD「HoloLens」開発キットの気になる中身鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2016年03月04日 13時30分 公開

ついにプレオーダーが始まった「HoloLens」開発キット

 世間ではVR(仮想現実)対応のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が盛り上がりつつあるが、Microsoftが注力しているHMDはAR(拡張現実)対応の「HoloLens」だ。

 HoloLensはVR HMDと異なり、外の様子が見えるシースルー型のスクリーンを採用し、現実の風景に3D映像やUIを重ねて表示した世界(同社は「Mixed Reality:複合現実」と呼ぶ)を体験できる。ゲームやエンターテインメント、ソーシャルメディア、医療、建築、モノ作り、航空宇宙など、その応用分野は幅広い。

HoloLens Mixed Reality(複合現実)を実現するHoloLensの利用イメージ

 Microsoftは2月29日(米国時間)、ついにHoloLensの開発者向けキットとなる「HoloLens Development Edition」の事前注文を開始し、3月30日に出荷することを発表した。ちょうどMicrosoftの年次開発者会議「Build 2016」の開幕初日に出荷ということで、HoloLensは同イベントの主役の1つとなるだろう。

Development Edition プレオーダーが始まった「HoloLens Development Edition」。出荷は3月30日から

出荷は3月30日からだが、提供地域や台数は限られている

 これまでの動向を振り返ると、2015年10月にHoloLens用アプリの開発キットとして「HoloLens Development Edition」が発表され、同キットの入手に必要な事前申請の受け付けが始まったが、この時点では「米国またはカナダ在住の開発者が対象」「申請1件につき入手可能なキットは2台まで」「1台につき3000米ドル」といった基本的な情報以外は不明だった。

 しかし、今回の日程発表とともにHoloLens Development Editionの技術情報やハードウェアの詳細が公開されている。

 まず入手に関する話だが、基本的には開発キットを入手してMicrosoftや他の開発者とともにHoloLensプラットフォームを構築していくというデバイスの性質上、Windows Insider Programに参加してのフィードバック提供が求められている。ただし、前述のように現在は米国とカナダ内の開発者のみが対象で、言語も英語のみとなっており、当面は限られた範囲での開発者ネットワークになりそうだ。

 また注意点としては、事前に申請を行い、これが認められたときに初めて事前注文が可能になるという2段階のステップを踏んでいる点が挙げられる。Microsoftによれば、2〜3カ月周期でHoloLens Development Editionの出荷が行われ、3月30日の出荷分は最初期に事前申請が認められた開発者が対象になるという。その後、申請が認められた順に招待状が送付され、順次送付対象を拡大していく。申請の受理は先着順ではなく、Microsoftが選んで対象を適時判断しているものと考えられる。

 前述のようにHoloLens Development Editionは台数が限られているうえ、開発対象となるジャンルや内容を判断したうえで、適時優先順位を変えることもあるだろう。取りあえず「Wave 1」と呼ばれる最初の出荷サイクルに選ばれた開発者は幸運と言える。ぜひHoloLensの世界を盛り上げるべくアプリ開発を積極的に進めていただきたいところだ。

32bitのIntelプロセッサ、専用カスタムチップ「HPU」搭載

 HoloLens Development Editionには、HoloLensの本体に加えて、充電に使うACアダプターとMicro USB 2.0ケーブル、キャリングケース、マイクロファイバークロス、交換用のノーズパッド(鼻あて)、そして「Clicker」と呼ばれる小型アクセサリーが付属している。

 Clickerは入力の補助デバイスで、HoloLensの特徴であるハンドジェスチャーや視線移動といったナチュラルユーザーインタフェース(NUI)だけでなく、項目の選択やスクロール、クリックなど、マウスやゲームコントローラーに近い操作体系を利用できる。特にアプリ開発中はこうした基本操作に助けられる場面も多いだろう。

開発キットの中身 HoloLens Development Editionには、充電器や入力補助デバイスのClicker(手前の細長いデバイス)が付属する

 HoloLensでは複合現実の世界を実現するため、CG映像投写用の半透明スクリーンと各種センサーがヘッドギア状のデバイスに盛り込まれている。その重量は約579グラムだ。スクリーンはHD解像度の16:9スクリーン2枚を用いており、トータルで230万画素の解像度となる。

スクリーン HoloLensのスクリーンはHD解像度の16:9スクリーン2枚で構成される

 また、周囲の状況を把握するための複数のカメラと深度センサー、マイク、照度センサーが搭載され、これらを32bitのIntel製プロセッサと、Microsoft Holographic Processing Unit(HPU 1.0)というカスタムプロセッサの組み合わせで処理する。特にHPUは大量のセンサーから送られた情報のリアルタイム処理に最適化されており、これが高いレスポンスの実現を可能にするとみられる。メモリは2GB、ストレージは64GBだ。

 各種センサーの搭載により、空間認識や視線移動、ジェスチャー入力、音声入力などに対応する。HoloLens Development Edition単体での利用も可能だが、PCなどとWi-Fi経由で接続してリモートから制御したり、逆にHoloLens側の情報をPCに送信してリアルタイムでデータを処理したりと、PCとの連携が重視されている部分もある。

内蔵センサーなど ユーザーや周囲の状況をリアルタイムに把握するため、4つのカメラ、深度センサー、4つのマイク、照度センサーなどを内蔵。写真やHD動画を撮影するための200万画素カメラ、音声出力端子やスピーカーも搭載している
基板部 メイン基板には、32bitのIntel製プロセッサと、Microsoft Holographic Processing Unit(HPU 1.0)というカスタムプロセッサを実装。IEEE802.11acのWi-Fi、Bluetooth 4.1も備えている

 基本的にアプリ開発中はPCとの連携が基本となるとみられる。開発にはWindows 10搭載PCの他、開発ツール「Visual Studio 2015 Update 2」とゲーム向け統合開発環境「Unity 5.4」、そしてエミュレーター「HoloLens emulator」の導入が求められる。

 HoloLens emulatorは開発したアプリをHoloLensのOSのインタフェース上で動作確認するための仕組みで、エミュレーターの動作にあたってHyper-Vを利用する。このエミュレーターはWave 1のHoloLens Development Editionが発送されたタイミングで、一般でも利用可能になるとみられる。デバイスの台数が限られる以上、エミュレーターを利用しての効率的な開発は重要だ。

 なお、内蔵バッテリーはHoloLens Development Editionを連続利用した場合、2〜3時間程度しかもたないという(スタンバイでは最大2週間)。開発ではこの辺りも注意が必要だ。

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