新「Mac mini」の“小型パソコン”を大きく超えた可能性に迫る本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

» 2018年11月06日 20時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
前のページへ 1|2       

小型ボディー、高パフォーマンス、低騒音で広がる可能性

 これだけのパフォーマンスを、これほど存在感がないボディーに収めているだけで魅力というものだろう。筆者が導入するとしたら、机の下に本体ホルダーを作って設置し、ディスプレイとキーボード、トラックパッドだけを表に出して使いたい。

 室温25度の環境でボディーの発熱も計測してみた。通常時、アルミボディー天板の温度は30〜31度で安定しており、前述のRAW現像処理を20枚連続で行った直後に36度まで上昇したものの、追加で同様の負荷を連続でかけても、36度以上には上がらなかった。

 冷却時のファンノイズはフルに冷却しているときはそれなりにあるものの、音量が抑えめであるだけでなく、全体に周波数が低く、耳障りではない点が好印象だった。

 実際にスタッキング(積層設置)したわけではないが、これだけボディーの温度上昇が穏やかならば、クラスタを組みたい場合に複数台を重ねても、騒音や発熱の問題を最小限に抑えられるはずだ。

 またオーディオ用のサーバや再生機として、あるいはオーディオ&ビジュアル用としても、コンパクトさや静粛さが魅力だ。macOSには標準でVNC(Virtual Network Computing)と互換性のある画面共有機能が組み込まれているため、iOSデバイスやWindowsなどから手軽にリモート操作できる。

 多数のMac miniをクラスタで接続したいと考えているユーザーは、特定のアプリを使う想定だと思われる。そのため、具体的なテストは行わないが、容積当たりのパフォーマンスが高く、コンパクトで発熱も抑えられており、故障時の入れ替えも容易であろうことを考えれば、どんな用途であれ、利便性の高いCPUモジュールとして使えることは間違いない。

 前述の通り、Mac miniの有線LANインタフェースは、オプションで10GbEを選べるため、大量のデータ転送を伴う処理にも期待に応える働きをしてくれるだろう。

 iMac Proユーザーがパフォーマンスを積み増すために、1台ずつ買い足していくといったシナリオもいいかもしれない。計算能力が上がるごとに仕事の効率が上がるという職種なら、Mac miniは何台あっても邪魔にならない。

Mac mini 米国での発表会では、Mac miniを何台もスタックした展示も行われていた

 ここで、Appleがデモンストレーションで訴求していたHEVC(H.265)でのエンコード能力について簡単にテストをしてみた。「iPhone XS Max」で撮影したHEVCの4K映像を、Mac mini上の「QuickTime Player」で別のHEVCファイルとして書き出すという簡単なものだが、35秒の4K映像を書き出すのにかかった時間は57秒。その間、macOSのアクティビティモニタでプロセッサへの負荷を監視していたが、ほとんど負荷はかかっていなかった。

 これはApple独自コントローラチップ「Apple T2」にHEVCのエンコードアクセラレータが搭載されているためで、同じくT2を搭載する他のMacでも利用できる。ちなみに、新しい「MacBook Air」で同じ処理を行った場合にかかる時間は1分4秒。CPUの処理速度にほとんど依存していないことが分かる(もちろん、他のT2搭載Macでも同じようにHEVCが高速化されているはずだ)。

単純に「Mac miniの新しいヤツ」と侮るなかれ

 最後にまとめよう。Mac miniは外付けのディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス(マウスやトラックパッド)などを所有していれば、Windowsユーザーであれ、Macユーザーであれ、気軽に最新のMacへと入れる優れたエントリー機になっている。

 1TBの構成のみでの確認だが、搭載しているPCIe SSDは極めて高速で、これ1台あればBoot CampでのデュアルブートでWindows機としても使うなど、さまざまな使い方ができそうだ。もちろん、仮想PC環境でWindowsを動かすのも、これだけ高性能ならばアリだ。

 実際、仮想環境ソフトウェアの「Parallels Desktop for Mac」を使ってMac mini上でWindows 10を動かしてみたが、実に軽快に利用できたことを報告しておきたい。今までこうした仮想環境を実用的だと思ったことはなかったが、高パフォーマンスな上、動作音が静かで冷却ファンの振る舞いも穏やかなiMac miniならば常用できると確信した。

Mac mini 「Parallels Desktop for Mac」のような仮想環境ソフトウェアでmacOSとWindowsを共存させる使い方も、このパフォーマンスと低騒音なら実用的だ。ParallelsでWindowsをインストール中、Mac mini本体の温度は40度まで上がったが、冷却ファンの音は聞こえなかった(室温25度)

 知人は可動部がほとんどないMac miniをカバンに入れて持ち歩き(約1.3kgということは、13.3型MacBook Pro程度の重さだ)、勤務先と自宅にあるキーボードとマウス、ディスプレイにつなぎ替えて使いたい、といった話をしていたが、そうしたくなる気持ちはよく分かる。

 今回のMac miniはメインメモリがSO-DIMMとなったため、その気になれば底面カバーを開けて、メモリモジュールを交換することも不可能ではない。AppleはApple Store、あるいは認定プロバイダーでの交換を強く推奨しているが、プラスチック製の底面カバーを取り外し(はめ込み式で簡単に取り外せる)、真ん中に突起がある特殊なトルクスネジを6本外せば、その下にSO-DIMMが見えてくる。

Mac mini Mac miniの底面。プラスチック製の底面カバーははめ込み式で簡単に取り外せる
Mac mini プラスチックの底面カバーを取り外したところ。内側のカバーは6本のネジで固定されている
Mac mini ネジは真ん中に突起がある特殊なトルクスネジ。取り外すには、ネジの形状に合う工具が必要だ
Mac mini Mac miniの内部構造(製品発表会より)

 個人的に、パソコンは完全にノートへと移行し、デスクトップでの環境を持っていなかった。しかしこの製品ならば、デスクトップ用にMac環境を構築し、モバイルではライトなMacBook AirやMacBook、あるいはiPad Proで補うといった利用シナリオも考えられそうだ。

 実際に使い始めるまでは、単純に「Mac miniの新しいヤツ」ぐらいに思っていたが、パフォーマンスと品質を高次元でまとめた新モデルを使ってみると、そんな運用の見直しを考えさせられた。

ニュース解説番組「NEWS TV」で記事をピックアップ

ITmedia NEWS編集部がYouTubeでお届けするライブ番組「ITmedia NEWS TV」で、この記事を取り上げています。ぜひ視聴・チャンネル登録をお願いします。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月29日 更新
  1. ミリ波レーダーで高度な検知を実現する「スマート人感センサーFP2」を試す 室内の転倒検出や睡眠モニターも実現 (2024年03月28日)
  2. Synology「BeeStation」は、“NASに興味があるけど未導入”な人に勧めたい 買い切り型で自分だけの4TBクラウドストレージを簡単に構築できる (2024年03月27日)
  3. ダイソーで330円の「手になじむワイヤレスマウス」を試す 名前通りの持ちやすさは“お値段以上”だが難点も (2024年03月27日)
  4. 「ThinkPad」2024年モデルは何が変わった? 見どころをチェック! (2024年03月26日)
  5. ダイソーで550円で売っている「充電式ワイヤレスマウス」が意外と優秀 平たいボディーは携帯性抜群! (2024年03月25日)
  6. 日本HP、個人/法人向けノート「Envy」「HP EliteBook」「HP ZBook」にCore Ultra搭載の新モデルを一挙投入 (2024年03月28日)
  7. 次期永続ライセンス版の「Microsoft Office 2024」が2024年後半提供開始/macOS Sonoma 14.4のアップグレードでJavaがクラッシュ (2024年03月24日)
  8. そのあふれる自信はどこから? Intelが半導体「受託生産」の成功を確信する理由【中編】 (2024年03月29日)
  9. サンワ、Windows Helloに対応したUSB Type-C指紋認証センサー (2024年03月27日)
  10. 日本HP、“量子コンピューティングによる攻撃”も見据えたセキュリティ強化の法人向けPCをアピール (2024年03月28日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー