Microsoftも「Xbox One X」の販売不振などもあり、このジャンルへ活路を見いだそうとしている。3月12日にはゲームストリーミングサービス「Project xCloud」のトライアルを年内に開始すると発表済みだ。
米Amazon.comもゲームストリーミングサービスへの参入を計画しているとうわさされている。今後、ゲームプラットフォームのトレンドはゲームストリーミングへと傾いていくだろう。家庭用ゲーム機市場は現在、ソニーが支配しているが、ビジネスモデルの変容にうまく追従できなければ、その立場を失うことになるかもしれない。
ゲームストリーミングサービスに「PlayStation Now」で先鞭をつけているソニーだが、このサービスの拡充はもろ刃の剣ともなり得る。ゲームストリーミングサービスは、ハードウェアでの囲い込みの力を弱め、ユーザーの流動性を高めるからだ。
ゲーミングPCをいったん脇に置いて、ゲーム機のビジネスに目を向けると、ハードウェアは原価割れこそしないものの、大きな収益源とはしていない。ゲームを遊ぶプラットフォームをゲームデベロッパーに提供することでロイヤリティー収入を得るのが、ゲーム機の基本的なビジネスモデルだった。近年はここにネットワークサービスの利用料も乗ってくる。
PlayStation Nowは、こうしたゲームを遊ぶプラットフォームを切り替える際の緩衝材として用意されていたものだ。一方、MicrosoftのProject xCloudは「専用ハードウェアの購入」というハードルを取り払い、ゲームコミュニティーを自社のプラットフォームへと誘導することが目的だと考えられる。
いずれのサービスも、ストリーミングされるのは自社のプラットフォーム向けに開発されたゲームである。つまり、ゲームストリーミングサービスは(程度の違いこそあれ)プラットフォーム間のユーザー流動性を高める。
STADIAではそうした流動性の高さを生かし、どのようにしてゲームユーザーを呼び込むのかが注目される。ゲームそのものではなく、「ビジネスモデルの変革」こそがイノベーションを引き起こすことになるだろう。
ご存じのように、Googleが上げている収益の9割近くは広告の売り上げだ。広告だけで無料でゲームが遊べるようになる……とは思わないが、何らかの形で新しい枠組みのビジネスモデルを提案できれば、ゲーム開発者を味方につけることができるかもしれない。
STADIAの具体的な価格やビジネスモデルの詳細は「夏ごろ」とされており、まだ発表されていない。また、北米と欧州で年内にサービスを開始するが、それ以外の地域での計画は未発表だ。
さらに自社内にゲーム開発スタジオを設置すると発表したものの、具体的なサードパーティーの名前は挙げられなかった(プレイデモには「アサシン クリード オデッセイ」を利用。100以上のデベロッパーに開発キットを配布していると言及するにとどまった)。
5月7日から開催の「Google I/O 2019」(Google主催の開発者向け会議)、あるいは6月12日からの「E3 2019」(コンピュータゲームのトレードショー)で、ゲームコンテンツの開発パートナーが発表されるかどうかに注目したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.