iPad Proの登場以来、さまざまなアプリがApple Pencilへの対応を表明している。ビジネスユースで利用する場合、どんなアプリが適しているのかを見ていこう。
単純に手書きでメモをとるだけなら、iOS標準アプリの「メモ帳」で事足りる。ペンの太さは1種類(マーカーや鉛筆といったペン先も選べる)、背景は白のみと機能はシンプルだが、マーカーも使えるほか、定規機能も用意されており、文字が斜行するのを防げる。PDFに変換しての書き出しには対応しないが、PNGに変換してのカメラロールへの保存や、メールに添付しての送信は可能だ。
もっともこの「メモ帳」の最大のメリットは、画面を分割表示できるiOS 9以降の新機能「Slide Over」および「Split View」に対応することだ。前者はWebページやドキュメントの表示中に画面右端に呼び出してちょっとしたメモを取るのに重宝するし、後者は画面を2分割して他のアプリと併用できる。この後に紹介するアプリとケースバイケースで使い分けるのがよいだろう。
無料ながら多機能なアプリを探しているのであれば、Microsoftの「OneNote」が候補の筆頭になる。
説明し始めるとキリがないほど多機能なアプリだが、ペン入力に限れば、複数のノートブックおよびノートを効率的に管理できること、ペンの太さを変えられること、範囲選択しての移動やコピー、削除が行えるなげなわツールを利用できるといった点が特徴として挙げられる。用紙の色やスタイルも豊富な選択肢が用意されているので、紙のノートに書き込みをしているかのような使い勝手が得られる。
またビジネスユースで大きなメリットとなるのが、Microsoftアカウントを使うことでWindowsを含め、OneDriveが対応するさまざまなデバイスと同期できることだ。オンラインでの共有も可能なほか、ページをPDF化してメールで送信することもできるなど、書いたメモを活用する方法も豊富に用意されている。ネックがあるとすれば、さきほどのメモ帳と違ってSlide Overに対応せず、全画面でしか使えないことだろうか。
別の無料アプリでは、筆圧検知にも対応したEvernoteの「Penultimate」も候補になるだろう。
有料アプリも含めて機能優先で選ぶのであれば、「GoodNotes 4」がおすすめだ。ここまで紹介した3つのアプリと違って文字入力の専用パネルを備えており、手書き文字を縮小して1行に収める機能によって、細かな文字も正確に記入でき、整った板書が可能になるのが大きな利点だ。
また筆圧検知にも対応するほか、図の読み込みにも対応する。多くのアプリは図をそのまま貼り付けるだけで拡大縮小しかできないが、本アプリはトリミングも可能だ。なおPDFを開いての書き込みも可能だが、Acrobatなどで使われている標準的なPDF注釈ツールは表示できないため注意したい。
メモを取るのではなく、PDFに注釈を入れる用途であれば、有料アプリの「PDF Expert 5」がおすすめだ。ポイントは何といっても豊富な注釈およびマークアップツールで、挿入、置換、取消といった基本的な注釈ツールはもちろんのこと、コメント、ハイライト、下線、スタンプ、線や矢印、円や四角形の書き込みも行え、さらには署名機能まで搭載している。
これらは全てAcrobatと高い互換性を保っているので、Acrobatで書き込んだ注釈を本アプリで閲覧するのはもちろん、その逆も可能で、Apple Pencilを使ってPDFの校正がこのアプリだけで行える。
iPadアプリのAcrobatでは取消線や下線に直接コメントを入れられないのに対して、本アプリであれば問題なく対応するのも利点で、業務で校正を行うユーザーは必携のアプリと言っていいだろう。1200円(税込)という価格が決して高くはないのは、使ってみると実感できるはずだ。
以上ざっと見てきたが、これまで紙で行っていた作業を全てデジタルに置き換えようとした場合、手書きならでは手軽なメモやラフスケッチ、また直感的な操作が要求される校正作業は、マウスやキーボードではなかなか代替できない。それゆえ面倒な作業としてズルズルと後回しになってしまい、仕事を長引かせる原因になりうる。
その点、iPad ProとApple Pencilとを組み合わせ、今回紹介したアプリを用いることにより、これまでしっくり来なかったピースがぴったりとハマったように感じられるだろう。「完全なデジタル化」を目指すユーザーは試してみる価値は高い。
なお校正目的に限っては、9.7型iPad Proよりは12.9型iPad Proのほうが画面サイズが広いぶん作業は容易なので、これからチョイスする場合はそうした点も頭に入れて機種選びをするとよいだろう。
→・次回:「9.7型iPad Pro」+「Smart Keyboard」は仕事の文字入力にどこまで使える?
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