これだけのパフォーマンスを、これほど存在感がないボディーに収めているだけで魅力というものだろう。筆者が導入するとしたら、机の下に本体ホルダーを作って設置し、ディスプレイとキーボード、トラックパッドだけを表に出して使いたい。
室温25度の環境でボディーの発熱も計測してみた。通常時、アルミボディー天板の温度は30〜31度で安定しており、前述のRAW現像処理を20枚連続で行った直後に36度まで上昇したものの、追加で同様の負荷を連続でかけても、36度以上には上がらなかった。
冷却時のファンノイズはフルに冷却しているときはそれなりにあるものの、音量が抑えめであるだけでなく、全体に周波数が低く、耳障りではない点が好印象だった。
実際にスタッキング(積層設置)したわけではないが、これだけボディーの温度上昇が穏やかならば、クラスタを組みたい場合に複数台を重ねても、騒音や発熱の問題を最小限に抑えられるはずだ。
またオーディオ用のサーバや再生機として、あるいはオーディオ&ビジュアル用としても、コンパクトさや静粛さが魅力だ。macOSには標準でVNC(Virtual Network Computing)と互換性のある画面共有機能が組み込まれているため、iOSデバイスやWindowsなどから手軽にリモート操作できる。
多数のMac miniをクラスタで接続したいと考えているユーザーは、特定のアプリを使う想定だと思われる。そのため、具体的なテストは行わないが、容積当たりのパフォーマンスが高く、コンパクトで発熱も抑えられており、故障時の入れ替えも容易であろうことを考えれば、どんな用途であれ、利便性の高いCPUモジュールとして使えることは間違いない。
前述の通り、Mac miniの有線LANインタフェースは、オプションで10GbEを選べるため、大量のデータ転送を伴う処理にも期待に応える働きをしてくれるだろう。
iMac Proユーザーがパフォーマンスを積み増すために、1台ずつ買い足していくといったシナリオもいいかもしれない。計算能力が上がるごとに仕事の効率が上がるという職種なら、Mac miniは何台あっても邪魔にならない。
ここで、Appleがデモンストレーションで訴求していたHEVC(H.265)でのエンコード能力について簡単にテストをしてみた。「iPhone XS Max」で撮影したHEVCの4K映像を、Mac mini上の「QuickTime Player」で別のHEVCファイルとして書き出すという簡単なものだが、35秒の4K映像を書き出すのにかかった時間は57秒。その間、macOSのアクティビティモニタでプロセッサへの負荷を監視していたが、ほとんど負荷はかかっていなかった。
これはApple独自コントローラチップ「Apple T2」にHEVCのエンコードアクセラレータが搭載されているためで、同じくT2を搭載する他のMacでも利用できる。ちなみに、新しい「MacBook Air」で同じ処理を行った場合にかかる時間は1分4秒。CPUの処理速度にほとんど依存していないことが分かる(もちろん、他のT2搭載Macでも同じようにHEVCが高速化されているはずだ)。
最後にまとめよう。Mac miniは外付けのディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス(マウスやトラックパッド)などを所有していれば、Windowsユーザーであれ、Macユーザーであれ、気軽に最新のMacへと入れる優れたエントリー機になっている。
1TBの構成のみでの確認だが、搭載しているPCIe SSDは極めて高速で、これ1台あればBoot CampでのデュアルブートでWindows機としても使うなど、さまざまな使い方ができそうだ。もちろん、仮想PC環境でWindowsを動かすのも、これだけ高性能ならばアリだ。
実際、仮想環境ソフトウェアの「Parallels Desktop for Mac」を使ってMac mini上でWindows 10を動かしてみたが、実に軽快に利用できたことを報告しておきたい。今までこうした仮想環境を実用的だと思ったことはなかったが、高パフォーマンスな上、動作音が静かで冷却ファンの振る舞いも穏やかなiMac miniならば常用できると確信した。
知人は可動部がほとんどないMac miniをカバンに入れて持ち歩き(約1.3kgということは、13.3型MacBook Pro程度の重さだ)、勤務先と自宅にあるキーボードとマウス、ディスプレイにつなぎ替えて使いたい、といった話をしていたが、そうしたくなる気持ちはよく分かる。
今回のMac miniはメインメモリがSO-DIMMとなったため、その気になれば底面カバーを開けて、メモリモジュールを交換することも不可能ではない。AppleはApple Store、あるいは認定プロバイダーでの交換を強く推奨しているが、プラスチック製の底面カバーを取り外し(はめ込み式で簡単に取り外せる)、真ん中に突起がある特殊なトルクスネジを6本外せば、その下にSO-DIMMが見えてくる。
個人的に、パソコンは完全にノートへと移行し、デスクトップでの環境を持っていなかった。しかしこの製品ならば、デスクトップ用にMac環境を構築し、モバイルではライトなMacBook AirやMacBook、あるいはiPad Proで補うといった利用シナリオも考えられそうだ。
実際に使い始めるまでは、単純に「Mac miniの新しいヤツ」ぐらいに思っていたが、パフォーマンスと品質を高次元でまとめた新モデルを使ってみると、そんな運用の見直しを考えさせられた。
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