毎年2月、英国ロンドンでは教育関連のICTイベント「BETT(British Educational Training and Technology Show)」が開催されます。それに合わせて、MicrosoftやGoogleが、たまにAppleも新製品や新サービスを発表します。
今年はMicrosoftが小学生向けの丈夫で安価なSurfaceシリーズ用スタイラス「Classroom Pen」や、サードパーティー製の安価なWindows 10端末を多数発表しました。
Classroom Penは「Surface Go」に最適化されたスタイラス。20本単位で販売しており、1本当たり約40ドルと、これまでSurfaceシリーズ用に提供されていた「Surface Pen」(99.99ドル)の半額以下です。
またMicrosoftは、期間限定ではありますが、Acer、Dell、LenovoのWindows 10端末を189ドル(約2万円)から教育機関に販売するとしています。これなら、生徒全員分は難しくても、授業内容によってクラス全員で1台ずつ使うために購入することが可能というケースもありそうです。
その他、教育向け「Office」や、「Microsoft Team」の新機能、教育関連サービスも多数発表しました。
Microsoftは教育向けの「Minecraft」も提供しているし、昨年は教育向けソーシャルサービス企業のFlipgridを買収して、Flipgridのサブスクリプションサービスを無償化するなど、教育市場でのシェア確立に向けて頑張っています。
一方、Googleは「2006年から教育市場に参入し、今では世界で8000万人の教育者と学生がG Suiteを使っていて、3000万人以上がChromebookを使っている」と発表しました。
Microsoftは数を発表していないので比較できませんが、Googleが公開した世界の教育市場における「Chrome OS」のシェア分布図によると、北米ではシェアが60%以上、オーストラリアで40%以上、欧州で20%以上になっています。ちなみに日本では5%未満です。
以前この連載でご紹介したように、日本では教育市場でのモバイルPCの普及自体が、米国などと比べるとかなり遅れているので、覇権争いはこれから本格化しそうです。
そう思いながらGoogleの発表をつらつら読んでいたら、こんな一節がさりげなくありました。
Google翻訳によると「日本では、公立学校は、2020年までに全ての子供たちにコンピュータプログラミングを教えるという全国的な目標を達成するためにG SuiteとChromebookを使用しています」となります。
確かに、日本では2020年度から全ての小学校でプログラミング教育が必修化されます。それはでも、もちろん生徒全員にモバイルPCを持たせるという話ではありません。小学校でプログラミング言語を学ぶ教科が加わるわけではなく、今まである教科の中で「プログラミング的思考」を育成するための授業などが行われるようになります。
文部科学省は、コンピュータがなくてもプログラミング的思考の育成は可能だけど、「体験」が重要なので、「児童がコンピュータを用いないのは望ましくない」と言っており、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」(2018〜2022年度)を策定しました。5年間、単年度1805億円の地方財政措置が講じられます。
つまり「せめてコンピュータ教室くらいは整備してね」ということです。Microsoft、Google、Appleにとってはチャンスです。
総務省が2018年11月に発表した「次世代学校ICT環境の整備に向けた実証」の資料には、東京都町田市や小金井市の公立学校がICT化の実証実験のために、いずれもGoogleの「Chromebook」と「G Suite」を採用した例が紹介されています。
さてさて、来年4月からのプログラミング教育で使われる端末やアプリは何が多くなりますやら。
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