少し前に、米国のK-12(日本の幼稚園〜高校3年に当たる)教育市場でGoogleの「Chrome OS」のシェアが58%に増えたという記事を書きました。ちなみに、2位はWindowsで22%、3位はiOSで14%です。市場規模は拡大していて、端末の総出荷台数は前年比18%増の1260万台にのぼります。
この記事を書きながら、そういえば日本の学校教育のICT化はどこまで進んでいるのか疑問が生じました。文部科学省は2020年度に向けて「全ての学校で1人1台の情報端末を活用した学習を推進する」ことを掲げていますが、実際はどうでしょう。
Googleは教育関連サイトで「Chromebookが、日本の理系教育の水準を引き上げる」と主張して、日本での導入事例を紹介していますが、一部の私立校での話です。米国市場と異なり、日本市場でChrome OSの存在感はあまりありません。
そこで、日本マイクロソフトが公開している「教育ICTリサーチ2016」というホワイトペーパーを見てみました。全国の教育委員会(なので公立の小中高校の話)を対象に、2016年1月〜4月に行った(有効回答数は1093件)調査の結果です。
この調査によると、PCの導入状況は「PC教室ステージ」(多分、PCを使える教室があるという意味)にある自治体が43%、それよりPCの数が多い「共有端末ステージ」の自治体が56%、そして「1人1台端末ステージ」はなんと1%でした。3年以内に1人1台端末ステージに移行する目標についての調査でも、たったの4%です。
共有端末ステージはさらに、「1校に80台未満」「1校に80台以上」「3.6人に1台」という3つに分けられていて、2016年時点での都道府県別グラフを見ると、ほとんどが80台未満であることが分かります。
実際に教育現場でのICT化はどうなっているのか、某市で公立中学校の先生をしている友人に聞いてみたところ、管理者ではないのでシステムなどについては把握していないと断ったうえで、現状を教えてくれました。
まず、教師は1人1台、Windows 8.1搭載のデスクトップPCが職員室の机に置かれているそうです。インターネットには接続できるけれど接続先は規制されていて、マシンにはもちろん勝手にアプリなどはインストールできません。そういうところは一般的な企業と同じですね。
PCは教室にも1台あって、これはみんなWindows 7搭載のノートPCとのこと。OSが統一されていないことが少々気になります。ちなみに、このPCは休み時間に生徒が勝手に使っていい、というわけではなくて、授業で教材を表示するためにあるそうです。
その教材を表示するシステムは、地元の(これ大事)IT企業が教育機関向けに提供している「総合教育ICTソリューション」です。職員室にある配信サーバから構内LANを使って各教室のノートPC(教室にLANポートが1つだけある)にコンテンツを配信し、HDMI接続した大きめのディスプレイに表示します。
私は小学生のころ(すごい昔)、社会科や道徳の授業でNHKの教育テレビの番組を見せられたりしたものですが、それがPCになったという感じでしょうか。配信時間を選べるのは当時より便利ですが。
タブレットを導入する予定はないのかと聞いたところ、「来年度に10台導入するかも」との回答。1学年にではなく、1校に10台です。微妙な数ですが、どう活用するのでしょうか。もちろん、この公立中学校よりICT化が進んでいるケースもあるでしょうが、上記の調査結果も踏まえると、日本の教育現場のICT化はまだまだこれからと言えます。
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