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» 2016年11月05日 06時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:なんだか質が落ちてない? サポート窓口の向こう側で起きていること (2/2)

[牧ノブユキ,ITmedia]
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人件費の安い海外へのアウトソージング

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 以上がサポート外注化のあらましだが、確かに社内でサポートの人員を直接雇用するのに比べると、人件費の節約になるとはいえ、専門業者に支払う料金が相当な額になるであろうことは、容易に想像できるだろう。

 なぜなら、スタッフを雇用しているのが専門業者になるというだけで、事業に携わる人員の規模は、基本的に変わらないからだ。単にコストセンターが変わったというだけで、トータルでコストの節約になるとは限らない。

 これを解決できるのが、そう、人件費の安い海外へのアウトソージングである。専門業者は海外にも支店を持つか、もしくは海外でアウトソージングを営む同業者とのパイプを有している。メーカーは、日本語での応対が可能な彼らのもとにサポート窓口を移管することにより、コストを劇的に削減することをもくろむ。

 もちろん、専門業者にとっては国内のスタッフを中心に事業を回したいのはやまやまである。しかしコスト削減にならないからとメーカーから縁を切られるよりはマシということで、海外とのパイプを重視する事業者は増えつつある。

 社内のサポート部門をアウトソースする最初の段階で、当初の移管先は国内だが、将来的には海外に移管することで人件費も大幅に節約できる……と、海外へのアウトソースを見越した提案が行われることもしばしばだ。

 もっとも、いくら海外の方が人件費が安いといっても、日本語での応対は本当に問題ないかは、実際にやってみなければ分からない点が多い。IP電話の普及によって電話料金の問題こそクリアになったものの、人が行う部分のクオリティーに関しては、なかなか一筋縄ではいかないからだ。ましてや製品の特性も絡むのでなおさらだ。

 ちなみに英語圏ではそれぞれの国に合わせた“なまり”のスタッフを用意して自然さを演出するケースもあるそうだが、日本語圏ではそこまでレベルの高いサービスは見込めず、また仮にあったとしてもIT系の製品サポートでお目にかかるのは難しい。

 それゆえ、いきなりメーカーの抱える全製品のサポートを海外に移管するのではなく、イレギュラーな問い合わせが少ない既存の製品カテゴリーや、新規に立ち上げた製品カテゴリーを切り離して海外に移管し、そこで問題が起こらなければ他の製品群も順次海外に移管するという、二段構えの方法がよく取られる。なるべくリスクの低いところから試し、規模を拡大しつつ様子を見るというわけである。

うまくいかないケース、うまくいったが拡張できないケースも

 ところが、実際はなかなかそう筋書き通りに行くものではない。無事に海外サポート窓口を無事立ち上げたまではよかったが、いざ回してみるとユーザーからの評判は芳しくなく、国内と違ってコミュニケーションもうまく取れず、動きも遅いため応対マニュアルのアップデートもままならない……といったケースは少なくない。

 また、一部のスタッフは優秀なのだが、そうでないスタッフとの差がありすぎ、前者を中心に回すには人員が足りず、すぐさま補充できるわけでもないため、当初考えていた規模の拡大はお蔵入り……という八方ふさがりに陥りがちだ。

 結果として、国内のサポート窓口を海外に移管する話はしばらくペンディング、海外サポートも打ち切って国内に戻したいのだがコスト面では目に見えて成果が出ているうえ、契約期間の問題もあり、当面はそのまま継続……となるわけである。

 冒頭でも書いた、サポート窓口に電話をかけるといきなりたどたどしい日本語に出くわしたというケースは、まさにこうした状況が背景にある(もちろん成功しているメーカーもあるので念のため)。

 以上、国内および海外へのアウトソースの裏側を見てきた。従来であれば、同じサポートの同じ番号に電話をかけていれば、せいぜい電話を受けるスタッフが変わるくらいで、サポートの質そのものは変わらなかったわけだが、今はそうではなく、サポートの質がある日を境にガラリと変わってしまうケースは、以前に比べて起こりやすくなっている。

 もしそのような事態に遭遇した場合、今回紹介したようなアウトソースによって、転送先が変わったり、サポートを受け持つ部署自体が変わったと考えれば、なるほどと納得できるケースが多そうだ。

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