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Microsoftが新モバイルOSとデバイスを開発中か Windows 10 Mobileのリベンジへ鈴木淳也の「Windowsフロントライン」

» 2017年06月02日 06時00分 公開

 本連載でも取り上げた通り、Microsoftはモバイル向けのOS(Windows 10 Mobile)からフェードアウトしつつあり、それを搭載したハードウェア(Windowsスマートフォン)の提供も含めて戦略の抜本的な見直しを迫られている。

Windows 10 Mobile MicrosoftはWindows 10 Mobileからフェードアウトしつつあるが……

 そんな同社の次なる一手は何か。ここに来て、新しいモバイル向けのハードウェアとそれに向けたソフトウェア(OS)の開発を内部的に続けており、再始動を狙っているとのウワサがささやかれるようになってきた。

Microsoftがモバイル向けの新ソフトウェアとハードウェアを開発中か

 Windows関連の最新動向に詳しいブラッド・サムス氏は5月30日(米国時間)、Microsoft内部の異なる2つの情報源から得たとして、以下の未確認情報をThurrott.comに投稿している。

  • Microsoft社内で新しいモバイル向けハードウェアのテストを実施している
  • 上記ハードウェア用にWindows 10 Mobileと異なるソフトウェアを準備している

 まだ開発の初期段階であり、今後内容が変化する可能性は高いものの、現時点でWindows 10 Mobileがもたらすユーザー体験とは異なるものを目指しているようだ。提供時期は最低でも1年以上先になる見通しだが、Microsoftがまだこの分野を諦めていない可能性があるという点で非常に興味深い。

 現在のMicrosoftはOSやプラットフォームでシェアを獲得してデバイス市場を制するよりも、クラウドでの各種サービスやOfficeアプリのようにプラットフォームを横断したユーザー体験を重視するなど、どちらかといえば「縁の下の力持ち」のような存在を指向する傾向がある。

 しかしMicrosoftが「Project Rome」のようにデバイス間をまたいだユーザー体験を重視する技術に注力したとしても、同社以外のベンダーが提供するOSやアプリではサポートが得られず、AppleのようにPCからモバイルまで統一したユーザー体験を提供できているベンダーに比べて不利な立場にある。これはモバイル市場、つまりはスマートフォン市場でシェアを取れなかったMicrosoftの弱点でもある。

 ゆえにこの分野でのプレゼンスを増やし、何らかの影響力を行使しようとする動きは不自然なものではない。問題は、既にコモディティ化しつつある従来のスマートフォン体験そのままでは、もはやユーザーの支持を集めにくいことだ。

 そこには、大きくユーザー体験を変える「何か」が求められる。

Project Rome Windows 10次期大型アップデートの「Fall Creators Update」では、「Project Rome」として開発してきた仕組みにより、クラウドのクリップボードを使うことで、デバイス間をまたいでのコピー&ペーストが容易になる。ただし、この機能を利用するにはアプリ側の対応も必要だ

Windows 10 Mobileからどう進化するのか

 このウワサの真偽は不明だが、少なくとも現状のWindows 10 Mobileが完全にビジネス指向であるのに対し、新プロジェクトは主にトレンドリーダーであるコンシューマー市場の攻略を目指す製品になる可能性が高いとみられる。

 もともとWindows 10 Mobileでのアプリ開発は、従来のWindowsアプリの延長、もしくはWindows Phone 7のアプリ開発がSilverlightで始まったように、どちらかといえばWebアプリの開発を指向していた。

 一方、Windows 10の次期大型アップデートであるRedstone 3(RS3)こと「Fall Creators Update」では、Windows Mixed RealityやXboxなど従来のPCとは異なるデバイスでも共通で使いやすいデザインのアプリ拡張を目指した「Microsoft Fluent Design System(Project NEON)」が採用され、従来とは異なる体験を提供しようとしている。もちろん、Windows 10 Mobileも例外ではなく、RS3以降でFluent Design Systemに対応する計画だ。

 Windows 10ファミリー全体ではユーザーインタフェースとそこから得られるユーザー体験をアップデートしようという流れがあるが、Windows 10 Mobile系デバイスに関しては、恐らく従来のユーザー体験をそう大きく変えるものではないだろう。今回のウワサが本当だとして、どのような姿を模索しているかは続報を待つ必要がある。

Project NEON Project NEON改め「Microsoft Fluent Design System」では、5つの要素でユーザーインタフェース(UI)を拡張する。UIの「奥行き」や、情報を視覚化する「モーション」、そして「質感」と、3Dや仮想現実(VR)の世界を意識した要素が盛り込まれているのが特徴だ

 なお、Windows 10 Mobile関連でよくある誤解に、「(フル機能の)Windows 10に電話機能を加えた方がいいのでは?」という意見も耳にする。実際、Microsoftは2017年後半にQualcommのSnapdragonプロセッサで動作可能な「Windows 10 for ARM」を搭載したデバイスの市場投入を計画している。これに電話機能も搭載すれば、夢のフルWindowsスマホが完成というわけだ。

 しかし、現実はそう甘くないだろう。PCの動作を前提としたOSのフットプリントは依然として大きく、モバイルデバイス向けには無駄があるうえ、「Windows 10ファミリーは統一コアのOS」とMicrosoftは表明しているものの、ソフトウェアのスタックがPC向けWindows 10とWindows 10 Mobileでは異なるなど、さまざまな障害がある。

 従って、スマートフォン向けのOSとしては、ARM版を含んだフル機能のWindows 10ベースではなく、Windows 10 Mobileの延長にあるソフトウェアを改良・発展させる方が、今もなお次のステップへの近道となるはずだ。

Windows 10 for ARM QualcommがCOMPUTEX TAIPEIで公開したSnapdragon 835とARM版Windows 10を搭載したテストマシン

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